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第83話『サバイバルゲーム・エンド1』

―警察・死体安置所


警察官によって連れてこられた白石家の妻と娘が見たのは代わり果てた父・白石健司の姿だった。


「こちらは白石健司さんご本人でお間違いないですか?」

「はい…確かに夫です…」

「どうしてよ…。何があったのよお父さん…!!」


次に会った時は素直な気持ちになり和解をしようとしていた彼女の思いは永遠に叶わないものとなっていた。


「心中お察しします。…申し訳ないんですが、白石健司さんは誰かに恨まれていたとかそういう話はご存じありませんか?」


事件の担当者が妻に質問する。


「いえ、あの人に会ったのは別れてから久しぶりでして…」

「本当ですか?」


ベテランの担当刑事が彼女に詰め寄る。


「白石さんは出所がわからない大金を持っていたのは調べがついている。それを目的で第三者に殺害を依頼をしたっていうのはありませんか?」

「先輩! いくら何でもそれは憶測がすぎるのでは?」

「バカ野郎。俺達は人を信じる事じゃねえ。疑うことが仕事なんだよ。例えそれが被害者の家族であってもな」

「…つまり警察は何も手掛かりをつかんでいないってことですか?」


彼らの言葉から心美は警察の捜査があまり進んでいないことを察する。


「…残念ながら、加害者を特定する証拠は見つかっていません。白石さんの家は火を放たれて証拠を探すのも難航してるんです」

「おい上野!」

「ご家族を疑うよりも話せる範囲だけ話して信用を得たほうが得策でしょう。先輩、もう圧をかけて証拠を集める時代は終わってるんですよ」

「ああ? てめえはあんな意志のねえAIや機械に捜査を任せて終わりにしたいって言うのか!? てめえには警察のメンツがねえのか!?」

「そんな大事なメンツなら金庫にも閉まっておいてくださいよ! 人命が奪われて早く加害者を捕まえなきゃいけないのに、それよりもメンツを守るなんていおかしいじゃないですか!!」

「誰に向かって口きいてるんだ若造が!!」


ベテランと若手の口喧嘩がヒートアップしておさまりがつかなくなりそうになった時、彼らの上司が割って入ってきた。


「お前ら外まで聞こえてるぞ! ここは死者が安らかに休めるようにある場所だ! ケンカなら外やれ!」

「ちっ! …外回り行ってきます」


ベテラン刑事は罰が悪そうにして出て行った。


「申し訳ございません、うちの柴田が。私は部長の倉内と申します」

「いえ、大丈夫です」

「俺からもすみません。どうしても柴田さんとはソリが合わなくて…」

「柴田ももう少し柔軟になてくりゃ良いんだが…」


倉内が言うには、今ケンカしていたベテラン刑事の柴田と若手刑事の上野は仲が悪いらしい。現場で鍛えられた柴田は本庁からのエリートでキャリア組である彼をあまりよく思ってないらしく、更にAIによる事件捜査の効率化によりハイテク化したシステムについて行けず、ベテラン仲間が次々と辞めていった事が拍車をかけているらしい。


「俺だって柴田さんとは仕事仲間ですから良好な関係を築きたいですよ。だけど向こうがずっと意地を張っていて…」

「ああ。柴田がもう少し歩み寄ってくれりゃあなあ…」

「警察内部でそんなことが…」

「すみません、こんな話してしまって」

「いえ、ところで夫を殺した人間はいつになったら見つかりますか?」

「…それが、あまりに奇妙な現場だったんで何とも。だけど少なくとも単独犯ではないと思うんです」


上野が言うのには遺体が置かれていたのは火災によってなくなった家の外であり、何者かによって運び出された痕跡があった。


「ただの強盗ならここまで派手な事はしないし、殺しが目的ならわざわざ運び出すなんてことはするとは思えません。まるで意図的に誰が死んだのかわかるようにしているとしか思えません。もし放火で白石さんが燃やされていたら身元の特定まで倍の時間がかかっていたでしょうし…」

「そこまでだ上野。あまり事件内容を話すな。万が一マスコミに漏れたら面倒になる」

「すみません…」


その後白石の身元確認を終えて、妻と心美は帰っていった。


――――――――――――――――――――――――――――――――― 


「上野、新たな情報が入った」

「情報?」

「ああ。さっき白石と同じ殺され方をした被害者が見つかった」

「何ですって!?」

「白石、更にそれ以前に殺された宮野次郎、マルガリータ・フェルスキー。…無差別の連続殺人が行われている」

「半グレグループの仕業ってことはないでしょうね」


組織に属さない強盗や空き巣の犯罪をして金を稼いでいる半グレグループの可能性を上野は持ったが、倉内は否定する。


「犯人がただの半グレなら銃を持っているわけがない。奴らの殆どは鈍器や刃物による野蛮なやり方が多い。複数犯だったとしてもあまりに不自然すぎる。まるで、誰かに何かを伝えるような…。メッセージの様なやり方だ…」

「それで、新しい被害者は…」

「ああ‥。少しばかり厄介な人物だ。著名な方だけあって」

「有名人何ですか?」

「ネット界隈でな」


そう言って倉内は写真をだした。


「被害者は大智福子、【蒼空つばさ】と言う名前で活躍していたライバーだ」


翌日ネットニュースで彼女の死が知り渡り、世間は大騒ぎとなった。




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