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第18話

 そんな考察を立てながら奥へ進んでいくと……ゴブリンと犬のような顔をした毛深い小人の集団が何かを運ぶのに出くわした。

 慌てて通路の角で身体を隠しながら、注意深く様子を伺う。


初見のモンスターが交じる小集団に、俺はかなり興味を覚えた。 

 鼻が突き出しイヌ科を想起させる顔付き、灰色のふさふさとした狼のような体毛に覆われた体躯、狐のような筆型の尻尾、耳はピンと立ち、その先端は尖っている…………コボルドだ!


 見える範囲で武器の携帯はしておらず、あのチラリと見える鋭い犬歯や爪による攻撃が主な物だと推測する。

人型の魔物のゴブリンとコボルトには明確な力関係があるようだ。


2匹のコボルドが前衛で警護として左右に広く展開、中盤に大箱を持ちあったゴブリンが2、殿しんがりコボルトは指揮後衛という5匹PTに見える。

 配置は前衛にコボルトAB


 「さて、いっちょ殺りますか」と独り言。

 先ずは足音を殺して、背後への忍び寄りを試みるが、コボルトの耳目じもくを誤魔化す事は出来なかったようだ。


「ちっ! マジで犬みたいに耳と鼻がいいのか!」


今迄の作戦不意打ちが不発に終わりやや慌てたが、やるしかない!

ステータス勝負に持ち込めばあるいは……


「「「アオーン!」」」


威嚇なのか一斉に、遠吠えをしながら襲い来るコボルト共を迎え討つ。

俺は剣を構え、先に辿り着いたコボルトAを斬った。


ザシュ!


「やったぜ。」


 斬り捨てたコボルトAの血を払う間もなく、コボルドBが迫る。 

ドダッタドドタタとの独特なリズムで地面を蹴る音がルームに響く。

コボルトBに一切の怯みは見えず、一気にその間を詰め来る。


「狂戦士かよ!」


「「――――ハッ、ハッ、ハッ!!」」


息荒く四つ足で迫るその姿には、DNAに擦り込まれた狩られる者・・・・・としての記憶が呼び起こされる様で、恐怖以外何物でもない。

カチカチと鳴る奥歯を噛み締め、愛刀を握り直すと、籠手下のグローブが、手汗でぐっしょりと濡れているのが分かり、気持ち悪い。


 俺は覚悟を決めて、コボルトBを見据える。

 今だ数mの距離はあるものの、コボルドBのかぶりが少し下がり、両の手足も少し横へ広がったように感じる。


――――来る!!  ソイツと目と目が合った瞬間、直感的に理解した。

刹那。


「ガルルルルルっ!! バウ!」


 唸り声をあげ数mの距離を一瞬で詰め、コボルトBが飛掛かって来る。

 それに合わせるようにカウンターぎみに、力強く踏み込んだ。


「せやぁぁあああああああああああッ!!」


 コボルトBは形振り構わず、鋭い犬歯を見せつけけるかの様に大きな口を開け、前足の鋭い鉤爪かぎづめを振りかぶるような態勢で襲ってくる。 


  ―――― その姿まさに野獣 ――――


 跳び掛かるコボルドBの、瞳に映る俺の姿がハッキリ視える程の集中の中ゾーン 一閃。

鋭い鉤爪かぎづめが届く前に愛刀が、がら空きになった喉笛を掻き切る。


   ―――― これで二匹目 ――――


「――――!」


 喉笛を掻き切られたせいで、最後に鳴くことも出来ずにばたりと、水っぽい音を立ててコボルトが地面に落ちる。

 その音はまるでジェルでも入った縫いぐるみが落ちたような、生物からモノへ変化したような物悲しさを感じさせる。


 右下段から左上段に向け、逆袈裟斬りの様にに振り上げ威嚇、コボルトCに向け、左側で八相に構える。

 俺の動きをよく視ていたコボルトCは、限界まで飛び掛かる事を我慢し、刀の有効射程を避けている。


 恐らく俺の剣速よりも早く、飛び掛かる事が出来ると判断したのだろう。

 事実コボルトC目論見どおり、俺の剣速よりも早く俺の腹から腿に飛びつくと、鋭く黒い黒曜石のような鉤爪かぎづめを力いっぱい突き立て、思い切り噛みついた。


しかし、「――――っ!?」


「残念でした。腿も腹もプロテクターを付けてるんだよ!」


 このプロテクターは軽金属と樹脂とカーボンで出来ており、軽さと頑丈さ動きやすさを担保しているのだ。


 敵に取りついていても仕方がないと思ったのか、コボルトCは一度飛び退き今度は直立二足歩行に切り替える。

 よほどに自信があるのか、鋭い爪を見せびらかすようにして再び飛び掛かって来る。


 右手を振り上げた攻撃をかわし、剣を構えるものの絶え間なく、地面に手を叩き付けるような。大振りな攻撃を何度か仕掛けてくるものの、二足歩行とホバリングするようなモンスターとしか、戦った事の無い俺にとっては、四足歩行の方が慣れていない分、手強く感じる。

 コボルトCはまたりずに仕掛けてくる。


今だ!


 左脚を軸にして右足を左後ろにずらして叩き付け攻撃を避けると、そのまま首筋目掛けて刀を振り下ろす。


 ザシュ。


 しかし、最後っと言わんばかりに、コボルトはナイフを俺の顔に投擲とうてきし、頬骨の辺りを薄く斬る。

 グローブ越しに左手の親指の背中側で血を拭い。奴が投げたナイフを見る。


「俺のナイフを盗んでいたのか……」


 恐らく盗み出したのは、俺に取り付き歯を立てた時……あの一瞬でナイフを盗んで、俺が油断するのを狙っていたと言うのか。


 今、そのことを考えても仕方がない。逃走しているゴブリンを探さなくては……

 俺はゴブリンが逃げて行った左側の坑道を進んでいく……

 するとそう遠くない場所で、木箱を抱えたゴブリンを発見する事が出来た。


「「ゴブ!」」


 どうやら二匹仲良く逃げていたようだ。

 二匹のゴブリンは身体を震わせ怯えている。

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