とある賑やかな飲食店の一角にて、彼らはスマホを片手に食事を摂っている。
「最近、武器店に行く頻度が増えてない?」
「しかもそれのせいでお金の消耗が激しい気もする」
対面する
「ったく、俺達の戦い方は別に変ったわけじゃねえってのに」
「台田が武器を荒っぽく振り回してるからじゃないの」
桧谷からの指摘に、台田はテーブルに置いてある拳へ力を込め、言葉に怒気が込められる。
「はぁ? 俺は探索者になってからずっとこの戦い方だ。乱暴に戦ってたんなら、もっと早く武器の状態に気が付いていただろ」
「まあたしかに、最初から3人で戦ってたようなもんだからね」
「だろ」
根巳住の発言により、台田の怒りは静まる。
「今思い返しても面白いよな。食費とかの出費は4人分だったのに、稼げるのはほとんど3人分。それで、どうやって活動を継続していくんだって話」
「本当にその通りよね」
「鍛冶師だかなんだか知らないけど、物珍しいからパーティに勧誘したっていうのに大外れもいいところだったわね」
「マジでウケるよな、戦闘中はビビッてずっと後ろの方に居てよ。完全に弱ったモンスターにしか攻撃できねーでやんの」
腹を押さえ、段々と笑いが込み上げてくる一同。
「今でも憶えてるわよ。あいつ、剣を握ってはいても手がブルブルッて震えたんだよ。笑いを堪えるのが大変だったんだから」
「それで自覚してるんだから、たちが悪いったらありゃしない。食事に出掛ける時、私達の誘いを断って部屋に籠ってるし」
「あー、あれは今でも腹が立つわよね。あれのせいで、私達があいつを虐めてるみたいな風に周りから見られるようになったの」
「そうそう、自分勝手にもほどがあるんだっての」
しかし彼ら彼女らは、機嫌を損なうどころか不敵な笑みを浮かべていた。
「それでよ聞いてくれよ、この可愛い子達の配信がよ」
「その話さー、やめてくんない?」
「私達への当てつけのつもりなの?」
「まあまあそんなにカッカすんなよ。頼むからさ、観てくれよ」
すると、
「わお、あいつじゃん」
「他人の空似じゃない?」
「いやいや、この顔とか背格好を見間違えるはずがないだろ」
「それもそっか」
「なんだか知らねえけど、こいつがこの美少女達とパーティを組んでるんだよ。しかも、コメントを見る感じだと好印象ぽいし」
「はい? そんなことがあるの? どうせ期間限定とかでしょ」
「もしかしてあれなんじゃない。こいつを利用するだけ利用してパーティから追い出すとか」
「うわー、もしもそうだったとしたらこの2人の性格は最悪じゃん」
「でもそれ以外は考えられなくない? もしかして弱みを握られてるとか?」
「あいつが、んなことできるわけねえだろ。へなへなしてる野郎だぞ」
理解に苦しむ3人。
だが一心の活躍を確認し、納得する。
「ははーん、なるほどね」
「あいつ、まさかの人生で一回しか引けないスキルガチャを回したってことね」
「で、その珍しいスキルを餌にパーティを組んでる、と」
「だけどつまり」
「ああ間違いねえ。この子達は、一心を使うだけ使って後から捨てるつもりなんだろ」
ぷぷぷっと一同は、周りを気にして盛大に笑いそうなところを我慢した。
「あいつ、とことんついてねえっていうか、自分に見合っている人生しか歩めないんだな」
「ここまでくると同情してあげたくもなってくるわね」
「なんだか使えそうな防御スキルっぽいし、もう一回だけパーティに加えてあげる?」
「んで、用済みになったらもう一回ぽいっとな」
しかしもう堪えられず、一同は吹き出してしまう。
「そんで、美少女達があいつを変わった呼び方していたから調べてみたんだよ。そしたらあいつのアカウントっぽいのがヒットしたんだよ」
ほうほう、と台田のスマホへ顔を近づける桧谷と根巳住。
「俺もたった今みつけたばっかだから――はぁ?」
まず視界に入ってきたのが、登録者人数【150】。
ただのノリで配信者として活動を開始したものの、台田のアカウント登録者数は0人。
「落ち着きなよ。どうせ、この子達のおかげだって」
「それと、珍しいスキルってだけで登録しているお馬鹿さんなんだよ」
「――それもそうだな。俺もそう思う」
めんどくさい流れになってほしくないから、台田を慰める2人。
しかし、心境的には同じでもある。
落ち着いた台田は、不敵な笑みを浮かべながら悪知恵を働かせた。
「じゃあさ、こいつがどれだけ使えないやつか、そんでもってパーティから追放されたってことをコメントで暴露してやろうぜ」
「おー」
「考え方、悪っ。でも、それ面白そう」
「だろ? でも、今の視聴者はまだ2桁だから別のタイミングにしよう。どうせなら、3桁ぐらいの人数が視聴している時がよくないか?」
「それいいね」
「賛成」
「くぁ~、楽しみが増えたな。今日は沢山食べようぜ」
謎の達成感に包まれる3人。
「視聴者からも見放される姿をリアルタイムで観られるって最高だな」