また朝になった。彼女が待ち遠しい。
昨日彼女が生けてくれたガーベラを眺める。花瓶の置かれた小さな机は壁の近くに置かれていて、窓はない。この部屋は四方がすべて白い壁で覆われている。
病室にしては非常に珍しいと、常々思う。もしかしたら私はアルビノなのかもしれない。日光を浴びることによって皮膚がんや視覚障害が引き起こされるから、私のいるこの病室は窓がないのだと推理した。体がベッドに横たわったまま拘束されているので、正解を確認するすべを持たないのだが。
そんなことを考えていると、コツコツと靴音が近づいて来る音がした。彼女が来た。
「おはよう、ツクモ」
おはよう。今日はなんだか、少しうれしそうだ。
「私、ハムスターを飼い始めたの」
彼女は笑顔で言った。
私はハムスターを好きではないので、ああ。あのネズミの一種か、と思った。
大体何であいつらは、ネズミに毛が生えた分際のくせにあんなに人間様に可愛がられているのだ。遺伝子的には、歓楽街でゴミを漁る小汚いネズミとほぼ同じだぞ。
「ほら見て!かわいいでしょう」
とスマートフォンの写真を見せつけてきた。やめろ! 媚びを売るように両手でヒマワリの種なんぞ食いやがって!
ディスイズ マウスのくせに! 首だけは動かせるので、首を右か左に動かしてネズミ野郎を見ないようにしようかと思ったが、彼女の笑顔があまりにも美しいので我慢した。
彼女は終始、楽しそうに飼い始めたハムスターの話をしていた。