「あずさ、店内の商品で気に入った物があれば収納してくれ、収納が終ったら、シュラを連れてきて欲しい」
「わかりました」
お店は四階建て、一階は駐車場、二階、三階は店舗、四階は倉庫と事務所になっている。
ひとまず、あずさが残した物を、全部収納した。
部屋の中に何も無くなると、とても広く感じる。
あずさは、移動魔法で小田原に飛んだ。
「まずは、照明と空調だな」
店内は、広くてまだ午前中なのに夜のように暗い。
季節が、初夏のため部屋の中は少し暑さを感じる。
照明は、ミスリルロッドにゴーレム魔法を使い、付与魔法で白色の光を出すようにした。
それを現在の照明と取り替え発光させた。
ゴーレム化させているので、言葉で発光と消灯が可能だ。
「すごい、どうなっているのかわからないけど、電気が付いた」
おかみさんが驚いている。
正確には、電気では無く魔力ですけどね。
そして、空調の送風口に、こちらもミスリル製の細い板をセットした。
これにも、ゴーレム魔法を使い、付与は風魔法と、温度魔法だ。
とりあえず、丁度よい二十三度になるようにした。
「とうさん、戻りました」
あずさが、シュラと二人で戻って来た。
「シュラ、早速だけどこれをエアコンの、吹き出し口にセットしてくれ」
「ハイ、マスター」
「すごいねー! 今度は赤いロボットだよ」
「おかみさん、ここを俺の所有物にするにはどうしたら良い?」
「簡単さ、外の看板にペンキで名前を書けば良い」
「そうか、ありがとう」
俺は、店の外に出た。
道路の十字路に立っている店舗の、交差点側に斜めに出入口が切ってあり、その上に店名と、垂れ幕でアウトドアセールとなっている。
「これを店の名前にすればいいのだな」
木田商店では、身ばれしてしまう。
俺は、木田から縦線を取ることにした。
大田商店、どうせなら、大田大商店にしよう。
これだと、上から読んでも下から読んでも大田大、左右反転させても大田大だ。憶えやすい。
読み方は、おおたふとしだな。
俺は、空を飛ぶと、収納してあったペンキの黒で大田大商店と書いた。
「とうさん、何て読むの」
「うん、おおたふとししょうてん」
「じゃあ、私は、おおたあずき、にします」
「じゃあ、あたしは、おおたはる、だね」
「次は商品だ」
俺は店舗二階へ上がった。
「全照明点灯、空調全開」
二階で、ゴーレム達に命じた。
「と、とうさんは、天才です」
明るく、そして涼しくなった店内にあずさが喜んでいる。
まずは冷蔵庫と冷凍庫、これはミスリルで作ってだした。
家庭用と、業務用をだし、業務用にはマグロを入れた。
当然マグロも商品だ。
そして、この店にもつけた、照明も用意した。
収納したこの店にあった展示用の棚を出し並べる。
当然、空調用ミスリルも並べる。これからの季節には必要だろう。
「さあ、これから出すのがこの数日、考えに考えた目玉商品だ」
「な、なんだって、今までのが目玉商品じゃ無いのかい」
おかみさんが驚いたが、俺は人差し指を立て、左右に振った。
「チッ、チッ、これが目玉商品、ウォーターサーバー、そして加熱コンロ」
俺は、ミスリル製のウォーターサーバーとオリハルコン製の熱調理器をだした。
「とうさん、それは良いですけど、いちいち変な声で言うのはやめてもらえませんか」
「ふふふ、あずさ、それは出来ない。アイテムを出す時に大山のぶ代の真似をするのは、当たり前の事だ」
「なにそれ」
「ガーーン! まさか大山のぶ代を知らないとは…………泣けるぜ!」
「ところで、それは何?」
おかみさんが割り込んで来た。
「これは、こうすると……」
俺は形だけのミスリルのウォーターサーバーに手を当てて魔力を込めた。
俺がゴーレム化の魔力を入れると、黄金色に光る。
そして、模様のように溝が出来て、金色の模様が光輝く。
青い金属の筐体に金色の模様が光ると、なんとも言えない美しさがある。
付与は水魔法だ。
俺はウォーターサーバーの正面のレバーを下げた。
「な、なんだって!! す、すごい。水が出た」
「それだけじゃ無い、横にある蛇口も使える。これで、洗濯もお風呂も使える様になる」
「こ、この水はどこから?」
「ふふふ、内緒です。これをレンタルで出そうと思います。どうでしょう売れますかね?」
「あはははは、今のこの日本で、ほしがらない人はいないさ」
ついでにオリハルコン製のコンロを実演した。
普通のガスコンロと同じだが、火が魔法ででるというだけの代物だ。
「まだ、案は色々ありますが、とりあえずこんな所でしょうか。じゃあ、二人とも食事の時間です。俺はやることがあるので二人で行って来てください」
「えっ、あんたは食べなくていいのかい」
「とうさんは、おたくスイッチが入ると、ご飯は抜きます。はるさん、行きましょう」
ふふふ、そう、俺はおたくスイッチが入っている。
犠牲者は、君だ。シュラ君だ!
ビクン!!
あれ、シュラの体が反応した。
悪寒でもしたのだろうか。
ロボットが悪寒を感じるなんて、性能良すぎだ。
「二人は行ったか?」
「ハイ、マスター」
「では、こっちへ来なさい」
俺は、きっと悪代官の様な顔をして、シュラの手を引いて部屋の壁に歩いているのだろう。
「ふふふふふふ」
やってやりますよ。あれを……。
笑いが止まらない。