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0187 合流

「かしら、飯が済んだら、子供達を解放軍の所へ運んでやりたい。いいだろうか」


「シュウさん、俺達も合流できないだろうか? やっぱり山賊をやったものは駄目だろうか?」


「そんなことはないさ。大和のために働くのなら歓迎されるだろう」


「少し、時間をもらえないか。皆に話しを聞いて見る」


「ああ、そうしてくれ。そうだ、かしら、別に戦うのが嫌なら、農家になるという選択肢もある。田んぼや、畑を放置しては、来年以降の食糧不足は解消出来ねー。そうだ、爺さんも農業をやらねえか?」


「!?」


爺さんは急に話を振られて、驚いた顔をするとすごい勢いで首を振った。

農業は絶対やりたくないようだ。

ひょっとすると、農家の出身なのかもしれない。

農業の大変さを知っているとしか思えない反応だった。


「かしら、病気の人がいると聞いたが、一度見せてくれ、俺が何とか出来るかもしれない」


「シュウさん、あんたは治療も出来るのか」


「言っているだろう、出来るかもしれないと。出来るかどうかは見て見ないとわからない。期待しないでくれ」


「わかった、おい、だれか!」


かしらが案内の人間を呼んでくれた。

だが、俺の服を下から引っ張る者がいる。

ライだった。


「ライ、案内してくれるのか?」


ライは俺のヒザの上でうなずいた。


「かしら、ライが案内してくれる。他の人は不要だ」


「そうか。ライ頼んだぞ」


ライはこくりと、うなずいた。




ライの案内で集落の病人のところへ行くと、全員俺の治癒で治す事が出来た。

といっても、栄養失調で動けなかっただけで、本当の病人はいなかった。

集落の相談が、なかなかまとまらないので、俺は移動用にUFOを作り準備を進めた。


「シュウ様、何ですかこれは」


「ああ、これは大型輸送用UFOだ」


「さっきの治療といい、UFOといい、すごすぎです」


響子さんがいつもの様に言ってくれた。カクさんもカノンちゃんも激しくうなずいている。

そんなに、言われるほどたいしたことではないので、そこまで言われると、もはやはずかしい。

UFOには、いつもの冷暖房完備、台所、冷蔵庫完備の簡易の避難所にもなるUFOだ。

せっかく作ったので、大和の柴井班長の所に一機置いて行こうと考えている。


「シュウさん待たせた、全員連れて行って欲しい」


どうやら全員一致で、合流する事に決定したようだ。


「そうか、なら、行こうか。爺さんは少しここで待っていてくれ」


「なっ、わしも行くぞ」


「だが、行ったら帰って来られないぞいいのか」


柴井班長の所からは、自力で帰ってくることになる。

俺達はいいが、爺さんだけは生身なので、ついて来ることはできないだろう。


「な、何じゃと。本当に戻ってくるのか」


どうやら留守番する気になってくれたようだ。


「戻ってくる。まだ大阪を見ていないからな」


「わかった。ここで待っている」


「うむ、なるべく早く帰ってくる。じゃあな」


ここで、爺さんだけをおいて、UFOであのショッピングセンターを目指し飛びたった。

UFOはステルスモードで飛んだため、恐らく新政府軍には発見されることは無いだろう。


「この輸送船は、かしらと柴井班長、ライにのみ操縦できるようにしておこう」


「えっ!?」


ライが驚いている。


「よし、ライ風呂に入ろう。この船には風呂がある」


「えーーーーっ」


カクさんと響子さんが驚いている。

カクさんが、内緒で耳元に小声で教えてくれた。


「あの、ライちゃんは女の子ですよ」


「えっ」


「あの、シュウ様。私、本当の名前は未来です。女とばれると連れて行かれるから、男のフリをするように言われました。だまして、ごめんなさい」


「いいさ、俺も本当はシュウと言う名前ではない。トウと言う名前だ」


「とうさん」


「そうだ」


「とうさん……」


「響子さん、カノンちゃん。ライの服を用意する。お風呂に入れてやってくれないか」


ライは、驚いた顔をした。

この二人も髪を短くして男のフリをしていたから、驚いたのだろう。


「うふふ、私達もお風呂は久しぶり、楽しんじゃいましょう」


響子さんとカノンちゃんに連行されて、お風呂に行った。

風呂場から楽しそうな声が聞こえる。

一応集落の人は、下の格納庫に入ってもらっている。

上部の操縦席には、かしらとライと子供達と俺達だけだ。


「ライ、お前にこれをやる。アンナメーダーマンジュニアだ。これで子供達と、何より自分を守って欲しい」


俺は、アンナメーダーマンアクアと同じデザインで、子供用の物を出した。

それを、風呂上がりのライに渡した。


「アンナメーダーマンジェニファー。かっこいい」


んっ、俺の発音って悪いのか。

ジェニファーじゃなくて、ジュニアだぞ。

ま、まあいいか。

タオル一枚の響子さんとカノンちゃんが出て来て、他の子供達を連れ去った。


「だ、大胆だなあ。かしらもいるのに」


「きゃーー、忘れていました」


忘れていたらしい。




ショッピングセンターの駐車場に降りると、柴井班長とエマ達が驚いた顔をして飛び出してきた。


「やあ、柴井班長」


「シュウさんでしたか。宇宙人が来たのかと思いましたよ。いつも驚かされる」


「状況はどうですか」


「はい、新政府軍は静かです。アンナメーダーマンがよほど恐いのか、亀のように閉じこもって出て来ません。おかげで、落着いています」


「新しい仲間を連れてきました。解放軍に加えて下さい」


「なんですって、俺達でもまだ、あまり進んでいないのに、もう連れてきてくれたのですか!?」


「た、たまたまです」


「かしら!!」


格納庫から集落の人達が降りてきた。


「おおーーっ」


「全員、大和の人です」


「ありがとうございます」


柴井班長が、配下に集落の人を案内させるように指示してくれた。


「そうだ、班長、かしら、エマ来てくれ」


二人に、カクさんと同じデザインのアンナメーダーマンアクアのスーツをだした。

エマにはライと同じデザインのジュニアだ。


「これは、ねえ、ジェニファーっていうのよ」


ライは、吊り目で勝ち気な感じの美少女になっている。

話し方も少女に戻っている。


「アンナメーダーマンジェニファー! とても素敵!! 私はエマよろしくね」


「私はライ、よろしくお願いします」


「エマの方が少しお姉さんだな」


「エマ姉さん……」


ライが微笑んで、頬を赤らめている。


「とうさん、ありがとう」


ライは、目をキラキラさせて、御礼を言ってくれた。


「とうさん……?」


エマが、不思議そうに俺を見つめてきた。


「俺の名前はトウなんだ。エマもトウと呼んでくれるか」


エマの表情はパッと明るくなった。


「とうさん……」


そう言ってエマは腕に飛びついて来た。

ふわふわの少し茶色の髪が揺れる。

聖女の様な優しげな顔は、どこか古賀さんを思い描かせる。

その聖女の様な優しげな顔から、美しい笑顔がこぼれた。


「なっ!?」


カクさんと、響子さんとカノンちゃんが、飛び上がりそうなくらい驚いている。

そんなに驚かなくても。


「エマ姉! 私のアンナメーダーマンジェニファーはジェニファーじゃなくて、ライファにするわ」


そう言って、俺の空いている手にライが飛びついてきた。

こうして、新しいアンナメーダーマン戦士、ジェニファーとライファが誕生した。

ジュ、ジュニアなんだがなあ。まあいいか。

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