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第20話

 俺はヘロヘロになりながら家に帰ると、自室でステータスを更新した。




――――――――――――――――――

加藤光太郎

Lv.1

 力:F → D

耐久:G → F

技巧:F → D

敏捷:G → F

魔力:I

幸運:I

《魔法》

《スキル》 

【禍転じて福と為す】

・障碍を打ち破った場合、相応の報酬が与えられ、獲得する経験が上昇する。

・障碍が与えられる。また全てのモンスターの戦闘能力が上昇する。

・モンスターの落とすアイテムの質が良くなる。またステータス幸運を表示する。


――――――――――――――――――




「おっ! 『力』と『技巧』の値が2段階も伸びてる! 

ここ最近包丁研いだり、一日100体斬りしたりしてたからかな?

妹の為の編みぐるみ作成も、もしかして有効? 

筋トレにランニングも始めたから、体重も減って来たし良い事尽くめだな!!」


 『ステータス』はその名前に応じた行動をとる事で上昇する、という事が世界の追跡データで確認されている。

現在、基本5項目で上昇方法が分かっていないのは『魔力』のみ。

他に稀ではあるが、項目として追加されることがある。


そう! 俺の場合だと、スキル【禍転じて福と為す】の効果で現れた、『幸運』がこれに当り、発展ステータスと呼ばれるレアケースなのだ。

 『幸運』が名前の通りのモノなら、ギャンブルでもやれば上昇するんだけど、俺の年齢だとパチンコも競馬も競輪もボートレースも出来ない。


 先ず上昇する行為が、勝つ事なのか? 負ける事なのか? やるだけでいいのか? と言う問題もある。

 取りあえずは、スマホゲーのガチャでも回して様子を見よう。


「今日はYourTubeでも見て、他の冒険者の動きでも勉強しようかな……」


 俺は一番上に出て来た動画を開いた。

どうやら関東にあるダンジョンに潜っているようで、ダンジョンの造り自体は異なるものの、出現モンスターに違いは無いようだ。

 説明しながら、ビキニアーマーの冒険者は奥へと進んでいく……


『あ、見つけましたアレがゴブリンです』


 そう言って彼女が指さしたのは、小さな刃物を持つゴブリンだった……。

……画面越しだからなのか?。

彼女の説明は続く…


『ゴブリンは、正式なものではありませんが幾つか種類が居ます。

普通ノーマルのor立派ホブな+種族名ゴブリン+手持ち装備名で、名付けられています。

 ほぼRPGゲームと同じと、考えていただければOKてす。

戦士タイプを ”ウォーリアー” 、軽装タイプを ”スカウト”といった感じですね。

今あそこに居るのは、ゴブリンスカウトですね。

では、戦ってみます!』


視点が変り戦闘シーン……

 動画の中、ビキニアーマーさんはブロードソードを振い、ゴブリンと斬り結んでいる。 が……


「おいおい、嘘だろ……」


 俺は驚きと戸惑いを隠せていなかった。

 目に映るビキニアーマーさんと、ゴブリンの戦いが遅すぎる鈍いからだ。

俺ならば、横腹目掛けて剣を振っている『隙あり!』と言いたくなる場面でも、ビキニアーマーさんは、追撃をせず剣を構え直したりしている。


 確かにビキニと言うあからさまな映え重視視聴者に媚びるの格好のせいで、動きに制限が入っているのかもしれないが、さっさと倒した方が安全だろうに……もしかしておねえさん、ステータス低いのかな?

そしてなにより、俺体験からするとあのゴブリンは弱すぎる。


『―――っ結構強かったですね。今のが少し強い武器持ちゴブリンです。基本的に、浅瀬って呼ばれるスライムエリアの、次の次のエリアから出現するから、ゴブリンだからって舐めてかかると死んじゃうので気を付けてね♡ それと恒例の私のステータスを公表します』



――――――――――――――――――

Lv.1

 力:B 

耐久:D 

技巧:F 

敏捷:G 

魔力:I 

《魔法》

《スキル》 

――――――――――――――――――



 『力』のステータスがあれだけ強くても押し返せないは、元が女性だから非力なのか動画映えのためなのか? ステータスも『敏捷』が低い事を見るに、MMOで言えば盾役が向いているのかもしれない。


『今回も全然伸びてないよぉ⤵

私も早く《魔法》とか《スキル》が欲しいな。

じゃぁ私の冒険をもっと見たいよ! 応援してるよって人は是非! 

チャンネル登録・高評価してくれると、やる気が出るのでお願いねミ☆

 あとコスプレ要望は、下のコメント欄で受け付けてるから。

じゃぁーねーバイバイ』


 そう言うと動画は終了し、次の動画が再生される。


「もしかして、俺が今までゴブリンって思ってたのがホブ・ゴブリンで、強ゴブリンって呼んでいたのが、上位種のホブ・ゴブリンウォーリアーで、障害として立ちはだかって来たのはさらにその上位種って事か? ハハハハハ……」


 俺の口から乾いた笑いが込み上げてくる。


「『全モンスターが強化される』ってこう言う事かよ……

 ハードモードって思っていたけど、それよりも性質が悪い。

特に序盤はロクなレベル上げも出来ない状態。

適性レベル以下で一個先のモンスターやボスを倒さないといけないのか……金がない序盤は、武器も最低限。レベルも推奨以下で二番目のボスを倒すような縛りプレイを強いられるって訳か……」


 だが動画の女性が本気でやってアレなら、俺は彼女より低いステータスで彼女以上に強いという事に成る。

 『妹の薬を手に入れる』事を目標にしている俺に取っては、嬉しい誤算と思えば気持ちも少しは楽になる。

 そう自分に言い聞かせた。

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