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0244 罪と罰

「まずは、座ってくれ」


「はい」


オオエが俺の前に来て、美術館の床に直接座った。

四人の側近は、倒れている一族の者を介抱している。

一人も死者は出ていないはずだ。


「改めて、まずは説明させてくれ」


「はい」


「俺達木田家は、あんた達一族をどうこうしようという気は無い。そして熊野衆も同じ日本人だ。殺たり、支配をしたいなどと考えている訳ではない。ただ、清水が攻めているという事は、住民に対し酷いことをしていたのではないか」


「確かに熊野衆は、住民から食糧を奪いとっていました。大殿! その考えは今も同じなのですか?」


「うむ、同じだ。木田家が嫌なら、関わりを持たずに穏やかに暮らしてくれて構わん。上に立つ者が贅沢をせず、底辺の人々が幸せに暮らせたらそれで良い。それだけが俺の望みだ」


「私達は、見せしめの為に残忍に清水軍の兵士を殺しました。それに対してはどう考えていますか」


「ふむ、少人数の兵で大軍と戦うためとはいえ、やり過ぎだな。憤りを感じている。だから、罰は与えたいと考えている」


「申し訳ありません。どの様な罰でしょうか?」


オオエは姿勢を正すと床に額が付きそうなくらい頭を下げた。


「うむ、一族の者を五十人出してくれ、そして死ぬまで木田家に忠義を尽くし馬車馬の如く働いてくれ。それがカンリ一族に対する罰だ。あとの者はどこに住んでいるのか知らないが、今まで通り自由に暮らしてくれ。だが木田家に再び牙をむけば……」


俺は手を上げて、ホリスに指示を出した。

半分の三百三十人のゴーレム達が一斉に姿を現した。

残りの半分は外にいる。


「うわあっ」


カンリの者達が声を上げた。


「こ、これは!」


オオエも大きく目を見開いて驚いている。


「ふふふ、この者達は木田家の誇るアンドロイド軍団だ。強いぞ! 一人でお前達を皆殺しに出来るほどの強さがある」


「これ程の科学力が木田家にはあるのですか? まさか未来から日本を救いに来られたのですか?」


あの、アニメの影響か、タイムマシンの存在をうっすら信じているのだろう。


「ま、まあ、そんなところだ。未来とは違うがな」


ぼかしておいた。

なんとなくだが、魔法という方が信じてもらえない気がする。


「そうですか。あの、大殿。先程の罰の件ですが五十人は多すぎます。里が滅んでしまいます。私一人では駄目でしょうか。私には、一族の者五十人の価値があります」


オオエは顔を下に向けているので表情はわからないが、そう言った。


「ふむ、それは、何でもすると言うことか?」


「は、はい」


オオエは顔を上げた。その顔は何故か真っ赤になっている。


「では、それをここで証明して見せてもらおう」


「えっ! ここで、ですか? 私も二人の子持ちです。今更恥ずかしがる事も無いのでしょうが。ここで、ですか?」


「うむ。ここでお前達一族の秘密を、お前の知る限り全て話してもらおう」


俺が言ったら、オオエは服を脱ぎかけていたのをやめた。

はーーっ! 何で服を脱ぎ出したんだ。暑いのか?

しかも、オオエの奴、あんなにかわいい顔をしていて、子供が二人もいるのかよう。驚きだ。


「お、大殿は何が知りたいのですか」


「うん、お前達のその異常な身体能力だ。まずは、そこから教えてくれ」


「ふふふ、大殿がそれをいいますか。私達は大殿を見るまでは一族の者が、日本一身体能力が高いと信じていました」


「くくく」


俺の後ろで上杉達が笑いをこらえている。


「私達一族は、元々は神の一族を名乗っていました。それが恐れ多いと、神の裏、神の知りなどと、名乗っているうちに、『かんり』に落ち着いたと聞いています。熊野一のパワースポットを神話の時代からずっと守っている一族です」


なるほど、日本らしい歴史を感じる話しだ。

熊野三山もあるし、熊野には特殊な力があることも理解出来る。


「熊野一のパワースポットか興味深いな。いままでよく秘密が守られたものだ」


「それは、ご覧のとおり里で過ごせば個人差がありますが、特殊な力が付きます。そうですね、もっとわかりやすい物を、ご覧に入れましょう。左近見せてあげなさい」


「はっ」


そう言うと痩せた男が前に出た。

どことなく、サイコ伊藤に似ている。

その男は、ホリスに手の平を向けた。

すると、ホリスの体が宙に浮いた。


「うおっーー!!」


歓声があがった。

ホリスの体がくるんと逆さまになった時、美しいメイド服のスカートの中から、清楚な白い下着と、スタイル抜群の体の美しい足があらわになり、思いがけない物を見た男達の口から漏れ出たのだ。

ホリスはあわててスカートを押さえた。


それでもチラチラと白い物がのぞく。

押さえられた黒いメイド服のスカートの隙間からチラチラ見える白い物は、男心をくすぐるようだ。

皆、必死で見ている。


「これ、左近!」


見かねて、オオエがたしなめた。

左近は、少し楽しくなっていたのか、いつもより多めに逆さにしたようだ。


「申し訳ありません」


左近は、ホリスをゆっくり元に戻すと、優しく床に降ろした。


「そんな力があるのなら、さっきの戦いに使えば良かったのに」


俺が言うと左近は驚いた顔をした。


「使っていました。ですが、大殿にはまるで効きませんでした」


「そうか。なんか、すまんな」


「いいえ」


「わかっていただけましたか」


「うむ、こんな力は隠さないといけないな。よく隠していてくれた」


「時々、外に漏れていましたが、これまで静かに暮らしていました」


「ときどき、外に漏れていたの?」


「伊賀や甲賀に流出しました」


「なるほど、忍者のあの力は、漫画のフィクションだけと思っていましたが、まさか火とか、風とかも出せるのですか?」


「ご覧に入れましょうか」


「いや、それには及ばぬ。なるほどなー」


漏れ出ていたと言う事は、こいつらの方が凄いと言う事だ。

元祖なんだからな。


「ところで、二人の子供がいると聞いたが、その子達は里にいるのか?」


「その子? ……ああ、私の子供は、すでに三十歳位にはなっていますよ」


えーーーーっ!!

今日一の驚きだよ。

三十の子供がいるって、あんた何歳なの?

どう考えても、俺と同じ位のはずだ。いや、年上かも。

だが、俺は女性に年齢は聞かない。

見た目が、かわいければいいじゃないか。


「うん、わかっている。その大人の子供達の事を聞いている」


俺が質問すると、オオエはつらそうな顔になった。

何があったのだろうか。

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