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第十八話 木田城

中華料理の食事会から、半年が過ぎた。

柳川は、あずさの誕生日の後に話した、とりとめの無い話を、どんどん現実にしてくれる。

そして、その中の一つ木田産業の本社ビルが竣工した。

元々の廃棄物処理場の敷地に、学校の体育館ほどもある建物が、地下一階、地上五階で建った。


五階が社長室で、俺とあずさが居候する。

一階は高い天井の倉庫で今はがらんどうだ。

二階、三階が事務所、四階は会議室と宿直施設になっている。

地下は屋根にびっしり付けた太陽光発電の蓄電システムになっている。


「でかいなー」


「ここから、始まりますよー。木田の野望の始まりです」


それを言うなら柳川の野望だろうと思った。

赤字覚悟の養鶏所部門と、それを販売する木田ショッピングセンターが完成している。

木田ショッピングセンターでは、目玉商品の玉子一パックを百円で販売する。


その他の商品も他店より一円でも安くすることにした。

どこかの電気屋の商法だ。

なぜか意外と利益が出ている。

柳川は、スクラップ場も自前ではじめ、廃棄物処理場も数カ所買収して、事業の拡大をしている。


それ以外にも太陽光発電や、農家と契約して農産物の直売を目指している。

さらに、俺の考えていた、期限切れ間近の商品の販売を、つぶれたコンビニを利用して始めた。

その商品を大量に仕入れる為巨大な倉庫も二つ借りた。

自前でも現在作っている。

売れ残れば産業廃棄物にすれば良いので、そこそこ利益が出る様だ。


売り上げは、社員に還元し、役員も従業員と大差なくした。

嫌ならやめてもらうスタンスだ。

そのため、従業員の給料は他社より高い。


そのため、○×市は経済がうるおってきた。

それはそうだ、社長や役員が独り占めしては経済が回らない。

何億ももらった給料は、何に使っているのでしょうか。

貯金や、投資でしょうか。消費税すら発生しませんよね。

木田産業は、利益を全て社員の給料に還元しています。

とは言っても元々赤字部門を抱えているので、低所得ではありますが。


低所得者は、元々足りない収入でやりくりしていますので、少し給料が増えたぐらいなら、シュッと使ってしまいます。

○×市は、税収が大幅に増えたそうです。特に消費税による収入が。


街の人は、次々増える木田の看板に驚いています。

木田クリーニングという店が出来ると、「クリーニング屋まではじめたのか」と言っていますが、そこは、ぜんせん関係ありませんよ。

たまたま名字が同じなだけで縁もゆかりもありません。


○×市を、市民は木田市などと呼び始めました。

本社ビルは、木田市から山の方を見るとどこからでも、最初の山の中腹にあるのが見えます。

真っ白で、目立つ本社ビルを市民は木田城などと呼び始めています。

俺はまだその事を知りませんでした。

もし知っていたら絶対「やめてください」と言っているはずなのに。


そんな木田産業の絶頂期に、SNSに恐ろしい内部告発が発表されました。

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