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第25話:某ラスダン的な町:this spring

「はぁ。わかったよ。元はと言えばセオが悪いしね」

「え、何の事?」


 何だ藪から棒に。


 ん? でも、今のロイス父さんの発言からいくと、ソフィア達がロイス父さんに追及してたのって俺の事?


 でも変なことしたか? 礼儀作法は“研究室ラボ君”を使ったから完璧だった筈だし、言葉遣いもそれほど変ではなかったはずだ。


「はぁ。こういう能天気さはどうすべきか……」

「まぁ、良いところだし、ロイスくんたちが頑張ってサポートするしかないね」

「んー。一般常識くらいキチンと教えたいところだけどね。まぁ、個々じゃあ意味はなさないけどね」

「自由ギルドの資料室にある程度のものはあるけど……、いや、確かに意味はなさそうかな。プラスよりマイナスの方が大きそう」


 困惑する俺を置いて、ロイス父さんとソフィアは勝手に会話を進めていく。


 正直、何のことを言っているのか分からない。


「のお、お二方。そこだけで会話を完結させないで欲しいのだが」

「ああ、悪いね、フェーデ。じゃ、ロイスくん、説明を」


 そうソフィアに言われたロイス父さんは俺の方にくる。


「えっ、何するんの!」


 そして俺を持ち上げ、机の上に座らせた。


「皆さんがさっき感じた通り、セオは特異能力ユニークスキルを持っています」

「ちょっ! ロイス父さん!?」


 そして、俺が特異能力ユニークスキルを所有している事をばらしたのだ!


「ロイス父さん! 何でばらすの……、あれ、今、みんなが感じたって言った?」

「うん。言ったよ。……、はぁ、その様子じゃ気づいてなさそうだね」


 周りを見ると、みんな全くもって驚いてない。本では特異能力ユニークスキルはとても稀少だと書いてあったはずだ。


 ってことは、みんな知ってたのか。


 え? 待って。いつバレた。俺の“解析者”は内心発動系の能力スキルだから、自分から話さない限り、そうバレることはない。


 鑑定系の能力スキルならステータスを覗く事で能力スキルが分かることはあるが、それだって常に警戒して“研究室ラボ君”に妨害してもらってる。もし、万が一鑑定系の能力スキルで鑑定されたら、その時点で誰が鑑定したかまで分かるようになっている筈だ。


「セオ、さっき自己紹介する時に何をしたか思い出してごらん」


 ロイス父さんはなるべく優しく俺に問いかける。


 自己紹介? ええー、自己紹介は普通に……


「あ」

「ようやく気が付いたみたいだね。そう、内心発動系の能力スキルは鑑定されない限り、バレないよ。けど、外部発動にしたらそれはバレるよね」


 ああーーー! やってしまった!


 そうだった。礼儀作法を完璧にするために“研究室ラボ君”で肉体を制御、つまり能力スキルの行使を外で行ったんだ!


「あーーー。なんで! 先に言ってよ! 注意してよ!」

「はぁ。あれだけ能力スキルに精通していて、それに気が付かない方がおかしいんだよ」


 ロイス父さんがアホの子を見るように俺を見る。


 やめてくれ、そんな目で見ないでくれ。恥ずかしい。


 でも、そんな俺を無視してソフィアはロイス父さんに問いかける。


「で、セオくんには悪いけど、セオくんが所持してる特異能力ユニークスキルの詳細は? あと、何でその年で所持ができる理由を。普通は魂魄の許容がないはずなんだから」


 そういう事か。だからソフィアは怒っていたのか。魂魄が、つまり、俺の存在があり得ないんだもんな。


 でも、その前に気になることがある。


「待って、ソフィア。その前に一つ。確かに俺は“解析者”を行使した。けど、ここにいるみんながそれを分かったの? それこそあり得ないじゃん。外部発動で行使はしたけど、普通それは感知できないじゃん」


 そうなのだ。能力スキルだって目に見えて分かる発動ならまだしも、そうでないものなら普通、分からない。


「ロイスくん。セオくんにこの地についてどういう所か説明したことは?」


 俺の遮りに、快く待ってくれてたソフィアはロイス父さんに訊ねた。


「あるにはあるけど、まぁ、外に出たことはないから実感はまずないよね」

「ああ、そういうこと。……、いいかい、セオくん」


 そして、いつになく真剣な顔で俺の目を覗き込む。


「ここはかつて、アダト森林とバラサリア山脈から溢れ出る魔物によって、魔境とさえ言われていた場所だよ。そしてロイスくんがこの地の領主になるまで、エレガント王国や自由ギルドでも本格的な対処はできなかった。でもね、この地は昔から住んでいる人たちがいる。魔境と呼ばれた場所で生き残ってきた人々がいるんだ」

「もしかして、ロン爺やグレイブ、ルルネネさんとか?」


 俺はグリュウさんやアカサさん、ケーレスさんなども見る。


「うん。というより、ボクも含めて全員だね」

「え? ソフィアやラリアさんもなの!?」


 自由ギルドの人って派遣だと思ったんだが。そして話が読めてきた。


「今、セオくんが思った通り、普通は派遣だよ。だけど、この地は特殊だからね。っと、それで、ボクたちはこの地を生き残ってきた。それは大変だよ。セオくんが想像するよりはるかに。たぶんそれが実感できるのは来年だと思うけどね。まぁ、それはおいといて、だから、ボクたちは強いんだ。それは戦う強さだけじゃない。逃げる強さ、隠れる強さ、見つける強さ、生き残る強さ。ボクたちだけじゃない。この町の大人はみんな強い。だって、この地で生き延びてきたんだから」


 それから、ソフィアは大きく一息つき、言った。


「だから、セオくん。ボクたちは特異能力ユニークスキルくらい感じ取れるんだ。それが感じ取れないと死んでしまうから」


 その最後の一言は畏れすら抱く重い重い言葉だった。


「ロイス父さん、この町って結構ヤバい?」


 俺はその重みに耐えられず、ロイス父さんに訊ねた。


「まぁ、そうだね。さっき、グレイブとの会話で僕が国と戦争できるって言ったけど、この町なら、たぶんこのエア大陸全土まではいけるくらいかな」


 クロノス爺。ここはとてもヤバいです。


 それくらいはキチンと事前報告をしてほしかったです。

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