「海外旅行と言えば、パスポートが必要です」
「そ、そうだった。俺は持っていない。と、いうことはあずさも当然もっていないよな」
「はい」
「うふふ、私は忘れないように二つ持ってきました」
坂本さんが、巨大な旅行カバンを持って来て、それを運びながら言った。
「二人分?」
「ああ、いいえ。一人分です。言い間違えました」
そんなこと言い間違えるかなーー。
「あなた達はそろいもそろって、ばかなのーー!!」
「はーーっ」
俺たち三人は納得出来なくて、ミサの顔を見た。
「今のこの世界で、パスポートなんかいるもんですかー!」
「そ、そうか。政府が無いのだから、いらないのか。便利になったもんだ」
俺は今回の、移動用にミスリルでUFO型の乗り物を作った。
これなら誰かに見られてもUFOと錯覚してもらえるだろう。
出入り口の中には、二人掛けの椅子を三列、六人乗りにした。
メンバーは、俺とあずさ、シュラとミサ、坂本さんの五人だ。
座席以外には、キッチンと冷蔵庫、バス、トイレも付いている。
冷蔵庫は当然ミスリル製で、魔法で冷やす。
キッチンも同じで、水魔法と火魔法を使う。
飛行の原理は、空飛ぶホウキと同じ原理で飛ぶ。
「忘れ物が無いようなら出発します」
「はい」
全員の返事がそろったところで飛行を開始した。
操縦も、もちろん不要だ。
UFO自体がゴーレムなので、勝手に飛んでくれる。
命令は、ただ東へ真っ直ぐだ。
時間は十二時間ぐらいを予定している。
「坂本さーーん!」
一時間ぐらい飛行したくらいで、どこからか坂本さんを呼ぶ声がする。
俺は全員の顔を素早くチェックした。
だれも口が動いていない。
俺は空耳だろうと聞こえないふりをした。
「坂本さーーん!」
やっぱり声がする。
コワイ、コワイ。
ミサのお母さんの話では霊はいると言うことだ。
「怖いわね、何か声がするわ」
ミサが言う。
俺の気のせいではなさそうだ。
「あっ、忘れてた」
坂本さんが、カバンに駆け寄った。
「忘れてた、じゃ無いです!」
「申し訳ありません。愛美様」
カバンから愛美ちゃんが出て来た。
「うふふ、あずさちゃん! 来ちゃった!」
来ちゃったじゃ無いですよ。
やれやれ、困ったもんです。
来てしまったものはしょうがありません。
いまさら追い返すことも出来ませんしね。
あずさも嬉しそうなのでまあしょうが無いのかな。
二人でキッチンに行き、機内食を作り出したようだ。
しばらくして、紅茶の良い匂いがしてきた。
「とうさん、どうぞ」
あずさが、紅茶と軽食を持って来てくれた。
それを食べながら、景色を見るとまわりが全部青い。
海外旅行など初めてだが、飛行機というのは、景色を楽しむ事は出来ないようだ。
水平線まで全て海、何も無い。全然楽しく無い。
軽食から六時間ほどたったら、あずさが機内食を用意してくれた。
「今日は特別です」
そう言って、うな重を出してくれた。
俺以外は、全員お替わりをしている。
「来て良かった!!」
愛美ちゃんはこれだけでも大満足している様だ。
そして、やっと陸地が見えてきた。
俺世代は、たぶん聞いた事があるのでは無いだろうか。
やっぱりアメリカと言えばこれを言っておかないとね。
「ニューヨークへ行きたいかーーー!!」
「えっ!?」
全員、目が点になっている。
知らないのかな。
「まあ、ニューヨークには行きませんけどね」
「なんじゃそりゃーー!!」
そして、今度は景色が陸地ばかりになりました。
数時間飛ぶと、眼下は畑ばかりになります。
「ぎゃーーーーー!!!!」
坂本さんと愛美ちゃんが悲鳴を上げた。
声の方を見ると、セクシーな女性がUFOの外に張り付いている。
「あっ、アメリカンレディー」
「ほんと、バカなの! ウルトラウーマンでしょ。全然かすりもしないじゃない。どんな間違え方よ!」
「その声は、ミサミサ」
「はい。久しぶりウルトラウーマン!」
「ねえミサミサ、このまま下に降りてくれない。私は地球上では、体力の消耗が激しくて、変身を維持できないの。下に降りたら変身を解除するから、ゆっくりお話しましょう」
俺たちは、ウルトラウーマンの言う通り垂直に地面に降りた。
地面に降りると、ウルトラウーマンは変身を解除した。
眩しいフラッシュの中から、金髪碧眼の幼女が現れた。
どう見ても十歳位にしか見えない。
「ちょっと、聞いて良いか?」
「どうじょ」
「アメリカンレディー、アンタは二十歳以上なのか? それだけ教えてくれ。何百歳とか言われると、なんか安っぽいファンタジーのようになるから、本当の歳は言わなくていい」
「あのねー、ウルトラウーマンよ。また、間違えているわ」
「あ、そうか」
「ミサミサ、どっちでもいいでしゅ。私の本当の名前はアメリでしゅから。歳は二十歳以上でしゅ」
「来たー、合法ロリだー。しかも舌ったらずで話し方も声も超可愛いー。着ている服もロリロリだーー」
俺は、はしゃいでしまった。
「……」
あーっ、全員の目が光を失い、死んだ魚の目になっている。
仕方がないだろー。おっさんなんてこんなもんだーー。
ですよねー。
「ま、まさか、あなたは、アンナメーダーマンでしゅか?」
「そうです。私がアンナメーダーマンです」
「会いたかったでしゅ」
金髪ロリ子が抱きついて来た。
ピーーーッ
あっ、鼻から凄い勢いで空気が抜けて、大きな音が出てしまった。
しかし、この子、変身するとダイナマイトボディー、解除後はロリ美少女って、一粒で二度美味しいじゃねえかーー。
「あの、この方は?」
坂本さんがミサに聞いている。
ミサは胸の谷間から、例の写真を出した。
31ヒーローズ、そこの中の一人を指さした。
「じゃあ、この方も隕石にいたのですね。すごい」
愛美ちゃんがロリ子を見つめている。
「ここで待っていれば誰かが来ると思っていましたが、アンナメーダーマンが来てくれたのですね。さすがです」
「ここで待っていればと言うことは、ここで畑の面倒を見ていたのか」
「はいそうでしゅ。誰かがきっと必要になって取りに来ると思っていました」
「アメリ、ここの小麦を分けてもらいたいのだが、いいか?」
「いいでしゅ。もうこの国で必要な人はいないでしゅから」
「アメリ、この国はどうなっているのか、教えてくれないか?」
「うふふ、いいでしゅよ」
アメリは、この後この国の現状を説明してくれた。