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第21話

 今日もダンジョン、明日もダンジョンの予定也

今までの夏休みと一変した今年、昨年までの反省を踏まえ計画的に活動。

で、現在課題の進捗30%とかなり順調♡


ペース良く進めている俺、マジリスペクト。

 生活習慣の改善も順調で(数日しか経ってないが)、朝のジョギングの爽快さのまま、駅前地下駐輪場にバイクを停める。 時刻は朝8時。


「強ゴブリン改め、武器持ちホブ・ゴブなら割と難なく倒せるぐらいにはなったし、今日はもう少し奥行って、コボルトでも倒しに行くか……」


 いつも通りの入口混雑に辟易しながら、それを尻目に小走りに抜ける。

左周りに入ると途端、人とのすれ違いが無くなる。


「狩場として結構おいしいのに、どうして皆来ないんだろう?」


  まぁ、探索者ヒトが増えると、効率下がるから良いんだけどさ……

経験値と小銭稼ぎを兼ね、ダンジョンバットやゴブリンを片手間に斬る。


「ホント苦戦しなくなったなぁ……」


 剣を振うだけで、物言わぬ肉塊になったモンスターから、魔石を剥ぎとり先に進んでいく。

 一昨日コボルトを倒した辺りに来ると、短剣やショートソードなどの様々な武器と、オマケに盾で武装を固めたコボルトが5匹いた。

 距離はまだ数十メートル以上開いているものの、威圧を感じる。


「やっべ……コレぜったい怒ってるわ……前回の宝箱の物資が物凄く重要だったんだろうな……」


 こんな完全武装の集団に、真向から勝負を挑むなんて無理、無茶以外の何物でもないのだが、これが《スキル》【禍転じて福と為す】の与える障碍しょうがいと言うものなのだろう。

 大きな幸福のためにはその前後に困難がある……か……


全く、実に分かりやすくて良い効果・・・・だよ。

 俺には【禍転じて福と為す】以外、逆境を覆すスキルはない。

せめて《魔法》スキルでもあればなぁ。


 武装コボルト団は、前衛2・中衛1・後衛2と、まるでサイコロの五の目のようなバランスの良い配置で、予定された襲撃に備えるかのように、注意深固まりその歩みを進めている。

 便宜上、前衛や後衛と言ったが、中衛のコボルト以外は皆、近接盾持ち装備で、かなりの練度に見受けられる。


「昨日のコボルト達は精々警備員ガードって所か、今回の奴らはまるで軍隊アーミーだな……」


 あの様子だと奇襲は難しいな……


「うーん……あ、これ使えるかも……」


 俺はやり込んだライセンス過去問の中の一つに、その光明を見出す。

 モンスターは基本、他のモンスターを襲わない。

しかし幾つかの例外があり、例えば亜人型モンスターと動物型モンスター

は、その例外事例が報告されていると言う物だった。


 そして偶然にも、事例が報告されているモンスターをここで見ている。

俺は直ぐにを探すべく、踵を返し坑道を戻る。

やや上を意識しながら、窪みや亀裂に目を走らせ、時々遭遇するスライムやホブ・ゴブリンを切裂く。それが地味にうざい。


「探すと居ないんだからぁぁあああああっ!」


 これも《スキル》【禍転じて福と為す】の障碍しょうがいの影響なのか?

 そんな事を考えながらオニキリカスタムを振う。


「居た!」


 天上のわずかなくぼみ。

 その岩肌に紛れるように、一匹のダンジョンバットが震えていた。

 俺は即座にダンジョンバットの四肢を斬り落とし、達磨になったくだんのモンスターを捕らえると、ウエストポーチから取り出した包帯で、即座に口を塞いだ。


「――――っ!」


 声にならない声を発しようとしてもがいているものの、脚も翼もないダンジョンバットは、身体をエビのように曲げたり、触覚を動かす事しか出来ない。


「よし! ダンジョンバットを捕まえる事が出来た。

あとはコイツを武装コボルト団に投げ、人為的にモンスターを押し付けるモンスタープレイヤーキラー M P K ならぬモンスターモンスターキラー M M K (造語)を行うのが、今回の作戦だ」


 捕らえたダンジョンバットを片手に、さっきの武装コボルト団へ戻る……


「見つけた!」


 前衛の武装コボルト二匹は、直ぐに反応出来ない。

チャンスとばかり、『力:D』まで強化されたステータスを頼りに、包帯を利用し、ハンマー投げの要領で投擲とうてきする。


「うりゃぁぁぁあああああああああああああああああああ!!」 


「――――ッ!!」


 投擲された重量物ダンジョンバットは放物線を描き、人間に聞こえない超音波をまき散らしながら、軍団近くに落下する。


「よし! 何とか届いた!!」


 耳を塞ぐようなコボルド共の姿から、かなりの音量の超音波だったのだろうと推測される。これでダンジョンバットは仲間の危機を察知し、群れとなって押し寄せる……ハズだ。


「お前らにとっては、大した敵にはならないだろうがよォ!! 五十匹を超えるダンジョンバットの群れなら、お前らの体力を削るぐらいは出来るだろうなぁ!!」


 僅かな時間で異常から立ち直ったコボルトの内、一匹が質量を持った音響爆弾ダンジョンバットに近づくと、ブロードソードが鞘から閃いた。

次の瞬間、泣き喚くダンジョンバットの息の根はあっさり止まった。

 あわや、作戦失敗か……そう思った時、微かに聞こえるバサバサと言う羽音が聞こえた。


(来る!)


 俺はすぐ、壁の窪みに身体を入れ、押し寄せるダンジョンバットの群れをやり過ごす。


「ほら行けぇぇええええええ!!  ダンジョンバットぉぉおおおおおお!! コボルト共を攻撃しろぉぉおおおおおおっ!!」


 群れとなったダンジョンバットの群れは、武装したコボルト達に襲いかかる。

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