「おっ、おやめ下さい!!」
響子さんが俺と子供達の間に割って入ってくれた。
さすがですね。
俺の殺気の込められた表情を見て、子供達をかばう為間に入ってくれたようだ。
まさか、俺が子供を本当に殺すとまでは思っていないよな。
「くっくっくふ。シュ、シュウ様、変顔はやめて下さい」
なぬっ!? 変顔とな!
俺は殺すという気迫を込めて、目を見開いてニタリと笑ったはずなのだが。
あっ、いけねー。鼻水が出た。
「ぎゃははははは」
全員がもう立っていられないようだ。
ヒザをついて、腹を抱えている。
響子さんが転げ回って笑っています。
「はー、やれやれだぜ!!」
俺の顔は人を怖がらせるようには出来ていないようだ。
自分では、ゲン一家の幹部くらいの迫力を出したつもりなんだがなあ。
「ゴホン、ゴホン」
全員が、呼吸困難でむせている。
「こんなに笑ったのは、生まれて初めてです」
響子さんとカノンちゃんの声が綺麗にそろった。
「和んでいただけましたか。ならばよかった。変顔をしたかいが有ったというものです」
もう、こう言うしかない。
「あの、許してもらえると思っていいのですか」
ノブが、笑顔をしまって、真面目な顔をして聞いた。
「許していなければ、笑わせたりしない。さあ腹が減っているだろう、食べるんだ」
それはそうと、俺は最初から許している。少しも殺そうなどと思っていない。
だが、人を殺そうとしたことが悪いことだと、表情で教えたつもりだけなのだ。
俺は、よく生きていてくれたと感動している。
まあ、俺を殺そうとしたことは、褒められる行動ではないが、小さな子の命を守るためだ、それも仕方が無いとすでに許しているのだ。
「……」
ノブは無言でうなずくと、食べ物に手を伸ばした。
ノブが食べ始めると、他の三人も食べ始めた。
「なあ、ノブ、お前達の他には生き残っている子供達はいないのか」
「皆、死んじまった。大人に殺されたり、飢死したり。冴子さんなら知っているかも」
「えっ!? あの、いかれた女が?」
「冴子さんはいかれてなどいません。僕達を助けてくれたのも冴子さんです。時々食糧もくれました」
そうか、冴子は建物を破壊している。
建物の中に潜んで居る子供達を時々発見しているのかもしれない。
そして、見つけた子供達の世話をしているのかもしれない。
案外悪い奴じゃないのか?
「だがなあ、パンツ丸出しで、ぎゃははは、言っていたらまともには見えない」
「ふふふ、前に『ズボンにした方がいいですよ』って言ったら、冴子さんは『私は女だ! 身だしなみは大事にしている。ズボンなんかはけるか! スカートしかはかないよ。スカートをはくから、見られてもいいようにかわいいパンツをはく。スカートをはいていて、見られても私は文句を言わない』って言っていました」
「ふむ、たいした女性だ。顔もかわいいしな」
さっきは、こっちが恥ずかしくて良く見なかったが、今度会ったらじっくり見るとしよう。あんまり関心は無いが距離があれば見てもいい。
なにしろ自分で見られても文句は言わないって、言ったんだから見放題だろうしな。
「だ、だよね。冴子さんはかわいいですよね」
ふむ、あの冴子ってのは、なかなか憎めない……いや、俺の中で好感度が爆上がりだ。
「か、かわいいなんて言うなよ。照れるじゃないか」
「うわーーーっ! でたーーっ!!」
俺の後ろに冴子がいる。
いつからいたんだ。
俺の後ろで赤い顔をしてくねくねしている。
「あの、冴子様はいつからそこにいたのですか」
「はぁーっ、『冴子様』なんて言うなよ。冴子でいいよ。『なあ、ノブ、お前達の他には生き残っている子供達はいないのか?』ってところからだよ」
そう言うと意味深な表情でニヤリと笑った。いかれた女とか悪口はしっかり聞かれていたようだ。
やべー。
「何故、こんな所に?」
「普通の男は、脇目も振らずに遊郭に行くのに、あんた達は違ったからねえ。上から見ていると目立つのさ。それに一匹をのぞいていい男だからねえ」
一匹っておれのことか?
そう言えば、俺の後ろに地上で立っているため、パンツが見えない。
あんまり見たくはないけど、見ておかないといけないのかなあ。
おれは、冴子のスカートをめくった。
かわいい赤いリボンのついた全体が薄いピンクのパンツだ。
「ぎゃーーーっ!! な、何をするんだー! このおとこはー!! こっ、こいつは一体何を考えているんだ? スカートをめくるとか、盗撮とかは最低な行為だろーー!!!!」
「えーーっ!!!」
俺は驚いて、助けを求めようとカクさんと響子さんとカノンちゃんを見た。
「最低です!!」
うわあー! カクさんと響子さんとカノンちゃんの三人が怒っている。
子供達の目まで冷たい。
わからん、わからんぞー!
基準がわからん。見ていいんじゃねえのかよーー!!
「大胆な男だねえ。そういう男も嫌いじゃないけどね。子供のことが聞きたいんだろ?」
頬が真っ赤になって、なにか恥じらいながら言ってくる。
「は、はい。教えてもらえるのなら」
「もう、ここにしかいないよ。もっと遠くなら知らないけどね。あんた、名前は?」
「十一番隊足軽のトダシュウです」
「豚顔のデブのシュウね。十一番隊の足軽か。すぐに死んじまいそうだね。さあ、私はノルマがある。もう行くよ。子供達はどこかへ連れて行くのかい。さみしくなるねえ」
冴子は、そのまま宙に浮いた。
宙に浮くと、やっぱりピンクのパンツが丸見えだ。
「あれは、いいの?」
俺は、並んでパンツを見上げている響子さんに、指をさして聞いて見た。
「いいに決まっているでしょ。本人がいいって言っているのですから」
少し切れ気味に言われた。
――うーん、全然基準がわからん。まあ、男は女のパンツなど見ない方がいいと言う事だ。
「響子さん、子供達が食事をしている隙に俺は、柴井班長の所へ行ってきます。水筒を置いていきますので、子供達に飲ませてやって下さい」
「はい。あの、一人で大丈夫ですか?」
「ええ、一人の方がはやく移動出来ます」
俺は、言い終わると、冴子に気付かれないように、大和のショッピングセンターへ向った。