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ネズミの話⑩

 自分の病室があった階まで戻って来た。走ったので、そう時間はかからなかった。ふと、美味しそうな匂いがした。上の階からだ。私は全速力で走り出した。



 階段を上ると、彼女がいた。会いたかった!

彼女はとても驚いた顔をした。私は彼女に駆け寄ると抱きついた。


「会いたかった」

「私もよ」

「ずっと、貴方の話を聞いていたよ。それだけが、私の唯一の楽しみだった。」


「治ってくれるって、信じてたわ。本当に、うれしい」

 私は彼女の涙をぬぐった。

「今日はあなたの大好きなハンバーグを作るわ」

 さぁ、私たちの家へ帰りましょう。と彼女は手を差し出した。





 見覚えがあるような、ないような家に着いた。

「まだ完全に記憶が戻っていないのね。でも、きっとそのうち思い出すわ」

 と彼女は言った。彼女のハンバーグが食卓に並べられた。ああ、おいしい。おいしい。おいしい。おいしい。おいしい。

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