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第5話

 特殊地下構造体武装探索許可書 ラ イ セ ン ス を手に入れた事でダンジョンに入る事が出来るようになった俺は、地元豊橋にある通称『駅前ダンジョン』に来ていた。


 現在の時間は大体15時ほど、運転免許と同じく交付までには時間がかかるのだ。東三河では現在豊川ぐらいにしかない銀〇こで、軽い昼食を済ませ歯に青のりを付けてルンルン気分で、ダンジョンに向かったのだが……


「ですから! 今のままではダンジョンへの入場は許可できません!」


 このダンジョンは買い上げた国がJSUSAジェイスーサに経営を委託しているため、JSUSAジェイスーサの許可が下りないと、入場できないのだ。


「どうしてですか?」


 折角、学校での虐めに近い現状を思い出してまで、地元である豊橋市に戻って来たと言うのに、ダンジョンに入れないとはどういう事だろうか?


「講習、受けましたよね?」


「えぇまぁ」


 本当は受けてないです。誠にごめんなさい。

 鳥山さんがくれた過去問しか解いてないので、暗記しただけです。


「はぁ……説明しますね。ダンジョンに入る為には、安全を考慮してDランクの装備を一つ持っている事が条件になっているんです。」


 確かそんな事が書いてあった気がする。


「Dランクの装備である理由は、初心者向けのダンジョンエリアでは頭一つ抜けた性能になるので、死亡リスクが減る事にありあます。

幸い新古品と言っていいレベルの品がそこら中にあるので、比較的お安く買えますよ?」


「因みにおいくらですか?」


 ダンジョンから発見されるものは兎に角値が張る。だから、俺は警戒しているのだ。


「そうですね。私は探索者ではないので、正確ではありませんが……最安で100万円と言った所でしょうか。D級の装備がないと半年で探索者登録は抹消されますので、再度許可証から取り直しになります」


「ひゃ、100万……」


 俺は驚きはしたものの。一億の借金を背負っているのだ。今更100万程度上乗せされたところでどうということはない。と心の中の赤い彗星が呟いた。


「学生には高いとは思いますが、命の安全を買う行為だと思っていただければよろしいかと……」


「な、なるほど……」


「JSUSA認定店が近所にありますので、そちらで購入してきてください。最近では詐欺も横行していると聞いています、ですからくれぐれも

安物買いの銭失いにならない様に気を付けてください。」


「わかりました。」


 俺はすごすごとダンジョンの入り口から遠ざかり、教えて貰ったJSUSA認定店があると言う雑居ビルの方へ向かった。

 ダンジョンの周囲のテナントには、様々な冒険者向けの店やダンジョンで採集した品を扱う店が立ち並んでいて、一般人、探索者両方が集まって賑わいを見せている。


 数年前までのJR豊橋駅の東口は、駅前とは名ばかりの錆びれたシャッター商店街だったと言うのに、近隣にダンジョンが出来たお陰で、やや物騒で騒々しいが、ホテル、飲食店、銃砲、刀剣店が立ち並びかつての繁栄を取り戻していた。


 店員さん達は店の前にでて、まるで飲み屋なんかのキャッチみたいに、声を張り上げアピールしている。

 中でも一際よく通る声で、呼び込みをしている女の子に目が止まる。

地味な服装 ~恐らく武具店の制服なのだろう~ が似合っていない。


しかしその容姿と、なにより明るい雰囲気のせいで埋没せず、よくよく見ると、むしろ小物が良いアクセントとなり引き立てている。

オタクの俺には理解できない着こなし術センスがあるのだろう。


「いらっしゃいませー。

 只今、サマーセール&新人探索者応援キャンペーンを開催中です! 

よろしければお越しください」


 現物有りの商品で高価なものは、大体利益率15%から30%と言うのが俺の経験則だ。恐らく最安で買うならネットで同じ商品を買う事だろうが、それでは店員からのアドバイスと言う付加価値を得る事は出来ない。

 さらにサマーセールや新人探索者応援キャンペーンを開催していると言うのだ。最低でも定価以下の値段だ。交渉次第では、より安価に買える可能性も高い。


「一枚良いかな?」


 俺はそう言って店のチラシを受け取る。


「ありがとうございます。よろしければお買い求め下さいね ミ☆」


 そう言ってギャルっぽい女の子はニッコリと微笑んだ。


トゥンク


 こ、これが『オタクに優しいギャル』と言うネット文化か……俺にはそのけは無いと思っていたが、ここまでの破壊力とは末恐ろしい……

 俺にチラシを渡すと、同じように周囲の人にチラシを配っている。


 チラシを見てみると、特価! 〇〇万円! と赤や黄色、オレンジと言った暖色系で目立つようにまとめている。全国展開のFCフランチャイズ系の刀剣店もあると聞いているので、それに比べても随分と気合が入っている。


 そんな事を考えながら、幾つかチラシやパンフレットを見比べていると、先ほどチラシをくれたギャルっぽい女の子が話しかけて来た。


「さっきチラシ受け取ってくれましたよね? お悩みだったら、ウチのお店どうですか? 私は親の仕事手伝ってるので、正式なスタッフじゃないんですけど……新人さんのご相談ぐらいには乗れますよ?」


 そう言ってチェシャ猫のようなニヤニヤ笑いを浮かべた。

 彼女の笑顔の眩しさに心を奪われてしまった。


「これも何かの縁か……折角だからお願いするよ」


 この時たぶん俺は、同年代だと思われる美人店員さんの色香にあてられていたのだと思う。 ま、どうせ購入検討しているのだし、気分良く案内されるとしようじゃぁないか。


「はーい、ありがとうございます。 こちらになります⤴」


 そう言うとさり気なく俺の手を握って、彼女の親が経営していると言う店に案内される。

  ちょっ 距離感近っ! 勘違いし…… ホレテマウヤロ


 案内された店内は間口は狭いが中はかなり広く、武器コーナー・防具コーナーがキッチリと分けられており、奥に修理工房や研ぎ場も見える。

カー用品店のPITが見えるような妙なワクワク感がある。


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