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第56話 美少女達と就寝前の相談

「――っという意図でポンプルの同行を認めたんだ。みんなも協力頼むよ」


 就寝前の夜、テントの中で僕は女子達に思惑の包み隠さず説明する。

 僕がこの世で最も信頼できる彼女達だからだ。


 それに状況さえ落ち着けば、みんなを受け入れ家族になりたいと思っているだけに極力隠し事はなしにしていきたい。

 最近、特にそう思えるようになった。


 ちなみにポンプルは僕達とは離れた別のテントを設置してそこで休ませている。

 いくら見た目こそヒナと変わらなそうな幼い少年とはいえ、一応はアラサーのオッさんだ。

 流石に年頃の乙女達と寝床を一緒にさせるわけにはいかない。

 現に彼女達からも「それだけはやめてね……セティだけだよ」と、心配する声とお願いをされてしまった。


 女子達みんなはそれぞれの寝巻姿であり、普段の服装よりも薄着なだけに正直ドキッとして直視できない部分もある。

 よくよく考えると、そのような花園にいることを許されている僕は、世間ではハーレム満喫と言うのだろうか?


「あいわかった、セティ殿。我らも自然体で過ごすように心がけよう」


 カリナは寝袋から上半身だけ出して身を起こしている。

 鎧を纏った姫騎士姿とは異なり、薄布一枚の寝巻姿。ランタンの灯りがほんのりと彼女の豊かな胸部をくっきりと浮かび上がらせていた。

 日頃から身体を鍛えているだけあり、スタイル抜群だと思う。


「ありがとう、カリナ。みんなも助かるよ……」


「あたしもいいよぉ。でもセティ、リトルフ族は素直な性格が多いけど、盗賊になれるほどあざとい部分もあるから気を付けてね……」


 同じ妖精族として区分される、エルフ族のミーリエルは懸念している。

 華奢でスレンダーであるが、自然体の可憐さと美しさは彼女独特の魅力だと思う。

 何より人懐っこい微笑は、いつも僕に癒しを与えてくれていた。


「ああ、きっと匿ってもらう以外の何かしら目的で近づいてきたんだ思う。おそらく暗殺者アサシンを辞めたのも嘘っぱちで、僕の居場所を組織ハデスに伝える役割なのか……そんなところかな?」


「知っていて受け入れるのは、セティさんらしいですね……まぁ、あの者は見た目もああですし、暗殺者アサシンとはいえ命を奪うのには些か抵抗を感じてしまいます」


 フィアラは祈りを捧げる形で手を組み、双眸を閉じて僕に祈りを捧げてくれる。

 聖女と呼ばれているだけあり、普段では見ることのない身体の曲線美が描かれていた。

 おそらく信仰上、本来なら男性の前で見せていい姿じゃない。

 きっと僕はフィアラにとって特別な存在という意味であるわけで……。


 それに心優しい彼女のことだ。

 きっと僕がポンプルをキルするのに戸惑っていると思ってくれているんだと思う。


 実際はそんなことないけどね。

 敵であり悪であればどんな姿でも容赦なくキルする。

 そこに迷うことはない。またその必要もない。


 ――悪・即・瞬殺。


 今の僕、『死神セティ』のポリシーであり過去への贖罪だ。


「でも、セティ君。さっき話してくれた組織の最高幹部だかが襲って来る可能性もあるのよね?」


 マニーサは僕の身を安否して聞いている。

 密かに女子達の中で、彼女が最も凄い事になっていると思う。

 特に寝そべっているにもかかわらず、一切形が崩れない両胸は最早立派な連峰であり、山頂までくっきりと拝むことができた。

 流石に鈍い僕でさえ、つい見入ってしまいそうな程だ。


「ああ、『四柱地獄フォース・ヘルズ』という四名の暗殺者アサシンだ……僕は一度も会ったことはないけど、モルスから『最も扱いづらい狂人ばかりだ』と聞かされていた……どいつも険悪な仲でこれまで別々の行動を取っていたようだけど、僕の賞金首クリミナル額を上げたことで共闘するかもしれない……そういえば、モルスが言うには『自分の最大能力を四等分したような子供達』だとも話していたっけ」


「子供達ってなんあるカ?」


 パイロンも首を傾げて聞いてくる。

 彼女も薄手の寝巻姿であり、ミーリ並みの小柄なのに出ているところはしっかりと出ている。他の子に負けないくらいスタイルが抜群だ。

 露出した白肌の胸元や優美に露わにした太ももといい、神秘的な仙女であり美神ミューズのようだ。


「モルスが拾った子供を直に育て教育を施した暗殺者アサシン達だよ……僕もその一人さ。そういう意味ではボスが親のような存在だったかもしれないね」


「だからセティは強いんだネ。その『四柱地獄フォース・ヘルズ』はセティの部下じゃないのカ?」


「パイ、僕に部下はいないよ……一応、組織内じゃ右腕ポジの最高位クラスで特別枠扱いだったけどね。だからソロ活動が多かったかな……一方の『四柱地獄フォース・ヘルズ』は取り扱いが難しいことから、万一の保険として『切り札ジョーカー』的な立ち位置だったと思う」


