Aさんは半狂乱で肉塊をゴミ箱に投げ入れ、袋の口を縛って、手を洗ってから、濡れてしまったズボンと下着を着替えて寝た。
ほとんど一睡もできなかったけれど、朝は来た。恐る恐るゴミ箱の袋の口をほどくと、中には昨日入れたはずの肉塊はなかった。
それからだんだんと、Aさんはやつれていった。肉塊の幻覚が見えるからメンタルクリニックを受診したいと両親に頼んでも、「娘が精神病だなんて耐えられない」と言われ、行かせてもらえなかった。
そしてある日、その日は体育の時間だった。校庭で運動会のリレーの練習をしていた。Aさんはスタンディングスタートの姿勢を取り、手を後ろに出してバトンを待っていた。バトンを持った走者があと二十メートルくらいまで近づいていた。
十五メートル、十メートル……とだんだん近づいて来て、