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第6話 これが『機動戦機ギャンダム』!!

 これから……!

 これから……!


 これから憎たらしい奴らをこの武器で薙ぎ払ってやろうと思ってた矢先に

 いきなりの弾切れである。


 そりゃフェミ子からしたら「なにこれ?」である。


 そう。

 フェミ子にはわからない。


 ガトリング砲がどれほど砲弾を消費するか。

 そもそもフェミ子が弾と認識しているのは

 数発に一発ずつ混ぜられている弾道観測用の曳光弾光る弾であって

 実際はその何倍もの砲弾が膨大に発射されているのだ。


 ブオオオオオオオオオオオオというおかしな発射音も

 弾が高速連射されすぎて「ダダダダ」と区切りの音が認識できずに

 ブオオオオオオオオオオオオとひと繋がりに聞こえているに過ぎないのだ。


 当然、短時間でとんでもなく砲弾を消費し、やがて尽きる。


 楽しい『ブオオオオー!』のパーティタイムはそんなに長持ちさせられない

 手持ち花火のようにあっけなく終わるものなのだ。


「えええええ~~~~~……」


 さっき迄の高揚しきっていた気持ちにいきなり水をさされ

 フェミ子は首を傾げつつ顔をしかめて

 腹立たしげに声を漏らした。


「思ってたのと違うわぁ……」


 至極勝手な言い草である。


 フェミ子の中ではアニメに弾切れなんて無いという

 なんともバカにした常識があったのだが

『機動戦機ギャンダム』は違う。


『機動戦機ギャンダム』はロボットプロレスと揶揄された

 毎回違った悪役レスラー然とした敵ロボを

 理論もクソもない、わけわからんド派手な必殺技やパンチでなぎ倒し、ヒャッハーする系の作品が粗製乱造されてた時代。

 半世紀前のあの時代。

 それら『スーパーロボットアニメ』が圧倒的テンプレートと化して幅を利かせていた時代。

 それら時代の、子供だましの、子供をなめきった常識への、アンチテーゼを込められて作られたアニメ作品!

 まさしく『リアルロボット系アニメ』なのだ!


 そう! リアルなのだ!


 現実的な設定が現実的な兵器として二足歩行型機動陸戦兵器を描き出した。

 それがかつて無いブームを巻き起こし、社会現象にまで発展し、プラモ欲しさに事件事故が発生するほどの狂乱を生み出した

『機動戦機ギャンダム』の真骨頂であるのだ。


 だから頭部武装にも『ガトリング砲』という実在する兵器がれっきとして設定されており

 威力も現実のそれに応じ、そして当然弾切れもする。


 ちなみに『ガトリング砲』というのも

『ただ名前の付いている機関砲』などではない。

 固有名詞ではなく『機関砲の形式』なのである。


『複数の砲身が回転しながら発射時の加熱による様々な問題を抑制しつつとんでもない早さで順番に連射する』という特殊な兵器の形式。

 わざわざそんな特殊なものをチョイスして設定してあるのだ。

 しかもその特徴的な回転砲身は頭部装甲の中にあって劇中で見られることは一度もない。


 そう、一度もないのだ。

 見てわからない。

 名前を言われても普通の人にはわからない。

 どんな特徴の武器かわからない。


 お子様が見るアニメ。

 見た目だろ?

 見た目がすべてのお子様相手だろ?

 見えないところにこだわってどうする?


 今だって夕食時の放送時間ならそう言われるだろう。

 あの時代ならなおさら、あの『アニメは子供のもの』とバカにされ蔑まれた時代ならどんなに。

 どんなに風当たりが強かっただろう。

 スポンサーのおもちゃメーカーには理解されなかっただろう。

 めちゃくちゃ怒られただろう。


 だが、それがいい。


 そのこだわり。


 子供相手と妥協しなかった半世紀前の制作者の魂。

 それがギャンダムの武装の中でも地味な部類のこんなところにまで反映されている。


 違うのだ。

 スーパーロボットなどというデタラメとは違うのだ。


 いくらでも撃てる適当なファンタジー武装などでは決して無いのだ。


 それが……リアルロボットアニメ 『機動戦機ギャンダム』



 しかしそんなリアルはフェミ子にとって嬉しくともなんとも無い。


「弾切れとかあるの? なんで? アホなの? ねえアホなの? ショボ過ぎ。 嘘でしょおおお~……」


 のけぞりながらのたまったフェミ子の不満は、千葉県君津市の山の上、草木の香る青々とした朝の空気へと吸い込まれていった……。


 ──突然電子音のアナウンスがギャンダムのコクピット内に流れる。


〈システムキドウ、立ち上げが遅れて申し訳有りません。わたしはギャンダムBBNR32-02 支援システム。パイロットを登録します。お名前を伺ってもよろしいでしょうか?〉


 !?????




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