「なるほどネ。闇九龍ガウロンと異なり、ハデスは『千の身体を持つ者サウザンド』が絶対のようネ。セティを子作りするためにも、やっぱり奴を斃すしかないヨ」


 そうなんだろうけど、パイロン……この密着している場で子作りするとか言うのやめてくれる?

 超ドキドキしてくるんですけど……。


「ああ、そうだね。そのためにも早急に『古代エルフの遺跡』に向かわないと」


 モルスの本体とする『感染源』を探し斃さなければならない。

 そして『魔剣アンサラー』を破壊すれば、ようやく僕はこの呪縛から解放されるんだ。


「ならばセティ、『四柱地獄フォース・ヘルズ』ついて連中が動きを見せているかどうか、アタシと一緒に密航してきた闇九龍ガウロンの偵察隊に調べさせてみるカ?」


「可能なのか、パイ?」


無問題モウマンタイネ。戦闘行為じゃなければ、万一勘づかれたとしても『不可侵条約』を侵したことにはならないヨ」


 不可侵条約か。

 確かそれぞれの大陸で幅を利かせる暗殺組織のボス同士取り決めた、互いの縄張りを荒さないとするルールだとか。

 前の黒龍ヘイロンも捜索くらいならノーカン扱いされていたんだ。


「……わかった、パイ。お願いするよ。くれぐれも無茶をしないようにしてくれよ」


「あい~。それじゃ、早速指示してくるヨ」


 パイロンは起き上がりテントから出て行く。

 《思念魔法》で各地に潜む部下達とコンタクトを取るそうだ。


 にしても奇妙なものだ。


 つい最近まで敵対し殺し合ってきた組織から協力を得られるなんて……。

 おまけに僕も流れで連中を気遣うような言動までしてしまった。


 ボスが代われば組織の方針も変わる。それが闇九龍ガウロンなのだろう。


 話し合いを終え、僕は寝袋の中に入り寝そべる。

 隣にはヒナがシャバゾウと同じ寝袋で一緒に寝ており、すやすやと寝息を立てている。

 最も癒され守りたくなる光景だ。


 ヒナもパイロンを仲間として迎えたことで狙われなくなったとはいえ、根本的に解決したわけじゃない。

 この子達が笑顔で暮らせる世界を僕は創っていく、それが僕の贖罪であり目標でもあるんだ。


 みんなの気持ちを受け入れ、安らかなスローライフを目指すためにも――。


 まずはモルス。

 なんとしてでも貴様を斃さなければならない。





**********



 深夜、とある国の闇市。


 薄明かりが照らされた裏路地で、漆黒のマントに身を包み体系が異なる四人組が立っていた。


 裏切り者である『死神セティ』の抹殺という目的のため、ようやく集結したハデス最高幹部『四柱地獄フォース・ヘルズ』達である。


「ボスからの知らせだよ――ポンプルが『死神』との接触に成功した。これで常に奴の居場所と行動が把握できるだろうってさぁ」


 小人妖精リトルフ族の女パシャがメンバー達に伝える。


「ポンプル? ああパシャ、貴様が可愛がっているリトルフ族の男か……《悪運》スキルを持ち、『お漏らし』というコードネームを持つとか」


「うっさいねぇ、斬月……ったくボスめ。あいつ上司の癖に『子供達』以外の部下を育てる気がゼロなのさぁ」


「お漏らしだがなんだか知らねぇが、そいつごと『死神』を殺すッ! 殺すっ、殺すっ、ぶっ殺すぅぅぅ!!!」


『ボスから通り名を与えられるなんて羨ましい。けど『お漏らし』って最悪……最悪すぎて憎い! なんて憎い! 憎いぃぃぃい! ヒッェ――』


「うるさいって言ってんだろ、ケース! それにドレイク、ポンプルに何かしたら、アンタを真っ先にブッ殺すよぉぉぉ!!!」


 ケースという謎めいた細身の女が発狂する前に、すかさずパシャが静止させる。

 同時に鋭く禍々しい殺意を好戦的なドレイクと呼ばれる巨漢の男へと向けた。


「ったく、やはりお前らとは馬が合わん。いちいち癇に障る――誰だ!?」


 最もクールで戦闘狂の斬月は何かに気づく。

 咄嗟に腕を伸ばし、その掌から眩く鋭利な何かが射出した。

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