「わああああーーーっ!!」
心の中のストレスを全部吐き出すような泣き方です。
いつもはあずさちゃんの一挙手一投足に、オロオロしているあの人ですが、優しげな目で見つめるだけでじっとしています。
「どうしたの、大丈夫?」
仕方が無いので私が声をかけました。
いつもの、涼やかで美しい人形のような顔が台無しです。
――かわいい
抱きしめちゃっても良いのかしら。
流れてきには大丈夫だと思うのですが。
えーーい、抱きしめちゃえー。
私が抱きしめようとしたら、それをスルリとかわし、あの人に抱きつきやあがりましたわ。
「ひっく、ひっく、あのね、とうさん、この子、前の世界で私に使えてくれた仲良しのシュザクというモンスターにそっくりなの。名前はシュラにしてもいいですか?」
上目遣いに見つめて、お願いしています。
この子、自分の使い方をしっかり理解しているわ。
こ、怖い子。
ほら、あの人の顔が見る見る……って、あれ、あの人はやっぱりどこかずれています。
心の中で、「あずさは前の世界でも苦労したんだ。こんなロボットしか友達がいなかったんだ」って思っています。
いやいや、そこは、すげーかわいいーーでいいだろうがよーーですわ。
「いいとも。いまから、このゴーレムはシュラだ」
「シュラ、よろしくね」
「ハイ、アズサ様」
「しゃべったーー!!」
「ふふふ、オリハルコン製だから話せるように魔法を付与した」
胸の中央に魔石が埋め込まれています。
一見これが弱点のように見えますが、これを壊してもしゃべれなくなるだけです。
動けなくする為には、手足を切り取るしか無い、おそろしいゴーレムです。敵にはまわしたくないですね。
「とうさんはすごいです。魔法をこんなに使いこなすなんて」
あずさちゃんがあの人に、嬉しそうに抱きつきます。
あずさちゃんは、まるで恋する乙女のようです。
って、あんた娘でしょ。結婚は出来ないのよ! わかってる。
よかった。あの子がライバルにならなくて。絶対勝てませんもんね。
「あずさ、教えてくれ! さっきのミスリル鋼に入れた魔力はどの位の魔力なんだ?」
「あれですか。99.999パーセント」
「そんなに!!」
「そうです。あれをやると、残りの魔力が99.999パーセントになってしまいます。一秒で自然回復する量を消費しました」
「あずさ……あと五個作って欲しい。色々試して見たいことが出来た」
あの人は、色々突っ込みたいことがあったようですが、言葉にはしませんでした。
そして、アンナメーダーマンの魔法の総量のマックスが、あずさちゃんの0.006パーセントというのがわかりました。
「ありがとう。また報告するけど、色々試して見るよ」
あの人は高魔力のミスリル鋼を五つ吸収すると、あずさちゃんに言いました。
いったい何を試すつもりでしょうか。
少し楽しみではあります。
結局、避難民は6割が木田市に移り住んでくれる事になりました。
残りは、地元へ行ってみたいということでした。
あの人は、とても喜んでいます。
おたくでコミュ障のくせに、人助けが出来て本当に嬉しそうって、おかしな人です。
そして、心の中で、「子供の数が増えた、そろそろ学校を考える時機がきたかな」と考えています。
あずさちゃんが聞いたらショックで寝込みそうですね。
まあ、あの人の事です、すぐに取りかかるでしょう。
「あのーとうさん、約束の事なんですが」
ゾンビ騒ぎが収まって、俺はオリハルコン製、ゴーレムコンバインを木田城の中庭で作っている。
コンバインをばらして、部品を作るのに時間がかかっている。
一回作れれば、量産出来るはずだが、部品数が多すぎて時間がかかっている。
そんなときに、あずさが言ってきた。
ミサもいる。
「な、何の話しだ?」
「ほら、やっぱりです」
「でしょー」
本当に何の話しだ。全くわからん。
と、考えたら、ミサがにらんでくる。
くーーっ、心を読むなー。
「遊園地ーーー!!!」
二人の声がそろった。
おいおい、あずさはいいとして、ミサは遊園地って歳でも無いだろうにー。
ぐはっ!!
ミサの顔がすげー怖い。
「あれは、二人の冗談じゃなかったのかよー」
「兄弟! 俺も少し外の街が見て見てー。丁度いいんじゃねえのか」
うわっ!
ゲンまで来ている。
「そうですよ。根を詰めすぎです。たまには、息抜きも必要です」
や、柳川まで。
「わ、わかったよー。でも行っても、楽しくねーと思うぜ。だってアトラクションがうごかねーんだからさ」
「やったーーー!!!」
聞きゃしねー。まあ行きたくねえけどしゃあねえかー。
全く、そんなにうれしいかねー。
二人がはしゃいでいる。
「では、愛美様は私の天紫改にお乗り下さい」
あなた達もいたのですね。
坂本さんと愛美ちゃんは結構な確率で木田城にいる。
結局、ゲン一家の機動鎧持ちが全員参加する事になった。
機動鎧は、ハッチにシートが付いていて、二人乗りなので、ゲンとポン、ダーと柳川、藤吉はいつもお世話になっているお姉さんを連れてくるらしい。
いいなあ。
俺は、激豚君にあずさと乗る。
ミサはシュラを乗せてくれるようだ。
シュラは今、あずさに服を着せられて、アンドロイドコスのおねーさんみたいになっている。
元々、俺好みのスレンダー、八頭身に作ったから、シルエットならモデルのようである。
お弁当は、あずさが収納したので全員手ぶらだ。
「全員準備はいいですかー」
「おーーーっ」
木田城の中庭から八つの鎧が飛び立った。
目的地は千葉デズニーリャンドだ。