「少年! 一緒に来てもらいたい所がある」
「えっ……普通に嫌なのですが」
俺は、非常に嫌な予感がする。
生命の危機をビンビン感じている。
「だろうなあ。じゃあ、どうだろう。成功報酬だが、助手として来てくれ。うまく行ったら五万支払おう」
「ご、五万……本当ですか?」
「ふふふ……」
コウさんが口では笑いながら、マリアさんの顔色をうかがっている。
どうやら財布のひもはマリアさんが握っているようだ。
ひょっとすると、このコウさんは恐ろしい顔はしているがいい人なのかもしれない。
「うふふ」
マリアさんがニコニコしながらうなずいた。
「ほ、本当だとも、うまく行けば五万は君のものだ!!」
「わかりました」
俺がお金に目がくらんで、同行を承知するとコウさんは刑事さんを見た。
「サエコさん、いいだろう。少年を少し借りていく」
「しょうが無いわねえ。帰るまでここで待っているわ」
おかげでヒマリまでついて来るようだ。
「ぎゃーーーあああああ!! ななな、なんですかーーここは!!!!」
来た事を後悔した。
マリアさんの運転で着いた所には、テレビカメラがいくつもついている。
そういう関係の人の和風の大邸宅だ。
それだけじゃ無い、黒い濃いモヤが湧いて出ている。
「どうぞ」
強面の人に通されて門を入ると、一つの建物から強烈にモヤが立ち上っているのが見える。
なぜか、マリアさんとヒマリと、エマもマユも緊張した顔をしてついて来ている。
「あの建物だろ?」
コウさんが指を指した。
「コ、コウさんも見えるのですか?」
「ほう、君は見えるのか? すごいなあ」
し、しまったー。
見えるのがバレてしまった。
「み、見えません。そういう感じがするだけです」
こういう事はぼかしておかないと、あとで大変な事になる。
「ふふ、そう言う事にしておこう」
お屋敷には強面の人が大勢いるけど、コウさんより恐い顔の人がいないのでおびえないですむ。
一番濃いモヤの建物に通された。
「かしら、入ります」
案内をしてくれていた人が、ふすまの前で中に声をかけた。
「おう」
その声と共にふすまがスッと開いた。
「うわあ」
そこから闇の様に黒い物が出てくる。
中には布団が有り老人が寝ている。
「コウさん、よく来てくださいました」
かしらと呼ばれた人がコウさんにあいさつをした。
そして俺と、ヒマリ達女子高生に視線を移し、ジロジロ見て怪しんでいる。
「ふふふ、助手と巫女です」
「なるほど」
かしらは納得してくれたようだ。
黒いモヤが俺にドンドン集って来る。
俺は、この黒いモヤが自然に集ってくる特異体質なのだ。
「ヤ、ヤス!!」
布団に横になっている、しわしわのミイラのような老人が目を覚ますと言った。
老人の顔色がみるみる良くなっていく。
「お、おやじーーー!!!!」
布団にしがみついて、かしらが号泣している。
「……さ、さすがだ。もう終ったのか」
老人が落ち込んだ目でコウさんを見つめながら言った。
その言葉を聞いて、コウさんが驚いて俺を見つめている。
「しょ、少年! き、君はいったい!」