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0053 月に照らされ、美しい大阪城

ハルラ達の姿は夜の大阪城公園にあった。

満月は照明のように大阪城天守閣を照らしている。


「おー、俺の家が見えてきた」


ハルラが天守閣を見てニヤニヤ笑っている。

桜木達は、ハルラがここを自宅にするつもりだとすぐに理解した。

まさか、江戸城を襲ったのは、あそこを自宅にするつもりだったのかと気が付き、今更ながら恐怖を感じていた。


「わーーーっ!! わーーーーっ!!!」


大勢の人の喚声が聞こえる。

声の方に向うと、数千の人間が広場に集まっていた。

広場には舞台が置かれ舞台の中央に椅子があり、頭がつるつるの、体のでかい男がふんぞり返っていた。こいつが、ボスなのだろうとすぐにわかる。


「あのハゲはバカなのでしょうか。あんなところでふんぞり返っていれば、殺してくれと言っている様なものです。さて、どれにしようかな。きひひっ」


桜木は舞台を見た。

舞台の上やまわりには、銃を持った男達がいて、守備をしている。

中には機関銃を持っている者までいる。

だが、ハルラ様にとっては、あんな守備は無いに等しいのだろうなと、思っていた。


――それにしても、ハルラ様はやけに上機嫌だな。


桜木はハルラの上機嫌に気が付いていた。

それもそのはず、住みかと、女が手に入り上機嫌になっているのだ。


広場では、ガラの悪い連中が丸く輪を作り、その中央でひどいリンチが行われている。


「ぐわっはっはっはー、見せしめだー! もっと痛めつけろーー!!」


特等席で、ボスが笑っている。


「ぎゃーーーー!!!」


人垣の輪の中央で数十人の者達が痛めつけられている。

すでに血だらけだ。


「まあ、あいつがこの中で、一番だな」


ハルラは、輪の中の痛めつけられている人間に、トコトコ近づいていく。


「ハ、ハルラ様!!」


桜木はハルラを追おうとした。


「桜木ーー!! 足手まといだ! お前達は命令するまで動くなー!! すぐに出番は作ってやる」


「はっ!!」


桜木は、返事をすると、ハルラが何をするのか見学する事にした。


「どれどれ」


ハルラが、リンチの輪の中に進むと、驚きで他の人間の動きが止まった。

そして、リンチを受けている中の一人に近づいた。

ハルラは、その人に近づくと胸をもみ、スカートをまくって中を見た。

全体が静まり帰った。

あまりにも自然体で、そうするのが当たり前に見えて、まわりが反応を忘れてしまったのだ。


「きっ、貴様ー! な、何をしている」


やっと、リンチをしている一人が声を上げた。


「あー、この女、俺がもらうわ」


そう言うと、女の髪をわしづかみにすると、ズルズル引きずって歩き出した。


「何をボーーッとしている。ぶち殺せーーーー!!!!」


ボスが大声を出した。

その瞬間ハルラの目が、あやしく光った。

ハルラは、舞台に向ってあいている手の平を向けた。

舞台の上の男達の体に赤い線が入った。

ボスは、首に赤い線が出来ている。

ボスの首の線の高さにあわせて、まわりの男達にも線が入っているようだ。


最初に、ボスの首がボトリと落ちた。

首から、水鉄砲のように、チューッと二本血が噴き出す。頸動脈からの血であろうか。

遅れて、ボスのまわりの男達の体が切れて、ドサドサ地べたに落ちた。

上半身と下半身が真っ二つだ。


「うわあああああああーーーーーーーー!!!!!!」


広場に恐怖の声が上がった。


「ふふふっ、無詠唱で出せるのですが、皆さんにはこう言った方が理解しやすいですか。エアーカッター!!!!」


「逃げろーー!! ばけもんだー!!! ひいいいいいーーーー!!」


広場から悲鳴が上がり、逃げだそうと動き出した。


「うごくなーーーー!!! 声を出すなー!!!! 命令を聞かない奴はころーーすーー!!! 桜木ー、命令を聞かないものはころせーー!!!」


ハルラは、大声を出した。

その大声は、大勢の人の悲鳴をかき消し、広場中に響いた。

そして、ハルラはどこからか大きな鉄剣を出し、桜木と部下の足下に投げた。


ハルラの大声で、静まり返った群衆だったがふたたび、動き出そうとした。


「ぎゃあああああーーーー!!!!」


動いたものは、桜木達が容赦無く切り殺した。

桜木の持っている剣は二メートルほどの長さがある。

動いた者と、その回りの者を巻き込んで、直径四メートル程の人達を真っ二つにした。


「うごくなーーー!!!」


「騒ぐなーーーーーー!!!!」


桜木と部下が声を張り上げ剣を振り回す。


「ぎゃああああーーーー」


しばらく悲鳴が上がり続けた。

ハルラは女を引きずりながらゆっくり舞台に上がる。

女はあまりの光景に、手で口を押さえながらぼろぼろ涙を流し、何も抵抗できないでいる。

舞台に上がると、血でベトベトになった椅子に、胴体だけで座る死体を蹴り落とした。


「おーい、鈴木先生!!」


舞台の上から子供の様な笑顔で、鈴木を手招きした。

鈴木は呼ばれるまま舞台に上がった。

舞台に上がった鈴木を満足そうに見ると、椅子を指さした。

鈴木はこの血でビチョビチョになった椅子に座るのかと、ちゅうちょしたが視線をハルラに移すと、口は笑っているが目が笑っていない。


――くそっ、ハルラめ、俺をためしていやあがる。


鈴木は素早く椅子に座り、足を組みえらそうにふんぞり返った。

高いオーダーメイドのスーツが、どこの誰ともわからない男の血で汚れてしまって、泣きたい気持ちになっている。


「このやろーーー!!!」


舞台の脇の、ハゲの配下が我にかえり銃を発砲した。


パパパパパパ

パーーン、パーーン


「馬鹿め、鎧を着込んでいない時は、当然結界を張ってある。そんな物が効くかよ!!」


弾丸は結界に捕まったのか、宙に浮いて止まっている。


「くそーーっ」


それでも、ハゲの部下は弾丸がつきるまで撃ち続けた。


「先生、どうしますかー」


ハルラは、鈴木に無駄に整った美形の顔を近づけ、ニヤニヤ笑って声をかけた。

また、鈴木を試すようだ。


――ふふふ、俺に言わせようと言うのか。


「ちっ、殺せーーーー!!!」


鈴木は、やけくそで大声を出した。

最早、後戻りできないことを自覚した。


「はっ、鈴木先生! 仰せのままに」


ハルラは、ハゲの部下をニヤニヤ気持ちの悪い笑顔で見回した。

だが、目だけは鋭く吊り上がり、月を反射して青くあやしく光っている。


「に、逃げろー!!」


ハゲの部下がハルラに無防備に背をむけた。

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