その洋館は、古いけれど重厚感のある佇まいをしていました。まるで、実写版『美女と野獣』に出てくる野獣の住んでいるお城みたいでした。
洋館のバルコニーから屋根にかけて、はしごがかけてあって、そこから屋根の上に登ったら綺麗な星空が見えそうでした。
「ここ、さすがに誰も住んでないだろ」
洋館の外壁に絡まる蔦を見ながら、お父さんは言いました。
「でも……もし人が住んでたら中に入るのは悪いよ」
中に入ろうとするお父さんを止めました。
「ドア、鍵かかってないぞ」
「……え? ほんとだ」
お父さんは、ずんずんと、洋館の中に入って行ってしまいました。
「お父さん、待ってよ!」
追いかけようとしたとき、上の方から視線を感じました。見上げると、バルコニーに女の人がいました。
「お父さん出てきて! 人住んでる!!」