音無がいい表情を浮かべている。
自分がさっきまで酔っていたことも、爆弾発言をいくつか落としたことも全て覚えていた。酔っていたとは言え、恥ずかし過ぎる言動と年下の恋人からいいようにされたままでは、やはり黙っていることは無理だった。
「おれがおまえの弱点を知らないとでも?」
「そんなっ、さっきまであんなふにゃふにゃになってたのに…」
背中に1本人差し指の爪先を当てて、つぅっと下になぞる。音無の”いいところ”だ。
「あぁぁっ…!」
背中を逸らして悶える音無は、それだけで悲鳴を上げてしまうくらいには飢えているらしい。涙目で何かを懇願しているが、それが何かまでは分からない。音無のシャツを剥ぐように脱がせると綺麗なピンク色の先端が現れ、おれの理性が狂わされてしまいそうになった。
「…今度はおれから聞こうか。どうしてほしい?」
「うっ、ひかるさん…ずるい…かっこいい…すき…いっぱいちゅーして、気持ちよくなりたいから」
「ふふっ…よく言えたな」
むずむずするような台詞の羅列に思わず笑ってしまい、お望み通り唇を重ねてやる。啄むように繰り返すと、美影が何か思い出したかのようにおれをソファに押し倒し、四つん這いになった。その弾みで顕になった美影の足の裏に手を伸ばし、すかさず土踏まずを指圧すると悲鳴を上げる。
「そこ、なんで…っ!」
「気持ちよくなりたいんだろ。なら、ここからだな」
足の裏も性感帯になりえると知っていたから、もしやとは思っていたが……指の付け根を擽ると音無はあられもない声を上げて、思い切り背中を仰け反らせた。
「ふあっ…!それだめ、だめだってっ…」
「ん?あんなにクセになると言っていたのに?」
足の指と爪の間をカリカリと爪の先で刺激すると、堪らないのか指先がキュッと丸まり悶えるように震えている。さっきまでリードしていたと思わせておきながら、されるがままになるのはさぞ予想できなかった事だろう。
「…先にイくのを我慢できたら、俺の事を好きにしていい」
「そんなっ…!まさか…足の裏なんて…」
「…試してみるか?」
美影は余裕そうな顔をしているが、表情とは裏腹に身体は正直だ。足指の間の付け根、ちょうど股のようになっている箇所に人差し指を擦り付ければ悲鳴が聞こえ、それと同時に足だけでなく腰も大きくしなった。
「ゆ、赦してっ…!いっ...だめぇ…おかしくなるっ…」
俺の身体に寄り掛かる美影の身体の一部が誇張しているのが分かり、仕方なしに足は解放してやる。しかし目の前に見える紅色の突起に、何もしない理由はなかった。
「…なら、こっちを気持良くしてやろうな」
「んふぁっ…あぁっ!」
音無の乳首は薄紅色で、とても綺麗な色をしていた。…こいつに散々弄られて、少し変色し始めていたおれのとは大違いだ。それの先端を指先で擽るように撫で、次いで摘まんでやり
「ここ、好き?」
「ん…うん…。はぁっ…ひかるさん…」
「なんだ?」
「俺、光さんにめちゃくちゃにされるの、堪らないなぁ…って思いましたけど、やっぱり俺はひかるさんの可愛いとこが見たい。とろっとろに蕩けた顔が見たい…。ねぇ、俺、ちゃんと我慢しましたよ…?」
「っ…!」
ワイシャツからはだけていたおれの胸元に手の平を押し当て、指先でまさぐると美影が乳首を緩く摘まんできた。痛みと同時に訪れた強烈なそれは…それまでの何もかもを吹き飛ばす勢いがあったのは認めざるを得ない。
「…まったく、おあずけ喰らった犬のような顔してやがる…。『よし』」
実際にはないけれど、音無の尻からはち切れんばかりに振られている尻尾が見えた気がする。
とうとう観念して、俺は美影に大人しく抱かれてやることにした。
× × ×
ベッドに移動することすら煩わしくなり、二人はソファの上で互いに着ているものを次から次へと脱がしていった。ソファの近くには脱ぎ散らかされた衣服が散乱し、たまたまおねこの寝ている猫ベッドの上に桐生の着ていたシャツが被さる。余程心地いいのかぐるると喉を鳴らし、おねこは再び眠りについたようだ。
これで目撃者は誰もいなくなったと、音無は目の前で裸体を晒す桐生に容赦なく前歯を立てた。
