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0067 至福の時間

壁にこの店で収納した、フィッティングルームを出して設置した。

フィッティングルームの前に、メイド服の置いてあった店の商品をズラズラっと並べた。

これからやろうとしているのは、シュラのコーディネートだ。


シュラは、中学時代美術の成績が四だった俺が、完璧を追求して造り出したスタイルをしている。

八頭身で、身長は170センチ、モデル体型で、手足はすらっとして長い。

頭は、鼻の部分だけ高くした丸い物を乗せた感じにしていたが、ゴーレム魔法をかけた時、金色の模様が浮かび上がり、その一部が目のように模様を刻んだ。

口は無いのだが、付与魔法で話す事が出来る。

どうなっているのかは不明だ。


体は、レオタードの様な段差は作ったが、実際には何も着ていない。

ただの赤い金属オリハルコンのかたまりだ。


「シュラ、ここにある服を着てみてくれ」


「マスター、ヨロシイノデスカ?」


この返事という事は、着たかったと考えて良いだろう。

何しろ表情が無い、ゲンと同じで口調で判断するしか無い。

だが、俺はその点においては、自信がある。

何しろ、あずさも昔は表情が無かったから、表情無しの感情を読むのはプロといってもいい。


「ああ、いいとも、気に入った物を選んでみなさい」


「ハ、ハイ!」


うむ、喜んでいる。

次から次へと選んでいる。

好みはどうやら、長いスカートのメイド服ようだ。

メイド服以外にもゴスロリの服があるのだが、選んだのはメイド服だった。


「選んだら、この中で着替えるんだ」


「ハイ」


「こらこら、ちゃんと閉めてから着なさい」


シュラは、そのままカーテンを閉めないで着ようとしたが、一応閉めさせた。


「ドウデショウカ?」


「う、うむ。まあまあかな」


俺は、こんな返事をしたが、実は心中穏やかで無い。

何故なら滅茶苦茶似合っているからだ。

頭にふわふわの帽子をかぶり、もう、何かのアニメの実物大のフィギュアだ。


「ソウデスカ」


俺の返事で、シュラは少ししょげてしまった。

もっと、喜ぶと思ったのだろうか。かわいそうなことをした。

だが、そんな事は、今はどうでもいい。


「この中から、好きな物を選びなさい」


そう、これこそが俺のやりたかった事なのだ。


「……ア、アノ」


シュラが俺の顔を二度見した。

シュラの前には、布が少ない綺麗なレースの、おぱっ、おぱんつとぶらじゃーが、いっぱい置いてあるのだ。


「どれがいい、ピーーーーーッ!!」


やばい、鼻から空気が強く出過ぎて、笛のような音が出てしまった。


「デハ、コレヲ……」


「う、うむ、中でつけてみなさい」


「ハイ」


今度は、ちゃんとカーテンを閉めて着替えている。

衣擦れの音が聞こえる。

そう言えば、転生前は、こんな経験がなかったなー。

まあ、転生していないけどね。


「マスター、デキマシタ」


しまったー。メイド服を着ているから、どんな感じか全くわからねー。


「す、すまない。見せてもらえないだろうか」


「!?」


んっ、シュラが驚いたように感じたぞ。

まさか恥ずかしいのか。

いやいや、ただの金属の塊ですよ。

言ってみればフィギュアですよ。ない、ない。


「こうスカートをまくって」


俺はスカートを胸まで上げる真似をした。


「コ、コレデヨロシイデショウカ」


な、何だ、シュラがもじもじしている。

見ているこっちが恥ずかしくなる。

だが、ちゃんと確認しないと。

茶色のパンツをはいているのだが、似合いすぎている。


しかし、他人には見られたくないよなー、こんな姿。

実物大のフィギュアにスカートをまくるポーズをさせて、そのパンツをじっくり見ている。豚顔のおやじ、きめーー!!

自分の事なのに自分できめーー。


「……」


そう思いながらも俺は、じっくり見つめている。


「ア……アノ……」


シュラが、ぷるぷる震えている。

まさか、恥ずかしいのか。

俺はぱんつから目を離し、上目遣いにシュラの顔を見た。


「あれーー、顔が赤い」


元々、オリハルコンだから赤いのだけど、あきらかに顔だけ赤さが濃い。


「あれーー、顔が赤いじゃ無いです!!」


「えっ!?」


後ろからあずさの声がする。

恐る恐る後ろを振り返った。油の切れたロボットのようにギギギギと音が出るように。

当然、二人が立っています。


「い、いつから、見てたの?」


「手をつないで、壁に向うとこからです」


「さ、最初からじゃねえかー! ガッカリだぜ」


「そんなに、見たいなら、私のを見てください」


「そうだ、あたしも着てやるよ」


「いや、いらねーー。人間のパンツなんか、くせーし、きたねーー」


ドカッ


おかみさんとあずさの蹴りが入った。

あずさの蹴りはすさまじかった。

俺が十回転くらい転がった。

普通の人間なら死んでいるようなけりだ。


「私のは、臭くないし汚くありませーーん!!」


二人の声がそろった。


「はるさん、四階に社員用のシャワーがありました。ちょっと行ってきましょう」


あずさは、ミスリル製のウォーターサーバーを収納した。


「シュラちゃんも一緒に来て!」


「あっ!!」


俺の楽しみを奪って、あずさ達は四階へ上がっていった。

まだ、ぶらじゃーを見てねーのに。

男は、フィギュアを手に入れたら、絶対見ますよね。

ちがいますかーー!!!!


こうして、一日があっという間に終ってしまった。

楽しい時間は速く過ぎる。

明日は、役所へ行かなくては。

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