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第二十五話 地球滅亡まであと一ヶ月半

「ねえ、見たいでしょ」


「う、うむ。それが本当なら見て見たい!」


「じゃーーん! ミスリルソードー!」


「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!! すげーー!!」


青白く輝く剣を出した。剣には美しい装飾が施され、最高級品に見える。

そして俺に、持ってみろとさしだした。


あずさは、生前の記憶は少ししか戻っていないようだが、生前収納した物は、全部自由に出し入れ出来るようになったらしい。

俺の右手は隕石を覆う為、自由にならないので左手で剣を受け取った。


「すごいなー。軽いし、何か不思議な力を感じる」


「他にもオリハルコンや、アダマンタイトの剣や鎧もあるわ」


「すごいな、まるでファンタジーだ」


「じゃーーん!!」


あずさは嬉しそうに机の上に重箱を二つと箸を出した。


「それも、異世界の物なのか」


「えへへ、そうよ」


言いながらあずさは最高の笑顔になった。

ミスリルソードを収納すると、俺にも椅子に座る様に催促した。

そして、あずさはとても嬉しそうに重箱の蓋を開けた。


「うな重なのか! うそだろー、異世界にもうな重があるのか!!」


意外すぎて驚いた。

どんな、異世界だよーと思ったが、異世界には日本に似た国が大抵ある。そういう事かと納得した。


「おいひいーー!! 私が世界で一番好きな食べ物!!」


あずさは口一杯頬張って涙ぐんでいる。

十歳の誕生日に、涙したのはこういうことかと納得した。

異世界のうな重のウナギは、とても肉厚で少し大きい様に感じた。

俺も口に運んだ。


「うめーーー!!!」


肉厚なウナギの身から、ジュウシーな脂があふれ出て、口の中がギトギトになった。

いかーん、滅茶苦茶うまいのに、うまそうに表現出来ねーー。

あずさが、箸を止めて俺の顔を見つめている。

そして、俺の表情を見て満足そうに笑いだした。


「まあ、まあ、こんなにこぼして」


俺はなれない左手で食べている為、少し、ほんの少しだけご飯をこぼした。

あずさはこぼしたご飯を、一粒ずつ自分の口に運び食べた。

お母さんかよーー!!


「もったいないことは、いけません」


俺とあずさの声が合わさった。


「ふふふふ」


二人で笑い合った。


「はやく地球に帰りたいな」


「えっ!? うん。帰りたいわ」


なんだか、変な間があったがまあいいか。


「なあ、あずさ。もし、これを小説にしたらどんな題名になるかな」


「とうさんはどう思うの」


「俺かー。俺ならそうだなー。アラフォーおじさん、超絶美少女と異世界アイテムでスローライフかな」


「却下です。私は超絶美少女ではありません」


「じゃあ、あずさは何がいいんだよー!」


「ふふふ。アンナメーダーマン! 一択です」


「あははは。そんな題名では、カクヨムやなろうでは誰も読んでくれないぞ」


「それでもいいのです。アンナメーダーマンが一番かっこいいのです」


あずさは時々よくわからない。

俺みたいなデブで不細工をつかまえて、かっこいいと言うし、完璧美少女のくせにそうじゃないと言う。

アンナメーダーマンは絶対ダメだろう。

でも、あずさの為にこの物語は、アンナメーダーマンにするかな。


「私もアンナメーダーマンに一票」


「ミサ! おまえもかー!!」


「いつまでやってんの、このばか親子、後ろで待っているこっちの身にもなってよね。早くうな重を二十九個出してちょうだい。箸は私の分一ぜんだけ、あとはスプーンでお願い」


あずさは、アンナメーダーマンに賛成してもらったためか、ご機嫌でうな重を出した。

ミサは、うな重が二十九個出ると、すかさず持って消えた。

なんだか地球のスーパー超能力者達が、あずさに餌付けされているような気がする。


「あれ、ミサの奴あわてすぎて、一個忘れたぞ」


「違います。これは、私のお替わりです」


そういうと、あずさはうまそうにお替わりのうな重をぺろりと平らげた。






――地球滅亡まで、あと一ヶ月半!


ここまで来ると地平線の少し上に、小さい青い星がよく見える様になった。

地球からはこの隕石は蜂蜜色に見えているのだろうか。

ほぼ、隕石の全球を俺の中の蜂蜜さんが包み込んでいる。


「くそーーー!! ここまでなのかーー!!!」


俺は、大声で叫んだ。

ほぼ包めたのに、あと数メートル足りないのだ。


「どうしたの、とうさん?」


「ふふっ、隠してもしょうが無い正直に言う、あと少しが足りない」


「えっ」


「ギリギリだとは思っていたけど、まさか足りないとは」


「た、大変じゃないの」


ミサが驚いている。

おまえ、またここに来ていたのかよー。


「方法はないのですか?」


あずさが心配そうに聞いて来た。


「あずさ、聞いてくれ。方法はある。でも、それは、俺の存在が無くなるという事なんだ」


「どういうこと?」


ミサが聞いて来た。

あずさはもう感づいているのか、表情が見る見る曇っていく。


「俺自身を、蜂蜜さんに取り込んでもらえば、俺の分の体積が増える。それで、この隕石を包み込めるはずだ」


「じゃあ、早くやりなさいよね!」

「だめーーーっ!!!!」


ミサは薄情な奴だ。それが何を意味するのか考えもしない様だ。

ミサが言うのと同時にあずさが悲痛な叫び声を上げた。


「えっ!?」


あずさの叫びを聞いて、ミサが驚いている。


「さすがは、あずさだ。もう気が付いたんだね」


「な、なによ。何があるのか説明しなさいよね!」


ミサはまだピンと来ていない様だった。

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