今、北米大陸でアメリカ軍とツブフェミ女が派手にドンパチをしている真っ最中である。
アメリカ軍になんの恨みがあるんだというのは一般人の考えであって
そういう理屈はあの女に通用しない。
自分が正しいと気が済むまで攻撃(口撃)をやめる気はなさそうだ。
ツブフェミが何かとか詳しい説明は省くが、
要するに、SNSと一般に呼ばれている、インターネット上の交流の場で、まるで世間にかまって欲しくてやっていると誤解されそうな感じに、
次から次へと萌えアニメなポスターなどに全力全開で問題提起をなさって下さる独特の感性をお持ちの方(?)あるいは、
自分自身のことを一切顧みず、一方的に出たり引っ込んだりする大変フレキシブルな倫理観を掲げて周りを口撃しまくる類の若干過剰な使命感(?)をお持ちの方、といえば良いだろうか。
そういうお方に、神様が何をトチ狂ったか、アニメに出てくる強力な巨大ロボ兵器を与えて放り出した。
そして当然のごとく大変面倒くさい事態と相成ったわけだ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
時を少し遡る。
20XX年、千葉県君津市。
東京都心から50キロ圏内のいわゆる都市雇用圏にある田んぼと宅地と丘陵地帯のベッドタウン。なにかとネタにされ『田舎』から『田舎の入り口』くらいに昇格したと言われる木更津市のお隣でも有る。
そんなのどかな君津市の、とあるアパートの一室。
最初は「機能的に! ゴチャゴチャ物を置かずにオシャレに暮らし始めよう!」としたであろうインテリアの部屋。
途中で挫折して、なんかもう、どうでもよくなった感じの散らかり方をした部屋の中。
観葉植物の葉っぱには、うっすらホコリが被っていた。
フェミ子(仮名、28歳、元OA機器代理店勤務、無駄に美人、子供の頃から容姿に自信あり)は
カーテンも開けずタオルケットにくるまって必死にスマホをいじっていた。
彼女の日課であるアニメオタクの男を口撃する書き込みに勤しんでいるのである。
我ながら情けないと思いつつどうしようもない衝動だった。
その気持ちがどこから来るのかわからないが、ホントにやりたいことでないことだけは確かだ。
『溺れる者』じゃないが、他に掴むものがなければ不本意なものでもすがるしか無い。
それがたとえオタク男性への攻撃という屈折したものであったとしてもだ。
なぜか彼らが自分より幸せそうに見えて仕方がなかった。
自分の胸にポッカリ開いている虚しさが、彼らの楽しげな書き込みには微塵も感じられない。
それがフェミ子の気持ちを逆撫でる。
なぜこんなに焦燥感が襲ってくるのだろう? ずっと消えない炎のようなものがフェミ子の心の底をチリチリ焦がし続けるのだ。
チリチリチリチリ……。チリチリチリチリ……。
しかしその日は様子が違った。
この日課が先日会社にバレたのである。
身バレ、通報祭り、電凸(対象人物の関係各所に苦情&イタズラ電話すること)
瞬く間に炎上(大騒ぎになること)、そして解雇。
憎い憎い憎い憎い……。
なぜ私が? なぜ私が? なぜ私が?
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い……。
いつも通り一方的な言い分で圧倒的勝利を味わうツールのSNSを用いた口撃が
なにもかも通用しない。
「ざまあw」
どんな口撃もこの一言のリツブライで片付けられてしまうではないか。
それでもフェミ子は戦い続けた。
何と戦い続けた?
この何もかもままならない世の中とだ!
婚活に失敗してから何か大きな歯車が狂った気がする。
いやもっと前からか。
この私が? 否定されている? なぜ? なんで?
なんで私が望んだ条件の相手と結婚できないの? ねぇ、なんで?
おかしいでしょ? 私、モテるのよ? なにが気に入らないの? はぁ?
(注意:フェミ子さんは、『モテる』のと『恋愛経験』は別だという事がわかっていません。さらに『恋愛経験』と『婚活』はまったく別次元だ。などと分かるはずもありません。)
「これは本来私が立っている場所ではない」
私が甘かった。
世の中を甘やかしすぎた。
その結果がこれだ。
これはお仕置きだ!
大きなお仕置きが必要だ。
この私がこの手で、徹底的にきついお仕置きをしてやらねばならん。
しかし、力が足りないのだ。現状を覆す力が無い。得体のしれない何者かにいつの間にか奪われてしまった。
いつの間にか世間の扱いが手のひらを返すように変わった。
もう一度。
もう一度奪い返したい!
「あああああああ! 私に圧倒的力さえあれば────!!」
……まぁこのような不毛な活動を朝から延々丸一日続けて夜中となり、再び朝日が登る頃合いになって、
そのあまりにも尊大な思念が、関わるとろくなことがないであろう異次元的な何かに作用したらしく、
彼女のアパートが大爆発したと思ったらそこには巨大なロボが起立していた。
コクピットで目を覚ましたパイロットスーツ姿のフェミ子は
メインモニターに映し出された自己診断用フェアリーカメラの映像,(ドローンみたいなやつ)、
そこにある巨大ロボこそ今自分が乗り込んでいるこの操縦席の外観なのだと理解した。