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0051 休暇

「じゃあ、あずさ木田城中庭へ、移動を頼む」


「はい」


「ちょっと待ったーー!!」


ミサが叫んだ。

おーーっ! 懐かしい!!

ごめんなさいを言う奴だ。


「ちょっと、待って下さい」


珍しく、坂本さんも愛美ちゃんも二人そろって言ってきた。


「ごめんなさい!」


とりあえず言ってみた。


「まだ、何にも言っとらんわーー!!!」


ミサが乗ってくれた。

俺は、一人で受けている。


「何ですか?」


俺が笑って、しゃべれないので、あずさが俺の代わりに聞いてくれた。


「せっかく、遠出したのにとんぼ帰りは無いわ」


「ええーーっ! 用事も済んだし、とっとと帰らないとゲン達に悪いしなー」


「ちょっと、何を言っているの、あれだけの小麦を収穫したのだから、あなたは十分仕事をしたでしょうに」


「あんなこと、仕事のうちに入らねーだろー。なー、あずさ」


あずさがブンブン首を振っている。

えっ!? そうなのか。


「ほらー」


「あの、私も発言してもよろしいですか」


坂本さんも言いたいことがあるようだ。


「あっ、はい」


「私は、五日間有給休暇を取りました。そのー、もう少し滞在したいかと……」


なんだか、悲しそうに、そして申し訳なさそうに言ってきた。


「あの、私もいいですか。私は、家を抜け出してきました。戻れば怒られてしばらく外出禁止になります。ですから……」


愛美ちゃんは家出して来ちゃったんだ。

大胆だなー。

あれ、その片棒を担いだのだから、坂本さんも、おとがめ無しというわけにはいかない気がする。


うーーん、全員歯切れが悪いけど、ようはアメリカでもう少し遊びたいと、そういうことだろうか。めんどーくさいなー。


「あずさちゃん、ハワイへ行かない? 今なら高級ホテルにただで泊まれるわ」


ミサが、俺の方をチラリと見て、矛先をあずさに変えたようだ。


「えー、たっ、ただー。とうさーん、ただ、ただ、だってー、行こうよー」


だー、あずさの奴、ミサに取り込まれやあがったー。

ミサの奴、あずさのつぼを押さえているなー。

はぁー、こんな美少女がただと言う言葉に弱いとは。

悪いおじさんに、「ただ、だから」って言われるとどこでも、ホイホイついて行きそうだ。


「坂本さん達の意見も聞かないとな。ニューヨークに行きたいかもしれないしな」


「ハッ、ハワイがいいです」


二人の返事がそろっている。

あらかじめ、三人で決めていたのかもしれない。


「アメリは大丈夫なのか」


「私は、うな重が食べられれば、どこでもいいでしゅ」


「じゃあ、行きたくないけどしゃーねーなー」


「ヤッホーー」


ヤッホーなんて山以外で初めて聞いたぜ。


俺は乗り気じゃ無いけど、満場一致ではしょうが無いので、ハワイへ向う事にした。

今のUFOは六人乗りなので、一まわりほど大きくして、九人乗りを作ってハワイへ出発した。

場所は、アメリが知っていたので案内してもらう。






青い空、青い海、そして大量のゾンビ。

ハワイの有名なビーチに到着した。

ビーチにUFOを置いて、結界を張っているけど、生身の人間がいるので、まあ寄って来るわ、寄って来るわ。

だが、ゾンビは、海には入ろうとしない。

まるで水を怖がっているようだ。


「結界の海側だけは消しても良さそうだな」


「そうね。海水浴は楽しめそうね。じゃあ、着替えて来るわ。のぞかないでね」


「心配しなくても、俺は泊まれそうなホテルのスイートルームを探すし、アメリの水着も探してやりたい、今から出かけるから心配いらない」


「えっ!?」


ミサと坂本さん、愛美ちゃんまで驚いている。


「とーさーーん、見てーーーー」


あずさは、いつも水着着用だからメイド服を脱いで、俺に水着姿を見せてきた。

あずさの水着は見飽きているっちゅーねん。


「あずさちゃん、ちゃっかり水着姿を見せているわ。怖い子」


おーーい、ミサの奴、いつから姫川あゆみになったんだー。

俺は、全員を放置して、飛び去った。

ビーチから見たホテルは、綺麗だったが、近づくと荒れ放題だった。

ガラスは割れ、部屋の中も荒らされ放題だ。

壁は銃弾の痕がいたる所にある。


ハワイは銃規制が厳しい州ではあるが、二十一歳以上の国民は許可があれば銃を所持出来る。

だから大勢の人が所持していたのだろう。


「少し掃除をしておくかな」


俺は街の道路に落ちているゴミを掃除した。

だが、可哀想なゾンビ達は、俺たちに危害を加えることが出来ないのだから放置した。

ホテルを、一つずつ見ていると、何とか良さそうな部屋が見つかった。

ガラスも割れていないし、室内も綺麗だ。

家族連れが泊まれるように部屋が大きい。

ベッドが四つだが、俺とシュラは、ベッドじゃなくてもいいから、ここでいいだろう。


部屋に入ると、贅沢な作りで隕石騒ぎが無ければ、一生来ることが無い場所だろう。


「これがハワイかー!」


部屋は最上階でオーシャンビューだ。一泊いくらするのだろうかとそんなことばかり考えてしまう。

最初は、気が乗らなかったが、来てみれば美しくていいところだ。

心が洗われるようだ。

次は、アメリの水着を探そう。


「その必要は無いわ。持って来ているって」


ミサのテレパシーだ。


「じゃあ、部屋は見つかった。そっちへ合流するよ」


「うふふ、待っているわ」


俺は、ビーチへ向った。

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