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0190 説教のつもりが

「おっ、おやめ下さい!!」


響子さんが俺と子供達の間に割って入ってくれた。

さすがですね。

俺の殺気の込められた表情を見て、子供達をかばう為間に入ってくれたようだ。

まさか、俺が子供を本当に殺すとまでは思っていないよな。


「くっくっくふ。シュ、シュウ様、変顔はやめて下さい」


なぬっ!? 変顔とな!

俺は殺すという気迫を込めて、目を見開いてニタリと笑ったはずなのだが。

あっ、いけねー。鼻水が出た。


「ぎゃははははは」


全員がもう立っていられないようだ。

ヒザをついて、腹を抱えている。

響子さんが転げ回って笑っています。


「はー、やれやれだぜ!!」


俺の顔は人を怖がらせるようには出来ていないようだ。

自分では、ゲン一家の幹部くらいの迫力を出したつもりなんだがなあ。


「ゴホン、ゴホン」


全員が、呼吸困難でむせている。


「こんなに笑ったのは、生まれて初めてです」


響子さんとカノンちゃんの声が綺麗にそろった。


「和んでいただけましたか。ならばよかった。変顔をしたかいが有ったというものです」


もう、こう言うしかない。


「あの、許してもらえると思っていいのですか」


ノブが、笑顔をしまって、真面目な顔をして聞いた。


「許していなければ、笑わせたりしない。さあ腹が減っているだろう、食べるんだ」


それはそうと、俺は最初から許している。少しも殺そうなどと思っていない。

だが、人を殺そうとしたことが悪いことだと、表情で教えたつもりだけなのだ。

俺は、よく生きていてくれたと感動している。

まあ、俺を殺そうとしたことは、褒められる行動ではないが、小さな子の命を守るためだ、それも仕方が無いとすでに許しているのだ。


「……」


ノブは無言でうなずくと、食べ物に手を伸ばした。

ノブが食べ始めると、他の三人も食べ始めた。


「なあ、ノブ、お前達の他には生き残っている子供達はいないのか」


「皆、死んじまった。大人に殺されたり、飢死したり。冴子さんなら知っているかも」


「えっ!? あの、いかれた女が?」


「冴子さんはいかれてなどいません。僕達を助けてくれたのも冴子さんです。時々食糧もくれました」


そうか、冴子は建物を破壊している。

建物の中に潜んで居る子供達を時々発見しているのかもしれない。

そして、見つけた子供達の世話をしているのかもしれない。

案外悪い奴じゃないのか?


「だがなあ、パンツ丸出しで、ぎゃははは、言っていたらまともには見えない」


「ふふふ、前に『ズボンにした方がいいですよ』って言ったら、冴子さんは『私は女だ! 身だしなみは大事にしている。ズボンなんかはけるか! スカートしかはかないよ。スカートをはくから、見られてもいいようにかわいいパンツをはく。スカートをはいていて、見られても私は文句を言わない』って言っていました」


「ふむ、たいした女性だ。顔もかわいいしな」


さっきは、こっちが恥ずかしくて良く見なかったが、今度会ったらじっくり見るとしよう。あんまり関心は無いが距離があれば見てもいい。

なにしろ自分で見られても文句は言わないって、言ったんだから見放題だろうしな。


「だ、だよね。冴子さんはかわいいですよね」


ふむ、あの冴子ってのは、なかなか憎めない……いや、俺の中で好感度が爆上がりだ。


「か、かわいいなんて言うなよ。照れるじゃないか」


「うわーーーっ! でたーーっ!!」


俺の後ろに冴子がいる。

いつからいたんだ。

俺の後ろで赤い顔をしてくねくねしている。


「あの、冴子様はいつからそこにいたのですか」


「はぁーっ、『冴子様』なんて言うなよ。冴子でいいよ。『なあ、ノブ、お前達の他には生き残っている子供達はいないのか?』ってところからだよ」


そう言うと意味深な表情でニヤリと笑った。いかれた女とか悪口はしっかり聞かれていたようだ。

やべー。


「何故、こんな所に?」


「普通の男は、脇目も振らずに遊郭に行くのに、あんた達は違ったからねえ。上から見ていると目立つのさ。それに一匹をのぞいていい男だからねえ」


一匹っておれのことか?

そう言えば、俺の後ろに地上で立っているため、パンツが見えない。

あんまり見たくはないけど、見ておかないといけないのかなあ。

おれは、冴子のスカートをめくった。

かわいい赤いリボンのついた全体が薄いピンクのパンツだ。


「ぎゃーーーっ!! な、何をするんだー! このおとこはー!! こっ、こいつは一体何を考えているんだ? スカートをめくるとか、盗撮とかは最低な行為だろーー!!!!」


「えーーっ!!!」


俺は驚いて、助けを求めようとカクさんと響子さんとカノンちゃんを見た。


「最低です!!」


うわあー! カクさんと響子さんとカノンちゃんの三人が怒っている。

子供達の目まで冷たい。

わからん、わからんぞー!

基準がわからん。見ていいんじゃねえのかよーー!!


「大胆な男だねえ。そういう男も嫌いじゃないけどね。子供のことが聞きたいんだろ?」


頬が真っ赤になって、なにか恥じらいながら言ってくる。


「は、はい。教えてもらえるのなら」


「もう、ここにしかいないよ。もっと遠くなら知らないけどね。あんた、名前は?」


「十一番隊足軽のトダシュウです」


「豚顔のデブのシュウね。十一番隊の足軽か。すぐに死んじまいそうだね。さあ、私はノルマがある。もう行くよ。子供達はどこかへ連れて行くのかい。さみしくなるねえ」


冴子は、そのまま宙に浮いた。

宙に浮くと、やっぱりピンクのパンツが丸見えだ。


「あれは、いいの?」


俺は、並んでパンツを見上げている響子さんに、指をさして聞いて見た。


「いいに決まっているでしょ。本人がいいって言っているのですから」


少し切れ気味に言われた。


――うーん、全然基準がわからん。まあ、男は女のパンツなど見ない方がいいと言う事だ。


「響子さん、子供達が食事をしている隙に俺は、柴井班長の所へ行ってきます。水筒を置いていきますので、子供達に飲ませてやって下さい」


「はい。あの、一人で大丈夫ですか?」


「ええ、一人の方がはやく移動出来ます」


俺は、言い終わると、冴子に気付かれないように、大和のショッピングセンターへ向った。

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