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第12話『あれ、ゲームと一緒じゃん?』

「よし、みんなお疲れ様」


 再び進み始めた俺達は、今の戦闘を含んで二度目の戦闘に勝利した。

 相手は相も変わらずウルフの群れ。

 移動で溜まった鬱憤を晴らすかのように、俺達は積極的に先頭に立って戦闘をした。


 俺達の戦いっぷりに、他全員は呆気にとられた感じになっているが、最初の印象的に何かを疑われることがないのが不幸中の幸いと言ったところか。


「バルドさん、先に進みましょう」

「わかりました。毎回の豪快な戦闘っぷり、見ているだけですが清々しいです」

「お金をいただく仕事ですから、しっかりとこなしますよ」


 進行を再開。


 今朝、同行し始めて三日目だというのに未だ自己紹介をしていないことに気が付き、謝罪を交えながら自己紹介をした。

 悪態を吐かれても仕方がないと思っていたが、快く挨拶を交わしてくれただけではなく、バルドさんも申し訳なく思っていたようで、両者共に頭を下げ続けるというなんとも面白い状況に。

 そして、こっそりと俺達だけに支払う金額を上げさせていただきます、と言われた。

 これは主であるアルマも了承しているとのことだ。


「よーっし、ボクのレベルが4になったよっ」


 そういえば、ゲームをやっていた時のレベルアップは非常にわかりやすかった。

 だというのに、こちらの世界に来てからというものの、レベルアップしたかどうかは自分でステータスを覗かなければわからないという不便さがある。

 ゲームの時はレベルアップすると体の周りが光に覆われ、自分はもちろん他人から見ても一目瞭然だったため、みんなで「おめでとう」ってお祝いしてたっけな。


 今回の戦闘でみんなのレベルが4になった。

 そうなると、俺はどんな感じか。


――――――――――

 カナト

 レベル:6

 耐力:6

 攻力:6

 防力:6

 減力:6

 敏力:6

 速力:6

 魔力:6

 理力:6

 アクディブスキル:【ブロック】

 パッシブスキル:【】

 ユニークスキル:【】

――――――――――


 なるほどな。

 スキルポイントを割り振っただけでは獲得したスキルを確認できないが、こうしてステータスのところで見られるということか。

 こういうシステムめいたところは、ゲームそのものだ。


 早速スキルを使用したいところだが、それはみんながレベル5になったらでいいだろう。


「あ」


 俺はゲームだったら初歩中の初歩なことを思い出した。


「パーティを組んでないじゃん」

「「「「あ」」」」


 本当に当たり前のことなんだが、盲点でしかない。

 みんなのレベルは上がるし、連携も上手くできていたし、何より一緒に行動しているのだからそんな当たり前のことすら忘れてしまっていた。


「でも、どうやってパーティを組むんだい?」

「それは、簡単だよ。アンナ、パーティを組みたいって思いながら握手しましょ」

「え? わかったわ――これで終わりなの?」


 アケミとアンナは一瞬だけ足を止めて握手を交わす。

 そしてすぐにこちらへ合流。


「そうそう、そして左斜め上ら辺に視線だけを動かしてみて」

「――ほー、これは画期的ね」

「だよねー。ゲームの時は、クリックして申請して承認されるのを待って、とか過程があったからね」

「なるほどね。そして、なるほどね。アケミがなんで知ってるのかと思ったら、既にお試し済みってことだったのね」

「まあ、ね」


 あの様子を見ると、ゲーム的な仕様であるがそれも少しだけ違うらしい。

 というのも、ゲームの時はパーティリーダーが勧誘権限をパーティメンバーに付与させない限り、誰であってもパーティに加わることができなかった。

 だが、アケミとアンナのやり取りを見る感じ、そうする必要性がないのだろう。

 そもそも権限の付与なんてどうやるかすらわからないし、メンバー一覧を見れば、アンナの名前が表記されている。


「じゃあじゃあカナトーっ、よっろしくーっ!」

「おう」


 歩く位置的には左端で一番遠めのミサヤが俺の腕に飛びついてきた。

 握手しなければならないと思っていたのだが、なんだかあっさり追加できてしまったんだが……ミサヤ越しに見る左側から注がれる、武器よりも鋭利な視線が俺を襲う。


「いや、俺は悪くないだろ」


 なぜか楽しそうにしているミサヤは俺から離れていき、誰からも返事がなかった。

 いち早く左側からの視線から逃れたい俺は、ケイヤに助けを求めるように視線を移動させる。


「と、いうわけだケイヤ」

「わかった、よろしく」


 ケイヤと握手を交わし、これでやっと全員がパーティに加わった。


「にしても、この光景は流石に思い出すな」


 同じ時間を共有し、互いに高め合ったあのゲームを思い出さないはずがない。

 苦楽を共にし、様々なことにチャレンジしてきた。

 昨夜ケイヤと話をしたが、ゲーマー魂に火が点くってもんだ。


 チラリと視線を左右に動かせば、そう思っているのが俺だけではないというのがすぐにわかってしまう。

 写真にでも撮って見せてやりたい。


「今のところ、俺達が得られている情報は限りなく少ない。だが、それでこそ面白いってもんだ。――いっちょ、俺達でこの世界を全攻略してやろうぜ」


 みんなからの返事は当然、快諾。


「どこの誰か神様か知らねえが、俺達は絶望なんてせずに、全力で遊びつくしてやろうぜ」

「いいねそれ」

「レッツラゴーゴーっ」

「ふん、当たり前じゃない」

「みんな、ほどほどに、だよ? ほどよく全力で」

「アケミらしいが、まあその通りだな。これから先、無理は禁物ってのはみんな忘れないでくれ」


 決意改め再出発のところ、前方に居る三人からの報告が入る。


「おーい、そろそろ目的地に着くぞぉー!」


 せっかく意思統一したところではあるが、その声を聞いて全員の顔に安堵の色が見えた。

 それもそうだろう、ゲームの時とはまったく違いこの疲労感は本物だ。

 日数的にはそれほどではないが、まるで修学旅行が終わったかのような疲労度に匹敵している。


 ミサヤが早速、街に着いたらどんな食べ物があるのか、とか呑気に話し始めるが、俺達の旅がいよいよ終わることにほんの少しだけ寂しさが残るのも事実。

 まあでも、俺達はこれからこの世界で生きていくんだから、またみんなで旅もできるか。


 さあ、初めての街っていうのはどんなものか楽しみだな。

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