目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
0039 パジャマの戦闘服

ふーーーーーっ


あの人は長いため息をつきました。


――ダメだー! 出来ねー。相手は人間だーー!!


あの人の心の叫びが聞こえてきます。

いったい何の事でしょう。


「!?」


そうか、わかった。隕石と同じように吸収しようとしているのだわ。

でも、人間の死体の吸収にちゅうちょしているのだわ。

はーーっ! どうしようも無い人。


「アンナメーダーマン、そこにいるのは、人間じゃないわ! ゾンビよ。このままでは、生きている人が全滅よ。ゾンビと生きている人とどっちが大事なのーーー! アンタダメーナマンなの!!」


「ぶひひひ! アンタダメーナマンは良かった。そうだ、大事なのは生きている人達だ。その命を守る為にはゾンビは不必要だ。掃除しなきゃあな。ありがとうミサ、目が覚めたよ。お前は本当に俺の心の友だ。何か一つ願い事を叶えてやりたい気持ちだー」


突っ込みどころが満載ね。

まず、笑い方が豚になっているわ。

心の友って、あなたはジャイ○ンかーー!!


「まって、願い事を叶えてくれるの?」


「いや、叶えないよ。叶えてやりたい気持ちに成っただけだよ」


「ばかなのーー!! もう何か叶えてもらうわ! 絶対!! 許さないんだからー!!!」


「えーーっ!」


そんなに嫌なのかー! 私の願いを聞くのがーー!!!

ガッカリだぜ! あの人の口癖です。


「そうよ。とうさん、叶えなくちゃダメ」


思わぬ所から応援が来ました。あずさちゃんが私に味方をしてくれました。

ここは、たたみかけなくては、


「じゃあ、私の願いは……」


「遊園地がいいわ。今なら入園料も無料だから。千葉デズニーリャンドへいきましょう」


くうーっ、なんて子なの、あずさちゃん、ちゃっかり自分の願い事を言いやがりました。恐ろしい子です。

少し、ひ○かわあゆみの気持ちがわかった気がします。


「じゃあ、それでいいわ」


私もあきらめて、それに乗りました。


「ええぇーーーっ!!!!!」


はあーーっ、あずさちゃんが驚いています。

こ、この子とんでも無いことを考えていやあがりますわ。


「どうしたの?」


私は心が読めるので何を考えたのかはわかりましたが、一応この子の口から言わせようと思います。


「とうさんと二人でいきたいので、邪魔しないで下さい」


ねっ! すごいでしょ。

呆れました。

本当に怖い子です。


「絶対、私も行きます。それで、美味しい物を食べさせてもらいます」


「あーはっはっはっはっ、二人の冗談のおかげで、準備も覚悟もできた」


あのね、冗談じゃないから、私もあずさちゃんも本気ですから。


「じゃあ、いくぞ!! アンナメェェェーーーーダァァァァァーーーーーー」


私は今、この声をテレパシーで全員に聞こえるようにしました。


――ゴクリ


全員がツバを飲み込みました。

つぎはきっと、恐ろしくかっこいい、技の名前が聞こえるはずです。


「あーー、だめだー!! 思いつかねー。しかたがねーよな、もともと俺は駄目なおじさんだしな」


「なっ、なんじゃそりゃあーーーーーー!!!」


全員がハモりました。

こんなにそろうかというほど、絶妙にそろいました。


あっ、柳川さんがこけて、専用の戦闘汎用鎧天紫がゾンビの中に埋もれています。


「俺のピカピカの天紫がーーー!!!」


雄叫びを上げています。

ぷっ、可哀想です。

私が少し吹き出した瞬間、あたりが金色に光り、ゾンビが一瞬で消えました。

そのスピードが速すぎる為、ただゾンビが消えたように見えましたが、きっとゾンビを包んで消したのだと思います。


「おおおおおおおおおおおおおーーー」


地響きのような驚きの声があたりから上がります。


「うおおおおおおおーすげーーーーー!!!! アンナメーダーマン!!! アンナメーダーマン!!!! アンナメーダーマン!!!!!! ……」


最初はアンナメーダーマンを知っている人達がアンナメーダーマンコールをしました。

それが何を意味するのかがわかった救助された人達が、遅れてアンナメーダーマンコールに参加して、アンナメーダーマンコールはどんどん大きくなります。アンナメーダーマンコールはしばらく続き鳴り止みませんでした。


救助された人達はアンナメーダーマンがゾンビを消したことは分かったようですが、どこにアンナメーダーマンがいるのかはわからなかったようです。

そうですよねー。まさかジャージを着たデブな人だとは思いませんよね。

しかも当の本人は、恥ずかしそうにあずさちゃんの後ろに小さくなって隠れているのですから。


――ほとんど出とるっちゅーねん!!




「兄弟!! やったな! さすがだぜ!!」


ゲンさんが帰って来てハッチから出て来ました。


「ぷっ」


いけません。吹き出してしまいました。


「あーー、これか、えらい勢いで急かされてなー。着替える暇が無かったんだ。そんなにおかしいかー?」


ゲンさんは、パジャマのまま戦っていました。

そのパジャマが、可愛い子グマの模様の付いたパジャマで、ギャップがおかしかったのです。


「可愛いパジャマですね」


「あーこれか、あずさちゃんがゲンおじ様は、顔が怖いのだから、可愛いパジャマの方が絶対いいですって、渡してくれたんだ。着ないわけにいかねーだろー」


あずさちゃん恐るべし。

と、思っていたら、ゲン一家の機動鎧のパイロットが全員降りてきました。

ケーキの模様や、子猫の模様、子犬の模様、蝶々の模様でみんな少女趣味の可愛いパジャマを着ています。少し気の毒になりました。


「みなさーん、おなかは空いていませんかー。こちらにゆで卵がありまーす。食べてくださーい」


あの人の声です。

もう助けた人の、世話をやいています。

いい人過ぎて嫌になってしまいます。


「坂本さん、私達はもう少し生きている人を探して保護しましょう」


「はい!!!」


坂本さんの声も元気です。

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?