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ネズミの話⑤

 今日も彼女はやって来た。


「回し車を買ったら、ハム子がずっとくるくる回してて可愛いのよ」

 ハム子は、彼女が飼っているハムスターの名前だ。目の前にスマートフォンを持ってこられる。ハムスターが、GIFのように延々回し車を回す動画が流れていた。


 回しても、回しても前に進むことはないのに愚直にも回し続けるそのさまは、まるで人生のようだと思った。


「ね!可愛いでしょう~~~」

 彼女は同調を求めたが、私の口は、口枷でふさがれているから何も言えないぞ。


 ただ、もし私が喋れたなら「君のほうが可愛いよ」と言おうと、ふと思った。さすがにクサすぎるだろうか。


 彼女はスマートフォンをしまうと、チューブを取り出し、私の腹に接続した。

「また明日」

 微笑むと、病室を出て行った。




 やがて空腹感がだんだんとなくなって、満たされていく。




 その日、私は夢を見た。ハムスターになって、彼女の部屋にある檻の中で、回し車をくるくると回していた。


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