ダンジョン探索三日目、割と慣れて来た気がする。
『ステータス』獲得目的で、入口付近でたむろする学生や、ある意味新社会人wの集団を横目に、ゴブリン出現エリアへと足を進める……
この
道すがらダンジョンバットやスライム、時には素手ゴブリンを撫で切りにしていく。 (研ぎ直したオニキリカスタム 最っっ高っっ!)
『技巧』が上昇したお陰か、拙いながらも刃筋を立てて斬る事が出来、苦戦する事が少なくなった。
俺は少し物音のする、やや広めのルームの中を覗く様に伺う。
物音の主はゴブリン二匹。
武装はかなりしっかり目で、手斧とショートソード。
前回の、剣鉈装備の強ゴブリンクラスと思われるものが二匹、かぁ…
一昨日より確実に成長しているとはいえ、二体同時に戦えるとは思えない。
どうも作為的な嫌がらせを感じる。 気のせいならいいんだが…。
「ようやくタイマンで、ゴブリン一匹を倒せるようになったと思ったら、強ゴブリン二匹同時とは、運の無い……」
これがスキルの言う障碍なのだろうか?
一度引き返し、槍でも手に入れてからこようかとも考えたが、そんな調子ではいつまでたっても桃華の薬は手に入らない。
俺は覚悟を決めて刀を抜く。
一匹を一撃で殺すよりも重症を与え、ペア相手に精神的ハンディキャップを負わせる方が得策だな……
ゴブリンは知能が高く連携を取ると聞いたことがあるので、ゲーム知識も生かせるかもしれない。
出来るだけ足音を立てない様に距離を詰め、上段からの一刀。
不意を突いた一刀目で、強ゴブリンAの右腕を肩から切り落とし、俺の襲撃に気が付いた強ゴブリンBの反撃を、左下方向からの逆袈裟斬りで
「ゴブ!」
ショートソードを
「ちっ!」
余計な追撃はせずに剣を中段に構える。
「流石は強ゴブリン。判断力がノーマルより鋭い……多分ノーマルなら、今の攻撃で二匹とも殺せてるイメージなんだけどなぁ~」
――――とは言っても初のペアは強ゴブリン二匹。
今ので仕留められるほど、弱い相手だとは思っていない。
「じゃぁ行くぜ?」
言葉が伝わっているハズは無いのに、俺は宣言する。
――――今からお前達を殺すと――――。
俺は剣を八相に構えたまま臆せず走り、斬りこむ。
「ゴブ!」
ショートソードを持った強ゴブリンBは、右腕を斬り落とされた強ゴブリンAに向けて何かを訴えた。
十分な速度の乗った右上からの袈裟斬りが、強ゴブリンBを襲う。
強ゴブリンBはショートソードを横に倒すようにして、俺の攻撃を受ける。
否。ショートソードの腹でオニキリカスタムの刃を
「ゴブ――――!」
刹那。
強ゴブリンBが叫んだ。
頭を振り背後を見ると、満身創痍と言った様子で、脂汗を浮かべた強ゴブリンAが手斧を全力投擲していたのだ。
(ま、不味い、避けるか防がないと!)
地面にオニキリカスタムの切っ先が当たった瞬間。
一か八かの賭けに出る事にした。
俺にはステータス『幸運』があるんだ。今までだって、ウ〇娘で一天上と少しで、完凸させたことがあるんだ!
――――と自己暗示をかけて、
当然、スイング方向に居るのは、ショートソードを不格好に構えた強ゴブリンBだ。
強ゴブリンBをボールのように飛ばして後、投げられた手斧を迎撃する事を選んだ。
最悪、昨日20万も出して買った防具がお亡くなりにはなるが、俺に当たっても激痛と打撲程度ですむだろう。
だが、腰布装備のゴブリンなら、どこに当たっても致命傷と言う訳だ。
俺の『
ぼとりと重たく水っぽい音と共に、強ゴブリンBが地面に崩れ落ちる。
「ゴブ!」
強ゴブリンAが何か鳴いたがどうでもいい。
気を抜くことなく強ゴブリンAに近づくと、一昨日同様に首を落とす。
続いて強ゴブリンBの首も念のため落として置く。
「思いのほか疲れなかったな……」
強ゴブリン二体なんてどうなるかと肝を冷やしたが、思いのほか何とかなって良かった。
「やっぱり強ゴブリンの魔石は、ノーマルよりも色味が深いな……」
解体用ナイフで心臓付近の魔石を抉り出し、道中で狩ったゴブリンの魔石と比較しながらウエストポーチに仕舞い、一応武器も回収する事にした。
「普通ではエンカウントしない強化個体が出たきがするなぁ
魔石も色濃いし、経験値も多分多いんだろうな実感はないけど。
ゲームみたいに宝箱でも落ちれば、分かりやすいんだけど……」
流石にそうはいかないようだ。
「やれやれ……苦労には見あってないな……まぁでも稼がないといけないし、張り切って行こう」
段々と通路の壁が、
入口付近のスライムエリアと壁の質感が違うな…もしかして壁でエリア分けされてる?