白い肌には歯形や吸われた痕が残り、赤ん坊のように桐生の乳首を口に含めて舌先で転がした。桐生の喉奥から細い嬌声が漏れ、我慢しようと奥歯を噛み締めるがそれは叶わず、艶めかしい吐息が漏れてしまう。
「んぅっ…!あぁっ…音無…っ!」
「ふふ、何だかぞくぞくする…光さん、俺のこと好き?」
「っ…わかってるだろ…?」
「えぇ?ちゃんと言わないと分からないよ」
「あいしてる、美影」
向かい合っている音無の後頭部を引き寄せ、桐生が音無の唇に自分の唇を重ねる。ちゅっ、と可愛らしい音を立てて唇を離すと、「こんなのでいいのか…?」と恥ずかしそうに首を傾げた。
「はぁっ…ひかるさん、かわいいよぉ…花丸あげますっ…!」
堪らず音無は桐生の顔中にキスを落として、全身の血液と羞恥心が集まっている桐生の滾りを優しく握った。
「ここ、もうこんなになってる…ふふ、いっぱい扱いてあげますね?」
「っ…あぁっ…!そこは、まだ…っ…」
「こんなにトロットロにさせて、まだ強がってるなんて…。なら、こっちにあげますね」
音無が桐生の秘部に指を添えると、入口の周りをゆっくり指の腹でなぞった。収縮するそこに少しだけ力を入れて指を差し込むと、すんなりと音無の指の侵入を許してしまう。指の第一関節まで入ると内部の締め付けが強くなってきて、音無は何度も抽挿を繰り返した。次第に第二関節、指の付け根と咥えるようになった頃には、音無の表情には苦悶の表情は微塵も現れておらず、必死に何かと戦っているようだった。少し奥の方まで指先を侵入させ、少し掻き回すと我慢しきれずに、鈴口からトロトロしたものが滴り落ちた。もう一本増やした音無の指が根元まで入り込み、ばらばらと胎内を掻き回す様に指先を動かせば、あられもない嬌声が断続的に漏れ出てしまう。両足を押し上げ、突き出された臀から指を引き抜いて、涎を垂らし痙攣するそこに音無が既に反り返った剛直を当てがう。
「あァっ…!」
「もしかして、光さん…自分で弄ってました…?」
「んうっ…それは…その…」
「初めてなのにこんなにすぐ、入らないですよね…」
「うっ、うるさい!小説の参考に…少しだけ…っ」
「へへっ…ひかるさん、エッチだぁ…ん…っ…ほら、俺のが入ってるの、わかります?ほら、力を抜いて…」
水音を撒き散らしながら進んでいき、最初は優しく、次第に激しく何度も何度も腰を動かすと、桐生が好きそうな場所に当たる感触がした。桐生の中は生温かくて柔らかく、それなのに締め付けるので音無も既にどうにかなりそうだった。初めて感じるその温度は、昂る感情を更に熱く掻き立ててしまう。
「くっ、ん、そこ…」
「そこ?」
「当たって…あぁぁ…!やめ…強い…!」
急に肉壁の締め付けが強くなり、それと同じくしてしこりのような箇所が少し柔らかくなってきたような気がした。桐生の両手が音無の背中を鷲掴みにし、汗ばむ素肌へ爪痕を遺す。
「ん…っ…この辺り、かな…?」
「やらっ!みか、そこはだめ…!」
「ダメって言う割に気持ちよさそうですね?これ、もしかして前立腺なんじゃ…?」
喉が乾いて引き攣った声を上げ、桐生の足がソファの海で溺れる。臀を高く突き上げた格好が煽情的で、これでもかと音無を誘い込んだ。
「光さん、どう?」
「っ、なか、…きもちい…」
「ですよね?俺も...はじめてなのに、すんなり溶け込んじゃって…もう癖になりそう…」
こちゅ、とちゅ、と不思議な音を鳴らしながら中を搔き混ぜられ、桐生は頭の中が音無で埋め尽くされていくのを感じた。
「おとなし…みか…っ、あっ、うぁっ…!」
「ね、中、出して、いいですか…!」
「はやく…もう、我慢できな…っ」
「はぁ…っ…イぐっ…!!!ひかるさんっ!好きィ!」
「んあぁっ!」
音無が腰を思い切り奥まで突き出すと、音無の目の前が明滅して桐生の中に白濁をぶちまけた。初めて感じた快感は、何よりも『きもちがいい』と頭がはっきり憶える。一方桐生も言葉にできない程の衝撃を感じ、頭の中が真っ白になった。はぁはぁと荒い呼吸を繰り返し、音無が桐生からまだ衰えていないそれを引き抜くと、白い体液がごぼりと零れた。
「美影!…少しは手加減しろっ…!」
「えへへ…でも、きもちよかったでしょ?」
返事は返らず、吐息と共に桐生が恥ずかしそうにゆっくり頷いているのが真実を物語っていた。