目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
0058 城下町

市街地から、爆音が聞こえるが恐らく苦し紛れの砲撃だろう。

俺は、校庭に戻りあずさと合流する事にした。


「あれっ、あずさ。愛美ちゃんは?」


「愛美ちゃんなら、坂本さんと一緒です」


「なっ、なにーーっ!!」


そ、それはいかんだろう。

ゲンも誰も止めなかったのかよー。


「何を驚いているのですか」


「いや、さすがに危険すぎるだろー」


「くすくす、こんな世界になりました。過保護はいけません」


「これも、社会勉強と言うことか。まあ、お姫様でもあるまいし、いいか」


「はい、大丈夫です」


「じゃあ、あずさ」


「はい」


「俺と一緒に小田原の町へ行こう」


「はい」


あずさはとびきりの笑顔で嬉しそうになった。


「藤吉」


「はっ」


「悪いな、もうしばらくここに待機していてくれ。敵軍が小田原入りしたら全軍を、あずさの魔法で移動させる。ゲン達が戻ったら伝えてくれ」


「わかりました」


「留守を頼む」


「はっ」


俺は、あずさと小田原城を目指した。

激豚君で見つからないように低空を飛び、山の中に入り箱根を通り、小田原の西から町に入った。

この程度は数十分で移動出来る。

近くに港があったので、そこに激豚君を水に沈めた。


俺は、いつもの様に黒いジャージにヘルメット、あずさはいつものメイド姿。

けったいな二人組なので、忍者の様に人の目を気にして見つからないように移動した。

町はまだ、静かだった。


「とうさん……」


あずさが町の異変に築き、俺の腕にしがみついてきた。

町はよく見る世紀末の、悪党が支配する町のような雰囲気だ。

武装した迷彩服の男達が、町の人達にあごで指示をしている。

遠慮無しに暴力もふるっている。


「なんで、こうなるのだろうなー」


俺は、隕石騒ぎの前の日本を思い出していた。

一部の上級国民だけが富を搾取して、底辺の俺たちみたいな者は生かしてやるだけでも、ありがたいと思え的な扱いを受けていた。


「そうか、変わっていないのか! 人間の本質がそうなのだろうか? ならば俺は変わり者でいいや。底辺の人間がせめて苦しまないようにしたい」


俺は、ブツブツつぶやいていた。


「とうさん……」


あずさは分かっているのか、分かっていないのか、不明だけどキラキラした目で見つめて来る。


「ふふふ、市民が明るく楽しそうに暮らしているのなら、友達になろうと思ったが、市民が痩せてしまって、表情が暗い。これなら、支配者を追い出して、市民を解放したほうがよさそうだ。ふふふ、少し遊んで行こうかな?」


「じゃあ、はい!!」


あずさの奴どこで用意したのか、仮面をつけた。


「では、始めますか、アスラーマン殿!」


「ふふふ、始めましょう。アンナメーダーマン殿!」




「配給だーー、並べーー!!」


城の一角で、迷彩服のデブが叫ぶとゾロゾロと、入れ物を持って市民が集まってくる。


「ほらよ、ほらよ」


エプロンを着けた迷彩服の男が、鍋から白い液体を器に入れている。


「あの、うちは家族四人です。とてもこれでは足りません」


「うるせーなー。一家族でそれだけだ。わかったらさっさと帰れ!」


「俺たちは、知っているんだぞ。あんたらばかり、贅沢していることを。俺たちだって必死で働いているんだ。おかしいだろう!!」


「今、言った奴! 前に出ろ!!」


迷彩服のデブが機関銃をかまえる。


「……」


さすがに誰も前に出る者がいなかった。


「じゃあ、全員死ねーーー!!!」


ダダダダダダダ!!


機関銃を撃った。まじかよー。

あずさが素早く動いた。

おいっ、危ないって!!

その弾が全て宙で止まっている。


「アスラーー」


おっ、技名を言うつもりだ。


「……」


俺は何を言うのか唾を飲み込み黙って待った。


「だめーー、そんなの急に思いつきませーん」


あずさよ、そんな所だけ俺の真似をするんじゃありませーん。

まあ、それはいいけど、あんまり素早く動いて、急停止するから、お気に入りのメイド服のスカートが反対むいてしまっていますよ。

白い物がむき出しです。


「おおおおーーーおー」


ほら、おじさん達から、心の底からの「おおーっ」が出てしまいましたよ。

まあ、水着だから見られてもいいのですけどね。


「とうさん!!」


「違うよー、アンナメーダーマンだからーー!!」


言いながら俺は、デブ迷彩服の前に出た。


「なんだ、このデブは?」


「お、お前にだけは言われたくねーわ」


この迷彩服のデブはどう見ても百二十キロ以上ありそうだ。

俺は九十八キロだ。


「がふっ」


俺は掌底で、男の胸を押した。

ロケットのように十五メートル程飛んでいった。

エプロンの迷彩服は、それを見て叫びながら逃げて行った。


「皆さん、これを持って行って分けて食べて下さい」


あずさは、ゆで卵の大きなざるを出して、その上にマヨネーズを置いた。

俺は、こないだ取った、マグロを一匹出して置いた。

一匹と言っても、三百キロ弱ぐらいの大きさのマグロだ。


「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」


歓声が上がった。


「はやく、持って行って下さい」


「あの、あなた方は……?」


「私は、正義の味方、アスラーマン」


「俺は、アンナメーダーマンだ。早く行くんだ」


「はい」


集まっていた、配給待ちの市民はゆで卵とマグロを持って逃げ出した。


「こっちだーー!!」


逃げたエプロンが仲間を連れてきた。

俺とあずさは、迷彩服を次々倒していく。


「あ、あずさ、すごい強いな」


俺はあずさの強さに驚いている。


「ふふ、だって、魔王城のメイドですから」


魔王城のメイドは、この位の強さは当たり前の様だ。

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?