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0080 大殿と謁見

木田産業の中庭に着陸すると、新社屋に案内された。

この木田産業の新社屋こそ、人呼んで木田城である。

別に天守閣のようにはなっていない。

ただの長方形の平凡な建物だ。

ただ、その面積は広く、五階建てである。


俺たちは、木田城の三階に案内された。

元々は事務所だった三階の室内は、ぶち抜いて全面畳敷きになっている。

そして、正面は畳四枚分ほど高くなっている。

ここに殿様が座るって訳か。


「はぁーーっ……」


俺は大きなため息をついた。

だって、あそこに俺が座るって事だろ。

やれやれだぜ。


「ふふふ、この数日、必死で集めて敷き詰めたようですよ」


柳川が自慢そうだ。


段の前には、ゲン一家の最高幹部が左側に整列し、右側に愛美ちゃん、坂本さんの順で俺と仲の良い者達が数十名集められている。

俺の姿を見つけると、全員が平伏した。


これは、俺が正面の段上にのぼって「おもてを上げよ」とか言わないといけない奴だ。

時代劇の見過ぎだろう。

俺は言わないからな。

俺はとっさにヒマリちゃんと手をつないだ。


俺たちは、誰もいない段上に正対して横に並んでいる。

雰囲気に飲まれて、今川の殿と北条が座り平伏した

北条は、あれだけ木田家に文句を言っていたくせに、すんなり誰にも言われていないのに平伏している。

それを見ると、はるさんも平伏した。


「あの……」


ヒマリちゃんが俺を見つめる。

それは、手をつないでいると座れませんと言っているようだ。

だが、俺はそれを無視して、ヒマリちゃんの手を引っ張り、段へ向って歩き出した。


「クザン、シュラ」


俺が名前を呼ぶと、二人は全て理解したのか、後ろをついてくる。


「あ、あの……」


俺がどんどん歩くので、不安になったのかヒマリちゃんが、泣きそうになっている。


「大丈夫だよ。心配いらない」


俺がそう言うと、あずさが駆け寄って、ヒマリちゃんの空いている方の手をつないで笑顔を見せる。

段に足をかけて、段上にのぼると俺は段の中央に立った。

横にはヒマリちゃん、あずさがその横、後ろにクザンとシュラが立っている。


「みんなー、見てくれー!!」


俺の言葉に平伏している者達が、顔を上げる。


「今日からこの子は正式に俺の娘だ。あずさ共々かわいがってやってくれ。名前はヒマリだ。駿河一の美少女で今川家の末娘だ。そして、そこに座っているのが、今川家の当主と、北条の当主、そして木田家御用商人、大田大商店のおかみ、はるさんだ」


「!?」


今川の殿と北条、はるさんが驚いた顔をしている。


「すまねーなー。実は俺が木田家の当主。木田とうだ」


「なーーーーっ!!!!!」


「お、俺は、アンナメーダーマンに……」


勝手に口を開いたのが気に障ったのか、ゲンが北条をにらみ付けた。

それが、恐ろしかったのか、北条がびびって小さくなった。


「アンナメーダーーーーーー!!!」


俺は北条の為変身する事にした。


「…………」


一同は何事かと、固唾を飲んで俺に注目した。


「あっ、しまった。かけ声を間違えた」


「なーーっ」


一同がピコンと、ずっこけた。

すげえ、そろっている。

まるであのコントのようだ。

俺はコホンと咳払いをして、仕切り直した。


「オイサスト シュヴァイン!!」


クザンの体が割れて、俺を包む。


「おおおおおっ!!」


集まっている者達から、どよめきが起った。


「北条、わるいなー。アンナメーダーマンも俺なんだわ」


「か、かっこいい!!」


あずさと愛美ちゃんが声を出した。


「はっははぁーー」


北条が、額を畳に付けて平伏した。


「みんなー、なんかオタクっぽくって、なかなか変身できなかったが、これがアンナメーダーマンの真の姿だ。これより、アンナメーダーマンの正体はここだけの秘密とする。誰にもバレないように頼むぞ」


「はっははぁーっ!!」


全員が返事をする。


「とうさん、滅茶苦茶かっこいい!!」


あずさが大喜びだ。


「そうかー」


「うん」


あずさの可愛い笑顔から、視線を北条に移した。


「北条、あんたには、小田原を任せたい。やってくれるか?」


「大殿、質問では無く、やれと御命じ下さい。喜んでやりますとも」


調子が良いなーこいつ。

だが、悪い気はしない。


「今川には、駿河を任せたい。まずは、農業を奨励して、食糧の自給を目指してくれ。それと遠江の調査も頼みたい」


「はっ!」


「堅苦しいのは、ここまでだ。後は飯でも食いながら、話そうや」


ゲンが言うが速いか、料理が運ばれてくる。


「すげーーっ、べっぴんさんばっかりだーー。なー今川さんよー」


北条が喜んでいる。


「そ、そうですね。美人は殺されやすいですから、こんなにそろっているのはすごい事です。やはり大殿の、奥方様だからですか?」


「そうでーーす!!!」


給仕をしている美女達が、そろって返事をした。

なんでそんなとこだけ、そろうねん。


「ちがうぞーー」


俺は全力で否定した。

だが、今川がなにげに恐ろしい事を言っている。

こんな崩壊した世界では、美女は男達に力ずくで好きにされ殺されてしまうようだ。

ゲンの力が無ければ、こんなに美女が残る事は無かったのだろう。


しかし、給仕のお姉様方のスカートが短い。


「どうぞ」


俺の料理を運び、俺の前に配膳する時、スカートの中が丸見えになる。

見たくなくても、目に飛び込んでくる。

この人達のは、水着ではない、正真正銘下着だ。

そして、美女は俺の表情を見て、その後股間を見てくる。


ま、まさかこの人達は、かけでもしているのか。

立たせた人が総取りとか言って、お菓子でもかけているのでは無いのだろうか。


「もう、とうさんのお世話は私がします」


あずさが、美女達の給仕を断った。

そして、配膳をするのだが、さっきまでの美女の真似をしている。

かわいい、スカートの中身が出ているが、それ水着ですから。

それにお前は娘だからーー。

見たくも何ともねー。


「えっ!?」


俺は目を疑った。

ヒマリちゃんまで、あずさのメイド服を着て、嬉しそうに真似をしている。


はーーっ、やれやれだぜ!

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