熊野の道は、右を見ても左を見ても木に囲まれている。
凄い山道だ。
それでも道路は舗装されているので移動は楽だ。
「ちょ、ちょっと、お待ち下さい」
オオエが、快調に進む俺達を止めた。
カンリ一族全員が肩で息をしている。
「どうしました」
「そろそろ、休憩をしないともちません」
「そうですか」
俺も、上杉一行も全然疲れていない。
ホリス達ゴーレムは、美術館の掃除を頼み同行させていない。
その後は、あずさが来たときのサポートを頼んでおいた。
「え、え、え」
面倒なのでオオエをお姫様抱っこで抱えた。
「オオエ、パワースポットまでの道はわかるのだろ?」
「え、あ、はい」
「じゃあ、俺達は先に行く、お前達はゆっくり休憩をして追いかけてくれ」
ぜーぜー言っている、カンリ一族の者を切り離し置いて行く事にした。
どうせ行くのなら、少しでも速くみて見たい。
「はっ」
左近が代表して返事をしてくれた。
「じゃあ、みんな、行きましょう」
俺は上杉一行にそう言うと走り出した。
カンリ一族は人間離れした速さだったが、俺達だけならもっと速く走れる。
「凄いですね。ゆっくり走っていてくれたのですね」
オオエが驚いている。
「まあな」
「私達カンリ一族は、いつまでこのスピードについてこられるのかと、内心意地悪く思っていたのですよ」
「まあ、カンリ一族の方が生身としてなら上だ。俺以外はバイクに乗っているようなもんだからな」
「あっ、そこを曲がって下さい」
旧道なのだろうか、細い道がある。
そこを入ってからしばらく行くと、小さな集落があった。
「ここは?」
「ここが、カンリ一族の日本国民としての住居です」
「なるほど」
カンリ一族が家の窓から興味津々でこっちを見ている。
オオエは、自分の姿が恥ずかしいのか真っ赤になっている。
だが、降りる気は無いようだ。
「さ、さ、このまま、進んで下さい」
「す、進んでくださいはいいが、道が無いぞ」
途中まではあぜ道のようなものがあったが、山に入るところで消えている。
恐らく山の中に、黄金で出来た鳥居が有り、黄金で出来た眩しいほどの祠があるのだろう。楽しみだ。
道なき道を進んで、ずいぶんと歩いた。
かなり山の中に入ったはずだ。
すると開けた場所に出た。
何も無い草むらだ。
「ここだけ、木が無いなあ」
「はい、木が生えてきたら、全部抜いています。そうしないとすぐに大木に育ってしまいます」
「すると、この場所が」
「そうです。ここがへんな、ではなく、禁足地……熊野一、いいえ日本一のパワースポットです」
「ふむ、何の変哲も無い草むらだなあ。うわあああああああーーーーーーーー!!!!!!」
な、なんだ、なんなんだここは。
不用意に近づいてしまったが、俺のエネルギーが凄い勢いで吸い取られた。
パワースポットどころか、パワーダウンスポットだぞ。
「どうされました」
上杉達が心配そうに聞いて来た。
「う、うむ。お前達は何か感じるのか?」
「は、はぁ。あまり強いパワーは感じませんが、皮膚の表面がゾワゾワするくらいは感じます」
なるほど、これは、持っている者からは奪いとり、持っていない者には分け与えるという事なのか。
まるで昔の日本とは真逆だなあ。
貧乏人からは奪いとり、上級国民のようなお金持ちにはどんどんお金を分け与える……。
この場所は、俺にとっての最大の脅威だ。
やばい、長時間いれば弱体化してしまう。
誰にもバレないようにしなくては。
「オオエ、ここにいれば、誰でも力を得られるのか」
「はい」
その言葉を聞くと上杉もスケさんも、カクさんも響子さんもカノンちゃんもパワースポットの中央で座禅を組み、目を閉じている。
俺は、パワーを吸い取られない所までこっそり後ずさりした。
「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!
スケさんが俺の真似をして大声を出した。
「ど、どうした? スケさん」
「パ、パワーを感じます。うおおおーーー!!!」
これは、あれだ。
体育会系の悪ノリってやつだ。
暑苦しい。
「オオエ、今日中には五人とも強くなるのか?」
「えっ。あっ、そ、それは……」
うん、なんだか急に歯切れが悪くなったぞ。
「どうした。続けてくれ」
「十年くらい、ここにいれば少しパワーアップします。一日だと肩こりが取れる程度でしょうか」
「はあーーーっ」
上杉達が座禅をやめてしまった。
「あっ、でも肩こりがよくなったかも」
響子さんが喜んでいる。
「あの、皆さん。力の解放がしたいのですか?」
オオエがすまなそうに聞いて来た。
「まあ、出来るに越したことはないが、十年は長いなあ」
「もともとサヨコ程ではありませんが、私もカンリの巫女でした。結婚してパワーが半減しましたが、それでもよければ出来ます」
「それは、何か副作用のようなものはあるのか?」
「副作用?」
「そ、そうだ。異性に興味をなくすとか」
「それは、ありません。私が出来るのは、もともと持っている力を使える様にするだけですから」
「どうする皆?」
「お、お願いします」
全員が、間髪入れず頼んだ。
「はい」
オオエは笑顔で答えた。
「うむ、悪いな。では、オオエ頼む」
「あ、あの……」
「どうした。なにかあるのか、まさか準備に十年かかるとか」
「いえ、もう終っています」
「えーーーっ!!!!!」
「今度は、はやいなー」
俺が驚いていると、草むらに強い風が入り。
ざーっと、音を立てて揺れた。
山の木々もザワザワいいだす。
それはまるで、上杉一行のパワーアップを祝福している様だった。
さらに強い風がふくと、響子さんとカノンちゃんのパンツが丸出しになった。
それを見て、俺はパンツ丸出し女を二人以外にも最近見た気がする。
喉まで出かかっているが、誰か思い出せなかった。
歳だからしょうが無い。まあいいか。