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第4話『正当な理由があっても受け取れない』

「どうしようね」

「私達の意見は変わらないんだけど」

「いやぁ、さすがに報酬は均等に分配されてるんだから受け取れないよ」


 ご飯を食べ終わった後、休憩のために公園で休憩しながら話をしている。

 そこで、貰ったばかりのお金について話をしていた。


「だって私達は注意を逸らしていただけだったし」

「そうね。全額じゃないにしても、均等に分けられるのはこっちの気が済まないっていうか」

「言いたい事は俺もわかるけど……」


 頑なに断りたいわけじゃないけど、俺にとってあまりにも高額すぎる。


 お金はいくらあっても足りないっていうのは痛いほどわかるけど、自分の分だけでも取り扱い方に困っているのに、ここへさらにお金を貰ってもどうしたらいいかわからない。

 普通に考えたら、気にせず貯金しておけって話なのはわかるんだけど……。


「参考までに訊いてみたいんだけど、2人でおいくらって話になってるの……?」

「1人50万円ずつかな」

「最初は全額を渡そうってなってたんだけど、一心だったら絶対に受け取らないよねってなってさ」

「だから半分にしてみようって」

「そこまで予想ができているなら、諦めるって選択肢はなかったの?」


 だってさ、1人50万って事は自分のも併せたら200万になるんだよね。

 無理だよ、本当に無理だよ。

 そんな大金が貯金されているっていう事実で、気が気じゃない毎日が始まっちゃうって。


「じゃあ何かでパーッと使えたりしたらいいんだけどなぁ。贅沢したって、なんだかもったいない感じがするしなぁ」

「いっそのこと、みんなの装備を新調するとけ?」

「お、それだったらいいんじゃないかな。それぞれに欲しい装備を買って、足りない額をみんなで補うって感じで」

「おぉ! じゃあ決まりってことで!」


 かなりの名案だと思う。

 だけど……。


「そんなに高い装備ってあるの……?」

「どうなんだろ。黄金の剣とか!」

「なにそれ重いだけじゃん」

「た、たしかに」


 そもそもの話、装備の値段ってどういうので決まるんだろうか。

 ダンジョンで採取してきた素材を加工して、そこからあれだのこれだのってするのはわかっている。

 俺は鍛冶師といっても、今まで自分でお客さんを相手したことはない。

 ないってわけじゃないけど、前のパーティメンバーの武器を手入れしていた程度。

 他には師匠が仕事をしてるところを眺めていた程度で、いろんな武器は観てきたけど本当にそれだけ。


「迷っていても仕方がないし、調べてみよう!」


 春菜はるなの言う通りだ。

 せっかくインターネットという便利なものがあるっていうのに、どうしてそれを有効活用しないのか。


「えーっと、どれどれ」


 スマホを取り出して、いざネットサーフィン。


 実は、日用雑貨以外にも武器のオンラインショッピングがあったりする。

 暇な時間に覗いてみたことがあるけど、本当にいろいろなものがあった。

 武器の形状もいろいろな物があったし、値段もそれに伴ってバラバラ。


 今回は、あえて値段が高そうな……『強い装備』なんて、文字を入力して検索してみた。


「うっわ、高っっっっっっっっっっか」


 もう少し、良い感じの検索方法があるんだろうなぁ……なんて思いながらとあるサイトを見てみたら、剣だけで1000万円するものが出てきた。


 春菜と真紀も同類の物を見つけたようで、とんでもないほど目を見開いている。


「で、でもさ。春菜が言っていた感じではなさそうだね」

「ねぇ~。見た感じ、他の剣とそんなに違う感じがしないし、なんなら細剣っぽいのもある」

「見た目じゃなく中身なんだろうけど、それでもあんまり理解できないよね」

「俺らみたいなほぼ初心者は、お店に直接足を運んで店員さんと話をしながら探した方が良さそうだな」


 意見は満場一致。

 春菜と真紀も同意見だというのは、すぐにスマホをポケットへ戻す動作で伝わってきた。


「あ、そろそろ時間なんじゃないの?」

「だね。じゃあ今日はこのまま解散ってことでっ!」

「ごめんね、本当だったらこのままダンジョンに行きたいところなんだけど」

「いやいや、仕事なんだから仕方がないよ」


 連絡が入ったのは、お昼ご飯を食べている最中。

 春菜はるな真紀まきのスマホに、タイミングは一緒じゃなかったけどマネージャーから仕事の連絡が入っていた。


「もしかしたら入るかもって言われてたから、無くなる方向になってほしいって思ってたんだけど」

「こればっかりは仕方ないよ。私達、やりたいようにやらせてもらってるんだから」

「まぁねぇ~。それを言われちゃうと何も言えない~」

「ちなみに一心」

「ん?」

「春菜って、普段はこんな感じだけど仕事が始まると別人になるんだよ」

「どんな感じに?」

「それはもう、今とは真逆でキリッと決め顔。ポーズまでバッチリにカメラマンの要求通りにやってのけるんだよ」

「わーお、そりゃあ凄い」

「あーあー!」


 この話をされるのが恥ずかしかったのか、春菜は大きな声で話を遮ってきた。


「いいじゃん。このままだと、一心に『仕事中もこんな感じ』って思われてたよ」

「え、そうなの?」

「まあ……俺は、探索者や配信者としての春菜しか知らないからね」

「ちょっと複雑な心境! かぁ~っ、真紀の事も言ってやろうって思ったけど、今と変わらずだから何も言えないーっ」

「私、表裏一体ですから」

「ぐぬぬ」


 悔しそうにしている春菜。

 だけど、真紀の事は理由とかを説明されなくても自然と納得できる。


「なんの確証もないけど、上の人にお願いしたら見学とかできたりするんじゃないかな?」

「どうなんだろ~。こればっかりはちゃんと聞いてみたいとわからないからね」

「いいよいいよ。どう考えても、俺は部外者でしかないし。同じパーティだからって、仕事の邪魔はできないし、しちゃダメだってわかってるよ」

「部外者って……そんなこともないだろうけど。でもたしかに、完全なる別世界ではあるからね」

「でしょ。てかもしも許可が下りたとしても、場違いすぎて俺が逃げ出したくなるかもしれないから」


 勝手に緊張して、ずっとトイレでうずくってそうな未来がみえる。


「撮影とかいろいろ含めて、3日間ぐらいって言ってたっけ?」

「大体それぐらいって話ではあったかな」

「俺も俺でいろいろと調べてみたり、練習とかしてみたいってて思ってたからちょうどいいよ」

「むむむ~」

「後、連絡だったらいつでもできるんだし」

「たしかに!」

「じゃあ、そろそろ集合場所に向かうね」

「うん。2人とも、お仕事頑張ってね」

「ありがとっ。それじゃーいってきまーすっ」

「また後で連絡するね」


 2人は小走りに目的地へと向かって行った。


「よし、俺も頑張らないとな」

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