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0014 忍び寄る怨霊

しばらく走って見つけた小さな公園に入った。

俺の故郷の公園は、どこもでも遊具が有り木々が生茂り広いのだが、都会の公園は狭くてベンチがあるだけで殺風景だ。

ここで俺が警戒する相手の位置を探ると、まだ俺に気が付いていないのか近づいてはいない。


「ここで、しばらく様子を見よう」


「それは良いけど、何があったの?」


「ああ、ふふふ。あいつは今まで見てきた人間の中で一番やばい。初めて見るような巨大な怨霊をまとっている」


「えっ!?」


「新幹線を降りて、地下鉄に乗り換えただろう。その地下鉄の最寄り駅のホームで奴は電車を待っていた。電車が奴の前を通りすぎるときに、俺はその姿を見て驚いた。そして驚いた表情のまま奴の顔を見てしまった。その時、一瞬だったが目が合ってしまったのさ」


「ええっ」


「恐らく、俺を探しているのだろう。どうやら完全に顔を覚えられたようだ」


一瞬でそれだけの事が出来るのならただ者では無い。


「こ、恐い……」


「だが、俺がどこにいるのか具体的には、気が付いていないみたいだ。色々な場所をフラフラしている」


「でもそれなら、あんたを探しているとは限らないのじゃ無いかな」


「いや。だとすれば地下鉄に乗ろうとしていて、やめる理由がわからない。あきらかに驚いて顔を見た相手を追いかけようとしている。少なくてもそう考えた方がいい」


「そうね。その方が用心深いわ。用心にこした事はないものね。ところで、その巨大な怨霊ってどの位の大きさなの?」


「ああ、そうだな、だいたい今まで見て来た人の怨霊は、人の頭くらいだ」


「そう。で、そいつはどの位なの?」


「ああ。それはな……そうだな、まず相撲取りの中で一番大きな横綱を想像してくれ」


「ええ、大丈夫。したわ」


「その横綱を、三人横に並べてくれ」


「横に三人!! 大きいわね」


「いや、それだけじゃない。その頭の上にもう三人のせた大きさだ」


「うそっ!! ……大きいわね」


「ああ。だから、ここからでも歩いている所がわかる」


「そうか。大きいおかげで、こちらから先に見つけられるわね」


「ああ。だが、もし見つかったら、いや、捕まったらどうなるのか」


「……こ、恐い」


「どうやら、あきらめて地下鉄の駅に向ったようだ」


「ほっ……よかった」


俺とエマはしばらく、公園で狭い空を見上げている。

用心の為、地下鉄に乗るまで時間をつぶしているのだ。


「ふふふ、今ここの真下だ!」


「きゃっ!! やめてよー!! こ、恐すぎるわ」


「もう、大丈夫だろう」


俺は、高速で遠ざかっていく怨霊を見つめて、二度と会いたくはないものだと思っていた。


「じゃあ、私はここでお別れね。友達と約束があるの」


「そうか。ありがとう。助かったよ」


「ふふふ、じゃあまたね」


俺は、自宅の事務所へ向った。

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