「かしら、飯が済んだら、子供達を解放軍の所へ運んでやりたい。いいだろうか」
「シュウさん、俺達も合流できないだろうか? やっぱり山賊をやったものは駄目だろうか?」
「そんなことはないさ。大和のために働くのなら歓迎されるだろう」
「少し、時間をもらえないか。皆に話しを聞いて見る」
「ああ、そうしてくれ。そうだ、かしら、別に戦うのが嫌なら、農家になるという選択肢もある。田んぼや、畑を放置しては、来年以降の食糧不足は解消出来ねー。そうだ、爺さんも農業をやらねえか?」
「!?」
爺さんは急に話を振られて、驚いた顔をするとすごい勢いで首を振った。
農業は絶対やりたくないようだ。
ひょっとすると、農家の出身なのかもしれない。
農業の大変さを知っているとしか思えない反応だった。
「かしら、病気の人がいると聞いたが、一度見せてくれ、俺が何とか出来るかもしれない」
「シュウさん、あんたは治療も出来るのか」
「言っているだろう、出来るかもしれないと。出来るかどうかは見て見ないとわからない。期待しないでくれ」
「わかった、おい、だれか!」
かしらが案内の人間を呼んでくれた。
だが、俺の服を下から引っ張る者がいる。
ライだった。
「ライ、案内してくれるのか?」
ライは俺のヒザの上でうなずいた。
「かしら、ライが案内してくれる。他の人は不要だ」
「そうか。ライ頼んだぞ」
ライはこくりと、うなずいた。
ライの案内で集落の病人のところへ行くと、全員俺の治癒で治す事が出来た。
といっても、栄養失調で動けなかっただけで、本当の病人はいなかった。
集落の相談が、なかなかまとまらないので、俺は移動用にUFOを作り準備を進めた。
「シュウ様、何ですかこれは」
「ああ、これは大型輸送用UFOだ」
「さっきの治療といい、UFOといい、すごすぎです」
響子さんがいつもの様に言ってくれた。カクさんもカノンちゃんも激しくうなずいている。
そんなに、言われるほどたいしたことではないので、そこまで言われると、もはやはずかしい。
UFOには、いつもの冷暖房完備、台所、冷蔵庫完備の簡易の避難所にもなるUFOだ。
せっかく作ったので、大和の柴井班長の所に一機置いて行こうと考えている。
「シュウさん待たせた、全員連れて行って欲しい」
どうやら全員一致で、合流する事に決定したようだ。
「そうか、なら、行こうか。爺さんは少しここで待っていてくれ」
「なっ、わしも行くぞ」
「だが、行ったら帰って来られないぞいいのか」
柴井班長の所からは、自力で帰ってくることになる。
俺達はいいが、爺さんだけは生身なので、ついて来ることはできないだろう。
「な、何じゃと。本当に戻ってくるのか」
どうやら留守番する気になってくれたようだ。
「戻ってくる。まだ大阪を見ていないからな」
「わかった。ここで待っている」
「うむ、なるべく早く帰ってくる。じゃあな」
ここで、爺さんだけをおいて、UFOであのショッピングセンターを目指し飛びたった。
UFOはステルスモードで飛んだため、恐らく新政府軍には発見されることは無いだろう。
「この輸送船は、かしらと柴井班長、ライにのみ操縦できるようにしておこう」
「えっ!?」
ライが驚いている。
「よし、ライ風呂に入ろう。この船には風呂がある」
「えーーーーっ」
カクさんと響子さんが驚いている。
カクさんが、内緒で耳元に小声で教えてくれた。
「あの、ライちゃんは女の子ですよ」
「えっ」
「あの、シュウ様。私、本当の名前は未来です。女とばれると連れて行かれるから、男のフリをするように言われました。だまして、ごめんなさい」
「いいさ、俺も本当はシュウと言う名前ではない。トウと言う名前だ」
「とうさん」
「そうだ」
「とうさん……」
「響子さん、カノンちゃん。ライの服を用意する。お風呂に入れてやってくれないか」
ライは、驚いた顔をした。
この二人も髪を短くして男のフリをしていたから、驚いたのだろう。
「うふふ、私達もお風呂は久しぶり、楽しんじゃいましょう」
響子さんとカノンちゃんに連行されて、お風呂に行った。
風呂場から楽しそうな声が聞こえる。
一応集落の人は、下の格納庫に入ってもらっている。
上部の操縦席には、かしらとライと子供達と俺達だけだ。
「ライ、お前にこれをやる。アンナメーダーマンジュニアだ。これで子供達と、何より自分を守って欲しい」
俺は、アンナメーダーマンアクアと同じデザインで、子供用の物を出した。
それを、風呂上がりのライに渡した。
「アンナメーダーマンジェニファー。かっこいい」
んっ、俺の発音って悪いのか。
ジェニファーじゃなくて、ジュニアだぞ。
ま、まあいいか。
タオル一枚の響子さんとカノンちゃんが出て来て、他の子供達を連れ去った。
「だ、大胆だなあ。かしらもいるのに」
「きゃーー、忘れていました」
忘れていたらしい。
ショッピングセンターの駐車場に降りると、柴井班長とエマ達が驚いた顔をして飛び出してきた。
「やあ、柴井班長」
「シュウさんでしたか。宇宙人が来たのかと思いましたよ。いつも驚かされる」
「状況はどうですか」
「はい、新政府軍は静かです。アンナメーダーマンがよほど恐いのか、亀のように閉じこもって出て来ません。おかげで、落着いています」
「新しい仲間を連れてきました。解放軍に加えて下さい」
「なんですって、俺達でもまだ、あまり進んでいないのに、もう連れてきてくれたのですか!?」
「た、たまたまです」
「かしら!!」
格納庫から集落の人達が降りてきた。
「おおーーっ」
「全員、大和の人です」
「ありがとうございます」
柴井班長が、配下に集落の人を案内させるように指示してくれた。
「そうだ、班長、かしら、エマ来てくれ」
二人に、カクさんと同じデザインのアンナメーダーマンアクアのスーツをだした。
エマにはライと同じデザインのジュニアだ。
「これは、ねえ、ジェニファーっていうのよ」
ライは、吊り目で勝ち気な感じの美少女になっている。
話し方も少女に戻っている。
「アンナメーダーマンジェニファー! とても素敵!! 私はエマよろしくね」
「私はライ、よろしくお願いします」
「エマの方が少しお姉さんだな」
「エマ姉さん……」
ライが微笑んで、頬を赤らめている。
「とうさん、ありがとう」
ライは、目をキラキラさせて、御礼を言ってくれた。
「とうさん……?」
エマが、不思議そうに俺を見つめてきた。
「俺の名前はトウなんだ。エマもトウと呼んでくれるか」
エマの表情はパッと明るくなった。
「とうさん……」
そう言ってエマは腕に飛びついて来た。
ふわふわの少し茶色の髪が揺れる。
聖女の様な優しげな顔は、どこか古賀さんを思い描かせる。
その聖女の様な優しげな顔から、美しい笑顔がこぼれた。
「なっ!?」
カクさんと、響子さんとカノンちゃんが、飛び上がりそうなくらい驚いている。
そんなに驚かなくても。
「エマ姉! 私のアンナメーダーマンジェニファーはジェニファーじゃなくて、ライファにするわ」
そう言って、俺の空いている手にライが飛びついてきた。
こうして、新しいアンナメーダーマン戦士、ジェニファーとライファが誕生した。
ジュ、ジュニアなんだがなあ。まあいいか。