食事が終わり、コウさんの事務所に戻ると女刑事さんはすでにいなかった。
ヒマリとエマは、マリアさんに自動車で送ってもらい俺は歩いて帰った。
翌日の放課後、俺はこっそり一人でコウさんの事務所に向った。
今日は、昨日のバイト代をもらうために行くのだが、せっかく専門家に会うのだから、俺の身の上相談をしたいと考えている。
「入ります!」
「どうぞ」
「おう、少年来たな」
見るとコウさんのひざには愛くるしいマイちゃんが座っている。
コウさんは応接セットの自分の前の席を勧めてくれた。
そこに座ると、すぐにマリアさんが事務机の上から封筒を取ると歩いて来た。
「はい、まずはお給料」
マリアさんがにっこり笑って、俺に封筒を渡してくれた。
「ありがとうございます」
「ふふふ、中を確認して領収書にサインと印鑑をお願いね」
「はい」
俺は封筒の中を見て驚いた。
十万入っている。
俺は顔を上げると目を見開いてマリアさんを見た。
「うふふ、いいのよ」
「そうだとも、少年はその位の働きをした」
「あ、ありがとうございます」
俺はそそくさと領収書を処理してマリアさんに渡した。
しかし、いいのだろうか?
ほんの数時間同行しただけで、しかもうまいものまで食わしてもらった。
昨日のエビチリはどう考えても伊勢エビのエビチリだったはずだ。
寿司も回転の奴じゃ無い。
その上でこんなに沢山のお金までもらってしまった。
「少年の顔は、あんなことでこんなに貰っていいのだろうか? と言う顔だな」
「は、はい」
「どうぞ」
ハルミさんが俺とコウさんにコーヒーを、マイちゃんには真っ白なミルクを出してくれた。
そして、コウさんの隣に座ったマリアさんに紅茶を出すと、おれの横に座って紅茶を飲み出した。
「少年、あれはすごい事だ。あの、おやじさんは誰にも助けてもらえずに困っていたのさ。高い費用で霊能者を何人も雇ったと言っていた」
「でも、コウさんにも出来るのでしょ?」
「出来るが、俺はいろいろ準備がいる。あんなに簡単に終らせられない。助かったよ」
コウさんは高校生の俺に頭を下げてくれた。
できた人だ。
俺はこの人なら信用できると思った。
「コウさん聞いてほしい……」
そして俺は、ヒマリの事件の事を話した。
「なるほどな」
「俺は人殺しになるのでしょうか?」
「今の日本の法律では裁く事は出来んだろうな。何しろ触ってもいないのだからな。自首しても無罪だろう。ところで少年、おやじさんや、若頭には怨霊は見えなかったのか?」
「!?」
俺は突然の質問に驚いた。
「少年、ポーカーフェイスを憶えた方がいいな。で、少年なら殺せるのか?」
「!?」
まただ、驚いて目玉が落ちそうになっている。
コウさんはニコニコ笑顔でうなずいた。
もう全て理解してくれているようだ。
だが、その後真面目な顔をして宙を見つめた。