「こっくりさん、こっくりさん。お帰り下さい」
十円玉が勝手に動き出す。
「いいえ」
「……え?」
Aさんの額に冷や汗が流れます。
「こっくりさん、こっくりさん。お帰り下さい」
十円玉が、再び勝手に動き出す。
「いいえ」
「ちょっと! 何なの!? マジでやめてよ!!!!!」
半狂乱になりながら、何度も繰り返したけれどこっくりさんは帰ってくれません。
「こっくりさん、こっくりさん……どうして帰ってくれないのですか!」
「け」
「ん」
「か」
「り」
「よ」
「う」
「せ」
「い」
「は」
「い」
Aさんはすべてを悟ると、ゆっくりと十円玉から手を離しました。