その日はたしか、日曜日でした。宿題を午前中に終わらせていつものように空を眺めていました。僕は、空を眺めるのが好きです。とくに青空が一番好きです。
なぜなら、色がソーダみたいで綺麗だからです。流れる白い雲はふわふわで、ずっと見ているといい気持ちになります。
その日も、僕が一人で青空を眺めていました。そうしたら、となりにおじさんが立っていて、何だこのおじさんって思っていたら、話しかけてきました。
「ねえ坊や。空は、朝とか昼に見るよりも、夜のほうがきれいに見えるよ」
「僕は青空が一番好きなんです」
「私は、夜空がきれいに見える場所を知ってるよ」
「そうですか」
「知りたくないかね?」
「いいえ」
おじさんは、僕の返事を聞かずに話しつづけます。
「ここから東に行った竹藪のとなりの鳥居から行ける小高い山の頂上に、大きな洋館があって、そこの屋根の上が一番、星空がきれいに見えるよ」
「はぁ……そうですか」
正直、じゃまだし話が通じなさそうだから、はやくどこかへ行ってほしかった。
「ねぇ坊や、今度おじさんと一緒に行こう」
「嫌です。というか、その洋館って人住んでるんじゃないですか? 勝手に屋根の上に登ったら、不法侵入ですよ」
おじさんは、残念だ。残念だ。とかぶつぶつ言いだして、僕は怖くなって家に帰りました。