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血は何処までも紅く染まる。
朧塚
ホラーホラーコレクション
2024年08月06日
公開日
4,078文字
連載中
ゴシック・ドレスを纏いながら闇のビジネスを請け負うセルジュとパンク・ファッションに身を包んだ猟奇殺人鬼の少女イリーザは闇の骨董屋から「真っ赤なドレス」を手に入れる依頼を請け負う。


これは、全てが真っ赤に染まった街の狂気の物語。

第1話


「真っ赤なドレスがコレクションとして欲しい」

 闇の骨董屋であるデス・ウィングはパラパラと本をめくりながら呟く。



「なんだよ。赤いドレスなんざ、何処にでも売っているじゃねぇか」

 あらゆる闇ビジネスの何でも屋のようなものを勤めているセルジュは気怠そうに返した。

 デス・ウィングは本のページをめくる。

 魔女狩りや吸血鬼伝説に関する書物だった。



「沢山の人間の生き血を吸ったドレスだ。『殺人者のドレス』と呼ばれている。部屋にインテリアとして飾りたい。行ってくれないか?」

 この悪魔は、とても楽しそうな顔をする。

 人間の残酷の産物を集めたコレクションがひしめく店内。


 それは彼女が生きる拠り所にしているかのように集めたものだ。



「いつも通りに行ってくれるかな?」

 彼女は足を組んで楽しそうに笑った。

「まあ、いつも通りにそれなりの報酬をくれれば行くけどさ」

 そういうわけで、セルジュは教えられた場所へと赤いドレスを手に入れに向かう事にした。





そこは吸血鬼伝説と魔女狩りの伝説が残る村だった。

セルジュはいつものように、猟奇殺人鬼の少女であるイリーザを連れて、この街へと訪れた。二人とも赤を基調とした服を着ていた。セルジュは真っ赤なゴシック・ドレス。


イリーザは真っ赤なパンキッシュの服を纏っていた。イリーザは髪の毛も少し赤く染めていた。


この街では“赤い服”が好まれるとの事だった。



「なんか私好みの街よねー」

イリーザは相変わらず無邪気にはしゃいでいた。

街に辿り着くと、住民達は聞かされた通り、真っ赤な衣服を身に着けていた。まるで、みなが血塗れの服を纏っているかのようだった。この街の風習なのだと聞いている。



「あんな風に真っ赤な服ばかり着ていると、ナイフで刺しても面白くないわね。真っ白な服とかにザシュ!ザシュ!って刺していくのが物凄く面白いのに」

イリーザはつまらなそうな顔をする。



「ああ。もう本当にお前ってそればかりだよな」

セルジュは呆れた顔をしながら彼女の話を聞き流した。

そして二人は宿に辿り着く。

宿も真っ赤な壁や床になっていた。


二人は前払いの料金を払うと、部屋へと案内される。

部屋の中も真っ赤に染まっており、真っ赤なベッドのシーツが眼をひいた。



「それにしても、この街は心地がいいわ。しばらく滞在しよっか?」


イリーザはベッドの上に座りながら、半透明な真っ赤なテーブルを使ってナイフを研いでいた。



「何もかも、赤くて赤くて赤くて、眩暈がしそうだ。人間って同じ色ばかり広がっていると頭がおかしくなるんだな」


セルジュは頭を抱えながらソファーの上に横たわる。

街に入ってから、気分が悪い。

同じ色ばかり見せられると、こうも気持ちが悪くなってくるのか。



しかも、赤は血の色だ。

今回の依頼は“この街で一番、赤いドレス。沢山の人の生き血を吸ったドレス”を手に入れる事だった。

博物館とかにでも飾っているのだろうか。

だとしたら、強奪するしかないか。

住民達から話を聞いた限り、街の中央には『バートリィ城』という場所があるらしい。



そこは、街を収めている君主がおり、この街を統治しているらしい。

行く為には、馬車に乗って行かないといけないらしいが、城は森に囲まれており、森には君主が解き放った魔物が多い為に、馬車は魔物の出ない決まったルートで向かわなければならないらしかった。



「さてと。今日は街に来るまでに疲れたから、歯を磨いでさっさと寝るか。イリーザ、お前はどうする?」

セルジュは訊ねる。



「私は宿の食事が食べたいかなあ」

セルジュは歯ブラシを眺めながら、ブラシ部分の白さに安堵感を覚えていた。

正直、赤い色以外の色彩を見なければ発狂しそうだ。

セルジュは街にあるものから、緑とか、空の灰色や地面の黒などを眺めながら正気を保とうとしていた。

人間は同じ色ばかりの場所にずっといると発狂すると聞く。



「いいぜ。せっかくだから、晩御飯食うか。食事の中に赤い色以外のものが混ざっているといいな」

「うん、うん!」

イリーザはうきうきとした表情をしていた。

「人の肉とか出してこないといいな。一応、そういう風に注文しないとなあ」

セルジュは小さく溜め息を付く。



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