――ぼとり。
Aさんはびっくりして、少し漏らしてしまった。部屋は真っ暗で、怖くて床に足を付けたくないけど、トイレに行かなきゃいけないし、そのためには電気のついていない部屋の出入口まで歩かなければいけない。
Aさんは深呼吸して、それから床に降り立つとドアまで一気に走った。
――ぐに。
途中でやわらかいものを踏んづけて転んだ。完全に漏らしてしまったので、トイレなどもうどうでもよかった。怖いもの見たさで、さっき踏んだものを恐る恐る手で触ってみると、生の鶏モモ肉みたいな手触りだった。少し硬い部分もあった。Aさんは立ち上がって、ドア横まで歩いて、電気のスイッチを入れた。
床には、肉塊が落ちていた。ピンク色で、ところどころに血管の赤。先ほど触れた固い部分は”爪”だった。そしてこれが「人肉である」と唐突に理解した。