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第27話 暴れん坊将軍のジレンマ

 ここまでこの小説を読んでくれるような人なら想像して欲しい。


『暴れん坊将軍』という時代劇

 クライマックスは毎度のお約束、見せ場のチャンバラシーンである。


 悪代官のお屋敷に主人公の上様がさっそうと現れ、言い逃れが出来なくなった代官が


「であえ、であえーーーーーー!」

「曲者じゃ、斬ってしまえ~~~~!!」となるアレ。


 代官に呼ばれて、切られ役となる家来がババババーッと現れて刀を抜いて

『はい、チャンバラ準備OK!』


 となるアレ。


 おかしいよね?

 アレおかしいよね?


 何がおかしいって、あんなすばやい対応を実現しようと思ったら

 普段から、かなり上様っぽい感じの敵の襲来を予測してないと無理だよね?


 しかも玄関や裏口ではなく

「ぜったい中庭のこの辺に現れるぞ!」と想定して練習してないとダメだよね?


 なんなら、今日の夜何時に上様が来るぞ、準備しとけ。ぐらいの情報も無いと

 あんなキレイに短時間で正しく目標の場所を取り囲んで

『はい、チャンバラ準備OK!』って出来ないよね。


 でも、結構出来そうに思われちゃってるってところが問題で。

 フィクションの中だけならまだしも現実でも出来るとアテにされちゃってることがあって。


 こないだも一発30億円とかする高性能対空ミサイルが、トロくっさい無人機を撃墜しようと発射したのに『2発も連続で外した』という大事件があってな。

 どうすんの? と。

 もうすでに各国がそのミサイルを大量購入して配備してるのに、どうすんの? と。


 阪神淡路大震災のときも電話線が切れることを想定してなかった消防署が

 救援要請の連絡が来ないので出動できない。というシステムエラー状態となり

 じわじわメラメラ街が燃えて人が燃えているのに、来るはずもない連絡を

 延々と指をくわえて待ってるしか無い、そういう地獄が発生した。


 スポーツイベント会場で、アーノルド・シュワルツェネッガーが

 変質者に飛び蹴りされたときも、シュワちゃんよりも屈強なボディーガードが2人もいるのに。

 おそらくとんでもなく高額で雇われているボディーガードなのにも関わらず、まるでうしろを警戒せず、シュワちゃんと同じ方向を見ていて。

 後ろから助走を付けて走り寄ってきた不審者の男に思いっきりのドロップキックをかまされるという、まったく言い訳できないザル警備を披露した。


 あのな

 ガード対象だって目が付いてる、前から来たら本人も対応できる。


 ガード対象と一緒に前を見ていてどうする。

 うしろを見とけよと、な?

 お前は後ろを警戒しておけと。


 これも見かけとブランドばかりで

 まったく使い物にならないものを信用していた結果。


 もっとも上様チャンバラと現実のギャップがすごいのが


『桜田門外の変』


 あれがわかりやすい。

 今で言う『内閣総理大臣』な殿様が登城途中で武装集団に襲われ暗殺されるという事件なんだが。


 これには家柄バッチリな先祖代々お殿様にお使えする申し分なき身分

 立派なおサムライさんらが沢山護衛に付いていたんだなこれが。


 その数、実に26名!

 襲撃犯18名に対し、26名のサムライが護衛!(数字は諸説あり)


 まぁ、何があろうとそう安々とやられはすまい! 

 すこし時間を稼げば、どんどん加勢も来るだろう、なんといっても

 本拠地の彦根藩邸が目と鼻の先、まっすぐおよそ400メートル無いくらい。

 見えるところに建っている。



 ところがあっさり お殿様を殺られちゃったと。


 え!?!?!?


 なにしてたの? ──── と。


 護衛は何してたの? ──── と。



 後半へ続く!




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