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0006 初仕事

「少年! 一緒に来てもらいたい所がある」


「えっ……普通に嫌なのですが」


俺は、非常に嫌な予感がする。

生命の危機をビンビン感じている。


「だろうなあ。じゃあ、どうだろう。成功報酬だが、助手として来てくれ。うまく行ったら五万支払おう」


「ご、五万……本当ですか?」


「ふふふ……」


コウさんが口では笑いながら、マリアさんの顔色をうかがっている。

どうやら財布のひもはマリアさんが握っているようだ。

ひょっとすると、このコウさんは恐ろしい顔はしているがいい人なのかもしれない。


「うふふ」


マリアさんがニコニコしながらうなずいた。


「ほ、本当だとも、うまく行けば五万は君のものだ!!」


「わかりました」


俺がお金に目がくらんで、同行を承知するとコウさんは刑事さんを見た。


「サエコさん、いいだろう。少年を少し借りていく」


「しょうが無いわねえ。帰るまでここで待っているわ」


おかげでヒマリまでついて来るようだ。




「ぎゃーーーあああああ!! ななな、なんですかーーここは!!!!」


来た事を後悔した。

マリアさんの運転で着いた所には、テレビカメラがいくつもついている。

そういう関係の人の和風の大邸宅だ。

それだけじゃ無い、黒い濃いモヤが湧いて出ている。


「どうぞ」


強面の人に通されて門を入ると、一つの建物から強烈にモヤが立ち上っているのが見える。

なぜか、マリアさんとヒマリと、エマもマユも緊張した顔をしてついて来ている。


「あの建物だろ?」


コウさんが指を指した。


「コ、コウさんも見えるのですか?」


「ほう、君は見えるのか? すごいなあ」


し、しまったー。

見えるのがバレてしまった。


「み、見えません。そういう感じがするだけです」


こういう事はぼかしておかないと、あとで大変な事になる。


「ふふ、そう言う事にしておこう」


お屋敷には強面の人が大勢いるけど、コウさんより恐い顔の人がいないのでおびえないですむ。

一番濃いモヤの建物に通された。


「かしら、入ります」


案内をしてくれていた人が、ふすまの前で中に声をかけた。


「おう」


その声と共にふすまがスッと開いた。


「うわあ」


そこから闇の様に黒い物が出てくる。

中には布団が有り老人が寝ている。


「コウさん、よく来てくださいました」


かしらと呼ばれた人がコウさんにあいさつをした。

そして俺と、ヒマリ達女子高生に視線を移し、ジロジロ見て怪しんでいる。


「ふふふ、助手と巫女です」


「なるほど」


かしらは納得してくれたようだ。

黒いモヤが俺にドンドン集って来る。

俺は、この黒いモヤが自然に集ってくる特異体質なのだ。


「ヤ、ヤス!!」


布団に横になっている、しわしわのミイラのような老人が目を覚ますと言った。

老人の顔色がみるみる良くなっていく。


「お、おやじーーー!!!!」


布団にしがみついて、かしらが号泣している。


「……さ、さすがだ。もう終ったのか」


老人が落ち込んだ目でコウさんを見つめながら言った。

その言葉を聞いて、コウさんが驚いて俺を見つめている。


「しょ、少年! き、君はいったい!」

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