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第86話『サバイバルゲーム・エンド4』

秋穂は不思議に思っていた。ある日から母の表情が急に明るくなったのを。

まるで誰かに会うのを楽しみにしているようだった。


「お母さん、誰かに会う約束をしてるの?」

「え? どうして?」

「なんか最近嬉しそいだからさ。美容室に行って髪を整えてるし」

「そうね…。秋穂も会いに行く?」

「誰に?」

「清志君よ」

「清志!?」

「松山さんって言う人がね、サバイバルゲームに参加した人たちで同窓会を開くらしいから参加しないかって! 明日会いに行くのよ」

「そうなの…!? ていうか松山さんって?」

「サバイバルゲームに参加した人よ。あまり話さなかったけどお坊さんだったって言ってたわ」

「…その人信用できるの?」


秋穂は何となく不安を覚えた。なぜ今更サバイバルゲームに参加した人たちを集めるのかと。


「そりゃ清志君の事を知っているし、サバイバルゲームに参加した人だからね」

「そう…」


秋穂は何を言っても無駄そうな感じをして、一旦置いておくことにした。部屋に戻り、先の話が怪しい感じがするのを捨てきれなかった。


「こんな時、清志君がいてくれたら…」


清志に連絡を取りたかったが、彼の連絡先を知らない。だがこの状況を何とかするためにも何か清志に繋がる情報が欲しかった。


ふとスマホを開くとネットニュースが入っていた。


【阿久津法律事務所放火! 事務員に被害者は無し。恨みによる犯行か?】


「阿久津…そう言えばサバイバルゲームに参加した人の中に阿久津って人がいたような…!」


秋穂は阿久津法律相談所のホームページに検索した。そこには阿久津に直接つながる電話番号が記載されていた。


「これなら清志君に繋がるかもしれない」


希望を見出しスマホで阿久津の番号に電話をかけた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――― 


―ワゴン車内。


清志とせらぎねら☆九樹は阿久津と合流するための場所を決めて合流する予定を立てていた。


「阿久津さんと会ったら互いの情報を共有し整理しましょう」

「法律事務所を襲撃した犯人がつばささんと同一人物かもしれませんしね」


2人が話し合っている所、九樹のスマホに連絡が入る。


「これは…また阿久津さん? はい、どうしましたか?」

『せらぎねら☆九樹。君は今清志と言う男と連絡が取れますか?』

「え? 彼なら今私と行動していますが」

『私の元に秋穂と言う女性が電話をかけていた。最初は何事かと思ったが、彼から松山綾善の名前が出たんで君に伝えたほうが良いと思ったんだ』

「なんですって? どうして彼女の口から松山の名前が?」

『なんでも清志君に話がしたいそうなんです。彼の連絡先を教えてくれませんか?』

「はあ、なるほど。清志君」

「はい」

「秋穂さんが君に話があるそうなんだ」

「秋穂さんが?」

「どうも、松山綾善と関係があるらしいんだ」

「どうして秋穂さんが?」

「彼女は今君の存在が頼りの様なんだ。力になってあげてくれ」

「はあ…。わかりました」


清志は自分のスマホの番号を伝え、秋穂と連絡を取った。


『…あ。清志君久しぶり! ちゃんと食べてる? 元気にしてる!?』

「ええそれなりに。ところでどうして秋穂さんが松山の事を?」

『お母さんが言ってたのよ。松山と言う人が私がいない時に母と会っていたらしくて』

「え!? つまり松山は秋穂さんの居場所を知っていると…」

『その時、松山はお母さんにサバイバルゲームに参加した皆と同窓会をするって話が合ったらしくて…。清志君も参加するからぜひ来てほしいと言ってたわ』

「そんな話今初めて知りましたよ」

『…やっぱり嘘だったんだ。お母さんその気になっちゃって…。明日行くらしいのよ』

「明日!?」

『説得は無理そうだし…。清志君なら何かいい知恵を貸してくれるんじゃないかと思って』

「ううん…もう明日ってことですよね。一旦九樹さんに相談しても大丈夫ですか? またかけ直しますので」

『ありがとう清志君』


清志は秋穂との話を終え、せらぎねら☆九樹に今の事を話した。


「松山が秋穂さんの母親に?」

「居場所が知られているってことは秋穂さんも危険な状態ってことです。でも松山はどうしてそんなことを…」

「確かに。これまでの例を見れば、白石さんの様に殺されてもおかしくなかった…。清志君。ならそれを利用しましょう」

「利用?」

「リスクはありますが松山が来るとなれば彼を捕縛するチャンスもあります」


せらぎねら☆九樹が言うにはあえて東雲優子・秋穂を松山綾善の誘いに乗らせ、彼と清志、そして阿久津が松山の言う同窓会の場に乗り込むというものだった。


「松山を捕まえればそのバックにいる川中の情報も得る事が出来ます」

「だけど、その作戦は秋穂さんと優子さんに身に危険があるのでは?」

「その点は心配いりません。私のツテで護衛部隊を用意します」

「せらぎねら☆九樹さんどこにでもツテがあるんですね…」

「まあ、人脈を作っておけば色々と便利ですからね」

「その行動力には感服しますよ」

「とりあえず。まずは阿久津さんと合流しましょう。樒さん。また運転お願いします」

「このジュース飲んだらね」


樒が休憩を終えると阿久津との合流場所に向かった。


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