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106話裏話 夏の温室が蒸し暑い理由とカールセンの気候

 ジェンキンス侯爵領の領都カールセンは、海に面してはいませんが国内では比較的海に近い方で、その恩恵を様々な形で受けています。




 海から採れた物や港に荷揚げされた物は、大陸屈指の大河ロフ川で運ばれるので物流でも有利ですし、内陸と言うほどの内陸でもないので海洋性気候の特徴を備えた、比較的温暖で過ごしやすい気候にも恵まれています。




 本作中では開始時点が3月で、日本では春と言えますがカールセンではまだ寒さが残っています。


この時期の平均気温は10度ほど。夏は8月が一番暑いですが、それでも25度程で30度を超える日は滅多にありません。夏は雨が少なく、からっとした日本とは違う暑さです。




 秋から冬にかけて雨が多く降り、王都シルヴェルの背後にそびえる山脈には多くの雪が降りますが、カールセンでは雪はとても珍しく、そもそも気温が5度を下回ることもあまりないような気候です。




 それでも、数百年に一度という頻度で「雪が降るほど寒い冬」が訪れることがあります。




 露地植えで全滅した白アロエは「運が悪かったなぁ~」って奴ですね。室内で鉢植えにされていたり、もう少し南の地域であれば、無事に冬を越えています。


 実際、カモミールたちが街中で見つけられなかった白アロエも、個人の家を片っ端から探していれば見つかったでしょう。




 王都は王国北部に位置し、背後を急峻に守られ、天然の要塞になっています。けれどその分気温が低く、最も過ごしやすい季節が夏であり、夏が社交シーズンになっています。






 106話の冒頭で、蒸し暑い温室を書きました。


 カールセンは本来夏に蒸し暑いことはありません。けれど、温室には湿度が必要な理由があったのです。




 この時代、産業革命一歩手前なのに錬金術の発展のせいで地球の歴史とは違う技術の進み方をしていますが、さすがにクーラーはなく、夏の日差しで温室内の気温が上がってしまったときにそれを下げる方法は「大量に細かな霧を吹き、その気化熱で温室内の温度を下げる」ことなのです。


 これを実行するためには圧力を掛ける装置などが必要ですが、それは発明されています。


 水やりと温度管理の両方を行える、優れたシステムです。けれど多湿状態になりすぎると病害虫の危険が高まるので、庭師はその調節に苦心します。




 本編内で温室が蒸し暑い理由を書くことができなかったので、いい機会なのでカールセンの気候を交えて書いてみました。



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