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0042 約束

「わああああーーーっ!!」


心の中のストレスを全部吐き出すような泣き方です。

いつもはあずさちゃんの一挙手一投足に、オロオロしているあの人ですが、優しげな目で見つめるだけでじっとしています。


「どうしたの、大丈夫?」


仕方が無いので私が声をかけました。

いつもの、涼やかで美しい人形のような顔が台無しです。


――かわいい


抱きしめちゃっても良いのかしら。

流れてきには大丈夫だと思うのですが。

えーーい、抱きしめちゃえー。

私が抱きしめようとしたら、それをスルリとかわし、あの人に抱きつきやあがりましたわ。


「ひっく、ひっく、あのね、とうさん、この子、前の世界で私に使えてくれた仲良しのシュザクというモンスターにそっくりなの。名前はシュラにしてもいいですか?」


上目遣いに見つめて、お願いしています。

この子、自分の使い方をしっかり理解しているわ。

こ、怖い子。

ほら、あの人の顔が見る見る……って、あれ、あの人はやっぱりどこかずれています。

心の中で、「あずさは前の世界でも苦労したんだ。こんなロボットしか友達がいなかったんだ」って思っています。


いやいや、そこは、すげーかわいいーーでいいだろうがよーーですわ。


「いいとも。いまから、このゴーレムはシュラだ」


「シュラ、よろしくね」


「ハイ、アズサ様」


「しゃべったーー!!」


「ふふふ、オリハルコン製だから話せるように魔法を付与した」


胸の中央に魔石が埋め込まれています。

一見これが弱点のように見えますが、これを壊してもしゃべれなくなるだけです。

動けなくする為には、手足を切り取るしか無い、おそろしいゴーレムです。敵にはまわしたくないですね。


「とうさんはすごいです。魔法をこんなに使いこなすなんて」


あずさちゃんがあの人に、嬉しそうに抱きつきます。

あずさちゃんは、まるで恋する乙女のようです。

って、あんた娘でしょ。結婚は出来ないのよ! わかってる。

よかった。あの子がライバルにならなくて。絶対勝てませんもんね。


「あずさ、教えてくれ! さっきのミスリル鋼に入れた魔力はどの位の魔力なんだ?」


「あれですか。99.999パーセント」


「そんなに!!」


「そうです。あれをやると、残りの魔力が99.999パーセントになってしまいます。一秒で自然回復する量を消費しました」


「あずさ……あと五個作って欲しい。色々試して見たいことが出来た」


あの人は、色々突っ込みたいことがあったようですが、言葉にはしませんでした。

そして、アンナメーダーマンの魔法の総量のマックスが、あずさちゃんの0.006パーセントというのがわかりました。


「ありがとう。また報告するけど、色々試して見るよ」


あの人は高魔力のミスリル鋼を五つ吸収すると、あずさちゃんに言いました。

いったい何を試すつもりでしょうか。

少し楽しみではあります。


結局、避難民は6割が木田市に移り住んでくれる事になりました。

残りは、地元へ行ってみたいということでした。

あの人は、とても喜んでいます。

おたくでコミュ障のくせに、人助けが出来て本当に嬉しそうって、おかしな人です。


そして、心の中で、「子供の数が増えた、そろそろ学校を考える時機がきたかな」と考えています。

あずさちゃんが聞いたらショックで寝込みそうですね。

まあ、あの人の事です、すぐに取りかかるでしょう。






「あのーとうさん、約束の事なんですが」


ゾンビ騒ぎが収まって、俺はオリハルコン製、ゴーレムコンバインを木田城の中庭で作っている。

コンバインをばらして、部品を作るのに時間がかかっている。

一回作れれば、量産出来るはずだが、部品数が多すぎて時間がかかっている。


そんなときに、あずさが言ってきた。

ミサもいる。


「な、何の話しだ?」


「ほら、やっぱりです」


「でしょー」


本当に何の話しだ。全くわからん。

と、考えたら、ミサがにらんでくる。

くーーっ、心を読むなー。


「遊園地ーーー!!!」


二人の声がそろった。

おいおい、あずさはいいとして、ミサは遊園地って歳でも無いだろうにー。

ぐはっ!!

ミサの顔がすげー怖い。


「あれは、二人の冗談じゃなかったのかよー」


「兄弟! 俺も少し外の街が見て見てー。丁度いいんじゃねえのか」


うわっ!

ゲンまで来ている。


「そうですよ。根を詰めすぎです。たまには、息抜きも必要です」


や、柳川まで。


「わ、わかったよー。でも行っても、楽しくねーと思うぜ。だってアトラクションがうごかねーんだからさ」


「やったーーー!!!」


聞きゃしねー。まあ行きたくねえけどしゃあねえかー。

全く、そんなにうれしいかねー。

二人がはしゃいでいる。


「では、愛美様は私の天紫改にお乗り下さい」


あなた達もいたのですね。

坂本さんと愛美ちゃんは結構な確率で木田城にいる。

結局、ゲン一家の機動鎧持ちが全員参加する事になった。

機動鎧は、ハッチにシートが付いていて、二人乗りなので、ゲンとポン、ダーと柳川、藤吉はいつもお世話になっているお姉さんを連れてくるらしい。

いいなあ。


俺は、激豚君にあずさと乗る。

ミサはシュラを乗せてくれるようだ。

シュラは今、あずさに服を着せられて、アンドロイドコスのおねーさんみたいになっている。

元々、俺好みのスレンダー、八頭身に作ったから、シルエットならモデルのようである。

お弁当は、あずさが収納したので全員手ぶらだ。


「全員準備はいいですかー」


「おーーーっ」


木田城の中庭から八つの鎧が飛び立った。

目的地は千葉デズニーリャンドだ。

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