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第27話

 俺が冒険者になってから早くも一週間が経過していた。

以前から申し込んでいた武器の研ぎ方を習い、仕上げ研ぎを依頼した時、店長にこう言われた。


「前回に比べ技術が上がってはいるが、未だ素人に毛が生えた程度だ。少々『力』任せに斬っている所があるから、刀の換え時が早くなる。

このまま剛の剣で行くつもりなら、より肉厚な刀にするべきだ。

 俺からのアドバイスとしては、剛の剣を極めるにしても、技術って奴は習得して無駄になることは無い。

剣術の道場にでも、通う事をオススメする。」 ――――と。


 『ステータス』が上がれば、その分高い技術を求められる事になる。

『力』『技巧』のステータスも『C』と上がっているので、既に初心者向けの武器が合わなくなり始めている、と言う事だろう。


 戦って経験積んで、レベルやステータスを上げて、報酬で武器を買う。か……まるでRPGみたいだ。装備に要求されるステータスがあるタイプのゲームじゃないだけ、マシって感じかな……

 それに、習得したばかりの新魔法【皇武神の加護ディバイン・ブレス】の『性質の強化』により、刀の場合折れず、曲がらず、良く斬れると言う性質が強化されるので、多少は技術が底上げされたも同然だ。


 ――――と言っても、本格的に剣術を学ぶ時が来てしまったようだ。

 刀を買い買えるにしても、次は何百万のを買う事になるのか……それを考えるだけで今から戦々恐々と言った気持ちだ。

 俺はベットに転がりながら、スマホで武器のカタログを見る。


「ステータスオープン」



――――――――――――――――――

加藤光太郎

Lv.1

 力:C → B

耐久:E → D

技巧:C → B

敏捷:D → C 

魔力:I → G

幸運:I


《魔法》


皇武神の加護ディバイン・ブレス

・『南無八幡大菩薩』

・詠唱する事で金属に『鏖殺おうさつ』の特権を与える。

・『性質の強化』と、呪いカースに分類される頭を割るような激痛を相手に与える。


《スキル》 


【禍転じて福と為す】

・障害を打ち破った場合、相応の報酬が与えられる。

・障害が与えられる。また全てのモンスターの戦闘能力が上昇する。

・モンスターの落とすアイテムの質が良くなる。またステータス幸運を表示する。

――――――――――――――――――



「おおお! すっごく上がってる^ω^

武装コボルドの輸送分隊?、結構強かったもんなぁ~

しっかし発展ステ:『幸運』が伸びない。  やっぱりダンジョン外で何かやっても(ソシャゲガチャしただけ だけど)、あんまステータスって伸びないもんだなぁ……」


 『魔力』がいい感じに伸びているのは、恐らく《魔法》を試した時に結構使ったからだろう。


「まぁ、『ステータス』を公開してる人なんてあんまりいないからなぁ……自分の成長が早いのか? 遅いのかなんて全然分からないし、成長してる実感もないし、まぁ解らないのはどうしようもないし……

久しぶりに息抜きでゲームでもしてみるか!」


 俺はPCの電源を入れ、今人気のある F P S ファーストパーソンシューティングゲームThe Pinnacleピナクル ofオブ Heroesヒーローズ~英雄たちの頂点~】をSTEMEから起動する。


 手元にあるのは、キーボードとマウスそれに、PZ4と言うハードのコントローラーだ。

 このゲームの人気は最初は地味な物だった。アメリカのゲームメーカーが開発運営しているのだが、サービス開始初期はこの日本ぐらいでしか有名な動画配信者やストリーマー、プロゲーマーのプレイヤーはおらず。


 ハズレタイトルなんて呼ばれても居た。

 ゲームシステムは単純で、3人一組でチームを組み、全20チームが同じフィールドに降下して、フィールド上で武器やアイテムを拾うバトルロイヤル方式。


 プレイヤーは”ヒーローズ”と呼ばれるアバターを選択し、スキルと強力な必殺技UOTウルトを駆使しながら戦闘を繰り広げていく。


 プレイヤーは前半と後半に分かれた。約2か月に渡るシーズンの中でレート戦に挑み、生存順位や敵のキル、味方がキルした時のアシストポイントを元に得られるランクポイントを蓄積することで、ルーキーⅣから始まるランクTier《ティアー》を上げる。


 階級ティアーは上に行けば行くほど猛者が集まるため、次第にランクポイントが盛れなくなっていく……と言うゲーム性だ。

 このゲームはスタイリッシュさを優先しているので、往々にしてリアリティからかけ離れる事がある。


 ゲームは終盤3部隊で、全部隊の生存者人数?人……これは生存者数が一桁になっているという事を意味している。最低で各部隊生存者1名、最悪の場合俺以外が部隊3名生存のフルパと言う状況だ。


 そんな事を考えていると、

 ドドドドドドドドド――――と突撃銃アサルトライフルのドラムロールのような射撃音がヘッドホンか聞こえる。


「やっべ!」


 俺は視点を左右に振る前に、『ジャンプ+しゃがみ+行きたい方向の移動キーの入力』をして、射線を切れるコンテナの方へ移動する。


 しゃがむ事で、被弾面積ヒットボックスが小さくなると言う利点があるからだ。

 数発が命中し、アーマーを削る。

 その値は2割と言った所だろうか……


「くっ!」


 だがしかし、弾丸が命中した事で敵のいる方向が大雑把ながら表示される。

 北東で銃声と着弾までの時間からすると、ホライズンラインARアサルトライフルによる約50メートル以内からの射撃かな? 


 射撃してきたヒーローズが分からないので一瞬で、距離を詰められる可能性を考えて、シールドゲージを一つだけ回復するアーマーセルをドアに背を預けながら使用する。

 回復を巻ききったところで、敵がドア前に現れる。


 このゲームでドアを開ける方法は二つある。

一つは普通に開ける事、二つ目は格闘、射撃、投擲物、ヒーローズの能力の何れかを用いて破壊することである。


 敵が取った選択肢は――――

 二つ目の破壊だ。

 格闘蹴りを一発入れると、ドアにヒビが入り後一発でけ破れる状態になるのだが……


 格闘モーションに入ったところで、星状拡散ショットガン、ユナイテッドキーパーを構え、胴体と頭を捉え射撃する。


 ドン!


 五芒星状大字に拡散したショットガンの一撃は、芯を捉えていたため相手のシールドを一射で割り、後一発当てれば勝てるところまで体力を削る事に成功した。


「よし!」


 相手の返しの射撃をドアを閉めながら、『壁に格闘蹴り+ジャンプ+しゃがみ+行きたい方向の移動キーの入力』をし、被弾面積ヒットボックスを小さくして大半の弾丸をかわす。


(今までこんなに動けなかったのに……ゲームが上手くなっている? 

これって、もしかしてステータスのせい?)


 どうやらその予想は当たっているようで、今までよりも精密な入力と狙いを定めるAIMエイム技術:(動体視力や反射神経、戦闘時における思考力と言った身体能力)が大幅に上昇しているためか、昔は出来なかった1v3と言う圧倒的不利な場面でも、真正面から戦わない事で勝利する事が出来た。


「……ステータスってチートですか?」

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