おおよそ準備が終ると、あずさがピョコンと席につく。
そして、食事をモリモリ食べ出す。
ゲンも同時に食べ出している。
これが、木田家の食事が始まる合図なのである。
「おいしーー! 来て良かったー!!」
最初に声を出したのは愛美ちゃんだった。
「なあ兄弟話してもいいか?」
ゲンが、俺に話しかけてきた。
「ああ」
「偵察隊を増やして欲しい」
「どの位必要だ?」
「百は、ほしい」
「本当の数を言ってくれ」
「うむ、三百はほしい」
「じゃあ、千体作ろう。所で何があったんだ」
「うむ、調査をして見てわかったのだが、町から離れた田舎の集落には人が残っている。だが、それも永くはもた無いだろう。塩や調味料など足りない物が多い、補給が出来ていないんだ。こういう人を救う為には、偵察隊でこまめに探していくしか無い」
「なるほど、他にいる物はないか」
「あとは大量輸送の出来る物が欲しい。物資を発見しても運ぶ手段が無い」
「そうか、それも何とかしよう」
「きゃーーーー!!」
悲鳴が聞こえた。
俺たちは、悲鳴の先を見た。
「な、何だよ。少しスカートをめくっただけじゃねえか。みじけースカートをはいているんだから、ちょっとぐれーいいじゃねえか」
北条が、給仕のお姉さんのスカートをめくったようだ。
確かに短いスカートをはいている。
少しくらいなら、いい気がする。
「駄目に決まっているでしょうー。あんたに見せたくてやってんじゃねーんだよこっちわ」
お姉様方が北条を囲んで怒っている。
えーーっ、誰かに見せたくてやってたのー。
まあ、俺はリアルな女の人の下着には興味が無いからどうでもいいけど。
あっ、そうだ。名案が浮かんだ。
「シュラ、こっちへ」
シュラが呼ばれて嬉しそうにやって来た。
俺は、シュラのメイド服のロングスカートをガバッと上に持ち上げた。
「北条、見るのならこっちにしろ、滅茶苦茶美しいだろ。芸術品だ。人間の臭くてきたねーパンツとは大違いだー」
「な、なんですってー!!!!!!」
女性全員からすげー勢いでにらまれた。
シュラはペタンとへたり込んで、両手で顔をおおっている。
あずさが駆け寄って頭を撫でている。
ま、まさか泣いているのか?
こここ、こっ、これは、俺がとんでも無い下手をこいたという事なのかー。
だめだ、どこがいけなかったのか全くわからねえ。
みなさん、どんなセクシーな女の人がいても、スカートはめくってはいけません。のぞきも駄目みたいです。
ましてや、胸をもむなどもってのほかです。
矛先が俺に向いて、北条がほっとしている。
柳川がうつむいて、震えている。
爆笑しているようだ。
俺は下を向いて反省しているふりをした。
そんなもん、これのどこが悪いのか分かるようなら、彼女が出来ているでしょうよ。
わからんから、もてねーんだっちゅーの。
まあ、北条がかばえたのならそれでいいや。
しばらく、場が凍り付き、静かになったままだった。
「あ、そうだ、みんな聞いてくれ」
俺は唐突に思い出した事を話そうと思った。
「……」
全員が俺に注目してくれた。
会場がなぜか静かだったので丁度良かった。
「じつは、駿府で思ったのだけど、木田でも通貨を作ろうと思う。やはり買い物は楽しい。偽造できない通貨だ見てくれ」
俺はザラザラと通貨を畳の上に出した。
「一万円がアダマンタイト硬貨、五千円がオリハルコン硬貨、千円がミスリル硬貨だ。五百円は鉄とアダマンタイトの合金、百円はオリハルコンと鉄の合金、十円はミスリルと鉄の合金だ」
「おおおおーー」
手に取った者から歓声が上がった。
「これを、木田家と北条家、今川家で流通したいと思う」
「使うのがもったいないくらい」
あずさが目をキラキラさせている。
当然、俺がデザインしたのだから、硬貨それぞれに美しい装飾をしている。
反対意見は無いようだ。
食事会はまだまだ続きそうなので、お酒が出たタイミングで俺は中庭に出た。
外はうっすらオレンジに染まっていた。
千体の機動偵察陸鎧を作り、大型輸送用UFOを六機作った。
輸送用のUFOは、底面を四つに仕切り、物資が大量につめるようにした。
物資を積まずに、輸送空母としても使える様になっている。
これを木田に四機、今川に一機、北条に一機置いておく事にする。
俺が、中庭で作業をしていると、あずさが知らぬ間に来ていた。
ここまでは、すでに作った事がある物なので作業は速い。
ここからは、手探りなので時間がかかる。
実は、俺は列車を作ろうとしているのだ。
木田から東京、東京から静岡まで鉄道を動かそうと考えている。
こうする事によって、一般の人の商品の運搬が出来るようになり、人の行き来が可能になる。
俺は、まずミニチュアを作成する事にした。
それは、もう鉄道模型の様に見える。
「あの、とうさんは何をしているのですか」
ヒマリちゃんの声がする。
「うふふ、変態研究です」
おーーい。あずさー。言い方ー。
あたりは真っ暗になっている。
夜も更けているはずだ。
まわりを見ると、大勢が俺の様子を見ている。
「皆、もう夜も遅い、眠ってくれ、俺は眠らなくても大丈夫だから。それに見られていると集中出来ないから」
俺が、お願いすると大勢の人が、木田城の中に入ってくれた。
列車は、機関車をミスリルのゴーレム製にして、客車と貨物車はステンレス製にした。だが車輪だけは鉄製で作る。
翌朝、北条と今川、はるさんは帰っていった。
俺は、列車の完成まで不眠不休で木田城の中庭で変態研究を続けた。