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第二十一話 絶世の美少女メイドの出来上がり

「見ろ! 柳川!」


俺は、今の下着はここまでいっているのかと驚いた。


「すごいですね。前も後ろも横も紐です」


「う、うむ」


その言葉を聞いて、店員が興味を持ったのか、俺たちの視線の先を見た。


「わあっ! みっちゃーん! 駄目でしょ梱包用の紐、また置きっぱなしにしてーー!!」


だめですよ、みっちゃん! おじさん達は、はいている、ふーじこちゃーんみたいな女の人を想像してしまいますからね。


「お待たせしましたーー」


四つの紙袋を渡された。

紙袋の中には高そうなセンスの良い箱が入っている。

この中にあの服が入っている様だ。

あずさは四つの紙袋を受け取ると嬉しそうにしている。


「ここには良いパンツはない。別の店にしよう」


「うん」


俺とあずさは、会計を済ませた柳川と店を出た。


「収納」


店を出るとあずさは、そう言った。


「えええっ!?」


俺と柳川は声をそろえて驚いた。

手に持っていた紙袋が四つとも消えてしまったのだ。


「あっ、ごめんなさい。お店の中だと店員さんを驚かせてしまうから、お店を出てから使いました」


いやいや、「なんでここで」って言う驚きではなくて、「そ、そんな事が出来るのー」的な驚きです。


「そ、それは、魔法なのか?」


「そうよ。この程度の魔法は楽々使えます。なんといっても魔王城のメイドですから」


来ました。あのアニメでおなじみの、シーンです。

冒険者達が驚く奴。

毎回冒険者が驚くから、いい加減飽きていましたが、目の前でやられるとやっぱり驚きますね。これは。

いつもアニメで見ているくせに、驚いてしまうとは。なさけない。


「すげーー!!」


柳川も驚いているようだ。


「あのー、服の下は水着ではまずいですか。それなら見られても安心です」


「なるほど、あずさは頭が良い、柳川行くぞ!」


「はい」


あずさが自分から言ってくれた。

これであずさの水着ショウの始まりだ。


「いらっしゃいませ」


柳川はいろんな店を知っているようだ。

水着が一杯売っている店に案内してくれた。


「ま、まずは、ス、スクール水着だな」


俺は趣味を全開してしまった。

二人はドン引きしている。

柳川の裏切り者めー。

あずさは嬉しそうに店内を歩いている。


白い水着の前で止った。


そういえば、白い水着のグラビアは週刊少年チャンピオンが発祥とか。

当時の編集長が、下着みたいなの着けさせて、水着って言っときゃあ良いだろうといって載せたのが始まりとか。


その水着にはフリフリのスカートが付いていて、その下のお尻のところに、あろうことか水色のスライムが付いている。

しかも、キャラクター商品なのか、隣の同じような無地の水着の倍の値段だ。

あずさは、すかさず柳川の顔を見た。


「ふふふ、値段は気にしないで下さい。なんと言っても地球を救ってもらうのですから」


いいなあ、お金持ちは、俺なら安い方にしなさいと言うところだ。

あずさは試着する様なので、俺は店内の男物コーナーをブラブラした。

キモオタの俺が女性物の水着コーナーにいると他の女性の視線が痛い。

そこで俺は一つの商品に目が釘付けになった。


黒のトランクスで尻にでかでかと「激豚」と書いてある。

黄色の縁取りで、赤字で書いてある。赤字は良く見ると小さな豚で描かれている。少し離れるとただの赤字に見える仕組みだ。

しかも、4L、絶対着る事が出来るはずだ。

それをかごに入れて戻ると、あろうことか試着は終っていた。


「すみません、この水着って一枚しかありませんか」


あずさが店員に聞いている。


「本当ですねえ。さっきまで一杯あったはずですが、確認して見ます」


店員は奥に消えた。


「みっちゃーん。この商品だけど、他になかったっけ?」


この店もみっちゃんかよ。


「ああ、店長、そこにありますよ。売れないから明日から半額セールをする。値札を貼り替えといて、って、店長が言ったんですよ。一枚だけあったのなら取り忘れですよ」


「そ、そう」


ああ、店長ー、全部聞こえていますよ。


「柳川、明日から半額セールだって、明日また来るか」


「気にしませんよ。一日でも早く行ってもらわないと」


「そうか、ついでにこれも頼む」


さりげなく、俺の分も頼んでみた。

柳川は一目見ると、笑っている。

うーーん、笑う要素あるかー?


「奥に何着かあります。どう致しますか」


半額の事は言わない様だ。


「四枚いただきます」


柳川は即答だ。


「あの一枚は、今、着てもいいですか」


「あ、はい、かまいません」


あずさは一枚持って、試着室にもどった。

柳川は会計に行き、あずさが試着なので、試着室の前で待つ事にした。


「なーーっ! 柳川ーー!!」


俺は会計中にも拘わらず柳川を大声で呼んだ。

目の前のハンガーに、プレゼント用のリボンの様な、スケスケの水着があったのだ。


「ななな、何ですかこれは」


駆けつけた柳川も驚いている。


「丸見えだよなー」


「そうですねー」


「これは有りなのか」


「す、すみません」


店長が来て謝る。


「えっ!?」


俺と柳川が何のことかわからずキョトンとする。


「みっちゃーん、プレゼント用のリボンこんな所にかけっぱなしになっているわ。片付けてーー!!」


おーーい、みっちゃーん。頼むよ本当に。

おじさんは、ふーじこちゃーんみたいな女の人が、着ているところを想像しちゃったよ。

しかも、増山さんの声で「うっふーん」とか聞こえちゃったよ。


柳川の目を見ると、なんだか金髪の外人女優の姿が見える。

これだから、インテリとは気が合わねーんだ。


「とうさん、柳川さん、どお?」


あずさは水着の上にさっき買ったメイド服を着ている。

くるっと回ると、白い水着と、水色のスライムが顔をだした。

さ、最高かよ。


「ま、まあまあ、普通だな」


俺は父の威厳を保つ為、そう言った。


「そうですね」


柳川も同調した。


あずさは少し頬をふくらまし、つまらなそうにした。

いや、あずさよ。柳川の目を良く見ろ、人殺しの様な鋭く吊り上がった目の瞳の奥に、でっかいハートマークが浮かんでいるぞ。


この後、赤いパンプスと可愛いリボンの付いた白い長い手袋を買って、美容院で髪にウエーブをかけてもらった。


うむ、こうしてみると、あずさは絶世の美少女コスプレーヤーだ。

何かのアニメの、登場人物のようだ。

すれ違う人が男女問わず振り返りため息をつく。

なんだか、俺が褒められている様で鼻が高い。

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