木田産業の中庭に着陸すると、新社屋に案内された。
この木田産業の新社屋こそ、人呼んで木田城である。
別に天守閣のようにはなっていない。
ただの長方形の平凡な建物だ。
ただ、その面積は広く、五階建てである。
俺たちは、木田城の三階に案内された。
元々は事務所だった三階の室内は、ぶち抜いて全面畳敷きになっている。
そして、正面は畳四枚分ほど高くなっている。
ここに殿様が座るって訳か。
「はぁーーっ……」
俺は大きなため息をついた。
だって、あそこに俺が座るって事だろ。
やれやれだぜ。
「ふふふ、この数日、必死で集めて敷き詰めたようですよ」
柳川が自慢そうだ。
段の前には、ゲン一家の最高幹部が左側に整列し、右側に愛美ちゃん、坂本さんの順で俺と仲の良い者達が数十名集められている。
俺の姿を見つけると、全員が平伏した。
これは、俺が正面の段上にのぼって「おもてを上げよ」とか言わないといけない奴だ。
時代劇の見過ぎだろう。
俺は言わないからな。
俺はとっさにヒマリちゃんと手をつないだ。
俺たちは、誰もいない段上に正対して横に並んでいる。
雰囲気に飲まれて、今川の殿と北条が座り平伏した
北条は、あれだけ木田家に文句を言っていたくせに、すんなり誰にも言われていないのに平伏している。
それを見ると、はるさんも平伏した。
「あの……」
ヒマリちゃんが俺を見つめる。
それは、手をつないでいると座れませんと言っているようだ。
だが、俺はそれを無視して、ヒマリちゃんの手を引っ張り、段へ向って歩き出した。
「クザン、シュラ」
俺が名前を呼ぶと、二人は全て理解したのか、後ろをついてくる。
「あ、あの……」
俺がどんどん歩くので、不安になったのかヒマリちゃんが、泣きそうになっている。
「大丈夫だよ。心配いらない」
俺がそう言うと、あずさが駆け寄って、ヒマリちゃんの空いている方の手をつないで笑顔を見せる。
段に足をかけて、段上にのぼると俺は段の中央に立った。
横にはヒマリちゃん、あずさがその横、後ろにクザンとシュラが立っている。
「みんなー、見てくれー!!」
俺の言葉に平伏している者達が、顔を上げる。
「今日からこの子は正式に俺の娘だ。あずさ共々かわいがってやってくれ。名前はヒマリだ。駿河一の美少女で今川家の末娘だ。そして、そこに座っているのが、今川家の当主と、北条の当主、そして木田家御用商人、大田大商店のおかみ、はるさんだ」
「!?」
今川の殿と北条、はるさんが驚いた顔をしている。
「すまねーなー。実は俺が木田家の当主。木田とうだ」
「なーーーーっ!!!!!」
「お、俺は、アンナメーダーマンに……」
勝手に口を開いたのが気に障ったのか、ゲンが北条をにらみ付けた。
それが、恐ろしかったのか、北条がびびって小さくなった。
「アンナメーダーーーーーー!!!」
俺は北条の為変身する事にした。
「…………」
一同は何事かと、固唾を飲んで俺に注目した。
「あっ、しまった。かけ声を間違えた」
「なーーっ」
一同がピコンと、ずっこけた。
すげえ、そろっている。
まるであのコントのようだ。
俺はコホンと咳払いをして、仕切り直した。
「オイサスト シュヴァイン!!」
クザンの体が割れて、俺を包む。
「おおおおおっ!!」
集まっている者達から、どよめきが起った。
「北条、わるいなー。アンナメーダーマンも俺なんだわ」
「か、かっこいい!!」
あずさと愛美ちゃんが声を出した。
「はっははぁーー」
北条が、額を畳に付けて平伏した。
「みんなー、なんかオタクっぽくって、なかなか変身できなかったが、これがアンナメーダーマンの真の姿だ。これより、アンナメーダーマンの正体はここだけの秘密とする。誰にもバレないように頼むぞ」
「はっははぁーっ!!」
全員が返事をする。
「とうさん、滅茶苦茶かっこいい!!」
あずさが大喜びだ。
「そうかー」
「うん」
あずさの可愛い笑顔から、視線を北条に移した。
「北条、あんたには、小田原を任せたい。やってくれるか?」
「大殿、質問では無く、やれと御命じ下さい。喜んでやりますとも」
調子が良いなーこいつ。
だが、悪い気はしない。
「今川には、駿河を任せたい。まずは、農業を奨励して、食糧の自給を目指してくれ。それと遠江の調査も頼みたい」
「はっ!」
「堅苦しいのは、ここまでだ。後は飯でも食いながら、話そうや」
ゲンが言うが速いか、料理が運ばれてくる。
「すげーーっ、べっぴんさんばっかりだーー。なー今川さんよー」
北条が喜んでいる。
「そ、そうですね。美人は殺されやすいですから、こんなにそろっているのはすごい事です。やはり大殿の、奥方様だからですか?」
「そうでーーす!!!」
給仕をしている美女達が、そろって返事をした。
なんでそんなとこだけ、そろうねん。
「ちがうぞーー」
俺は全力で否定した。
だが、今川がなにげに恐ろしい事を言っている。
こんな崩壊した世界では、美女は男達に力ずくで好きにされ殺されてしまうようだ。
ゲンの力が無ければ、こんなに美女が残る事は無かったのだろう。
しかし、給仕のお姉様方のスカートが短い。
「どうぞ」
俺の料理を運び、俺の前に配膳する時、スカートの中が丸見えになる。
見たくなくても、目に飛び込んでくる。
この人達のは、水着ではない、正真正銘下着だ。
そして、美女は俺の表情を見て、その後股間を見てくる。
ま、まさかこの人達は、かけでもしているのか。
立たせた人が総取りとか言って、お菓子でもかけているのでは無いのだろうか。
「もう、とうさんのお世話は私がします」
あずさが、美女達の給仕を断った。
そして、配膳をするのだが、さっきまでの美女の真似をしている。
かわいい、スカートの中身が出ているが、それ水着ですから。
それにお前は娘だからーー。
見たくも何ともねー。
「えっ!?」
俺は目を疑った。
ヒマリちゃんまで、あずさのメイド服を着て、嬉しそうに真似をしている。
はーーっ、やれやれだぜ!