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0037 ゾンビの洪水

「ミサは坂本さんに乗せてもらってくれ、あずさいくぞ!」


あの人は、あずさちゃんを乗せると、激豚メイルで声の方へ向います。


「あっ、何じゃこりゃーー!! あずさ、ゲンとダー、ポン、柳川、藤吉と他の木田城の手の空いているゲン一家に異世界のヨロイをつけて、剣も装備させて連れてきてくれ」


「はい」


目の前に広がるのは、膨大な数のゾンビです。

映画のゾンビの比ではありません。

洪水のようです。


「撃てーーー、弾が尽きるまで撃てーー!!」


ダダダダダダ

パン、パン、パン


「やあ、アンナメーダーマン来てくれたのか」


「あなたは?」


「やあすまん、機動戦闘鎧パイロット岩田だ。イワラーと呼んでくれ」


イワラーさんは、オリハルコンブレードでゾンビを焼き払いながら、和田倉門を死守しています。

バリアがここだけ開放されていて、他の兵士も銃撃をしてゾンビの侵入から死守しています。

ゾンビ達は、頭を吹き飛ばされてもなお、止まることがありません。

形勢がどんどん悪くなっています。


「ぎゃああああーーーー!!!!」


至る所から防衛線を突破されて、悲鳴が聞こえます。


「坂本さん、バリアを張ってほしい」


「はい」


「ミサは、逃げ遅れている兵士を、バリアの中にテレポートさせてくれ」


「わかったわ」


「岩田さん、寺倉さんに連絡をして、バリアを完全に閉じてもらうように頼んでくれ! 外の兵士は、坂本さんのバリアで守る」


「わかりました」


「よう! 兄弟遅くなった」


ゲンさんと、他の機動鎧のメンバーが到着しました。

はやい!!


「ゲン助かった。すぐにこのまわりのゾンビを蹴散らしてくれ」


「おう! わかった!! やろーども展開しろ、行くぞーー!!!!」


「おおおおおおーーーーー!!!」


ゲンさんが言うと、他のメンバーが気合いを入れました。

なんだか、ゾクゾクするほどかっこいいです。


ゲンさんをはじめとする機動鎧のメンバーが、真っ赤なオリハルコンブレードを前にかまえ、ゾンビの中に姿を消しました。

次の瞬間、紅い炎が上がりゾンビの姿が焼け落ちます。

あたりに、ゾンビのいない空間が広がっていきます。


「藤吉! バリアを坂本さんと変わってくれ」


藤吉さんの乗っている鎧は、ミスリル製で、バリアとしての性能は、坂本さんの鎧より上です。


「わかった」


藤吉さんが戻り、バリアを張りました。


「藤吉、バリアの皇居側に出入り口を開けてくれ、坂本さんはミサと一緒にゾンビの中で逃げ遅れている兵士の救出に入ってくれ」


「はい!!!」


私と藤吉さんと坂本さんの返事が重なった。

あの人はこの状況を的確に判断して指揮をしています。

なんだか、かっこいい要素は何も無いのに、少しかっこよく感じます。


「機動防御鎧が他にもあったとは」


イワラーさんが、藤吉さんの鎧を見てつぶやきました。


「ふふふ、私の所では、青い鎧は天海と呼んでいます」


私は離れた人の、心をつないでテレパシーで話しをつなぎました。


「なるほど、では紅い鎧は何と言うのですか?」


「紅いのは、天夕です」


「やあ、すごい、紅い鎧は、機動戦闘鎧、天夕。青いのは機動防御鎧、天海、ハーフの鎧は機動汎用鎧、天紫と言うところですか」


「そ、そうですね。ドンナメイルよりよっぽど良いですね!」


「なんだとーー!! ドンナメイルじゃねえ!! アンナメイルだー!!!」


あの人は怒っていますが、鎧の名前は、天海、天夕、天紫に決まったようです。


「木田さん遅くなりました」


フルプレートの中世の騎士のような紅い甲冑を着けたゲン一家の人達が到着しました。

横にあずさちゃんの姿もあります。


「皆、夜遅くにすまない」


「ふふふ、木田さん、俺たちはどうすれば良いのですか?」


「ここで、スペースを守ってもらいたい」


「わかりました。おう、おまえらー!! ゲン一家の力を見せるぞー」


「おおおおーーー!!!」


銃より、ゾンビには斬撃に炎が乗る剣での攻撃の方が有効なようです。

機動鎧が打ち漏らしたゾンビも、ゲン一家の攻撃で次々消滅していきます。


「班長! 報告があります」


「どうした」


藤吉さんのバリアに戻った兵士が、イワラーさんに報告を始めます。


「ゾンビの中に、おかしな奴が混じっています」


「なに!!」


「常人の動きじゃないものが混じっています」




「はーーーっはっはっはっはっはっ、もうばれたか。まさかこんな装備が隠されていたとはな! やるじゃねえか」


東京駅を背にして、月光に照らされた人影が笑って仁王立ちになっています。


「お前は、何者だー!!」


「俺の名かー! 俺は桜木だ! このゾンビ軍団を指揮しているお方の配下の者だー!!!」


「そうか、俺の名は、岩田だ!! 相手をしてもらおう」


イワラーさんは桜木という男の前に進み出た。


「チッ、面倒くせー!! やるならさっさとかかってこい」


桜木と言った男は、ニヤニヤ笑いながら手招きします。


「後悔するなーー!!」


イワラーさんが天夕に乗ったまま桜木に襲いかかります。


――おーい。イワラーさーん、さすがにそれは卑怯じゃ無いですかー!


イワラーさんは、さすがにブレードまでは使わず拳を出しました。


ズダーーーン


桜木は、常人では捕らえきれないような、機動戦闘鎧天夕の攻撃をよけて、そのまま天夕の小指を持ち、一回転させて、道路に叩き付けた。


「おっ!?」


天夕は道路に大の字になり。めり込んでいる。

だが、桜木はその横に、もっと巨大な窪みを見つけて驚いている。

それは、アンナメーダーマンがアイアンファングを投げた時に出来た、巨大な窪みでした。


「くそーー!!」


イワラーさんが、ゆっくり立ち上がります。


「ひゅーータフだねー!! 試合再開といきますか?」


「いや、やめておこう。俺ではあんたの速さに対応できないようだ。アンナメーダーマン!! あとは頼む」


「はあぁぁーーーーーっ!」


うわーーっ。

心の底から嫌がっている声が聞こえます。


「ぎゃあーはっはっはっ」


ゲン一家が爆笑しています。


「まいるなーー」


そう言いながら、あの人は激豚メイルのハッチを開けてのそのそ出て来ます。

ハッチから出る時、ジャージからパンツが顔を出して、激豚が顔を出しています。


――いやいや、あんたはそのまま降りないで黒いかっこいい鎧のまま戦えば良いのに


全員が心で思っています。

桜木の前に、醜い太っちょのフルフェイスのヘルメットをかぶったおっさんがでてきました。


「あんた、今のを見ていなかったのか、俺は強いぞ!! 降りてしまって大丈夫なのか?」


桜木って、いい人なのかな。

本気で心配しています。


――はーーっ、アンナメーダーマンかっこいいーー!!


私の頭に大音量で響くのは、あずさちゃんですね。

あずさちゃんには、どう見えているんだか。この激豚は?

困ったもんです。

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