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第74話『あずさと葵:2』

あずさと葵は不動産会社から紹介された建売住宅販売会社の事務所で説明を聞き契約を結んだ。


土地と住宅の両方を含めて合計3000万円となる家の購入。手が遠い額の話だが、若い世代向けのローンを組むプランがあり2人はそれを使って金の融資を受けて購入した。


住宅は正方形を元に作れた2階建ての住宅。

1階に生活に必要なキッチンスペースや風呂・トイレがあり、2階には収納スペースと部屋になる。


引っ越しをすませて必要な家具を揃えると2人は戸建て住宅での生活を始めた。


「ここは私達だけの城ね」

「あずさちゃん。私こんな幸せを得てよかったのかな」

「いいんじゃないの? 幸せは誰でも得れる権利があるでしょ」


リビングでテレビを見ながら2人はくつろいでいた。


『今日未明、政府は各地で起こる紛争を鎮静させるべく各国の首脳が集まり会議が開かれました。山内内閣総理大臣は紛争により住む場所を失った人々の為に食料や仮設テントなどを支給する予定であり、各国の停戦協定を進めるべく各国のリーダーと話し合いを行っていました』


「紛争のせいで商品の輸入や輸出にも影響が出ているって聞いてるし、また値上げかもしれないって店長が嘆いていたわね」

「折角値段が安くなってきたのにね」

「これから貯金もしていきたいのに困ったわ」

「だ、大丈夫だよ。私も頑張って御仕事貰ってくるから…!」

「無理しなくていいよ」


あずさは葵を抱き寄せる。


「私はアンタと入れるだけで幸せだから。ここまでいろんなことがあったけど、葵がそばにいてくれるなら私はそれでいい」

「あずさちゃん」

「きっと世間は私達の関係にケチつけるかもしれない。だけど私は世間がどうこう言うより今この時間を大事にしたい」


各国で同性愛に関して未だに厳しい意見は後を絶たない。

法律で厳しく罰するわけではないが、我々の社会では異性同士が恋をしやがて結婚することが自然の摂理だと言われている。だから種の存続にかかわる同性同士の関係は暗黙のタブーとして根付いており、『異性同士の婚姻や、婚姻に関する制度は受ける事は出来ない』と明確な決まりのない中で厳しい意見がある。


「確かにこの世には男性と女性と異姓は2人しかいない。だけど誰が誰を好きになろうが、それが何か問題か? ようは面倒になるからこれ以上特殊な関係を増やすなってことだもんな。私は葵の事が好きだけどそれを理由に法律にあれこれしてほしいって言ってるわけじゃない。好きな人といる時位そんなこと忘れさせてほしい」

「あずさちゃん。それは私も同感だよ」


2人は互いの体を抱き寄せて2人の時間を楽しんだ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


風呂で汗を流し布団の中に入る。

2人で一緒に寝れるようにダブルサイズの布団を買い、用意する。


「葵。久しぶりねこうやって寝るのは」

「うん。サバイバルゲームだとみんなの事を気にしてあまり2人で寝れなかったからね」

「正直アンタ私以外と一緒に入れるか心配だったんだけど」

「私だってあずさちゃんが清志君の事好きにならないか心配だったよ」

「はあ? 確かにキヨシは悪い奴じゃないけど、私はそこまでいかないかな」

「なんで?」

「確かに自立してるとこもあるし、周りの人間が正確に何ある人もいたからあれだったけど、逆にいうとそれ以上のモノがないって感じだったんだよね」

「それ以上のモノ?」


葵はピンとこずあずさに尋ねる。


「『主体性』って奴かな。誰もが気にならないオーソドックスな人間って感じだけど、逆に言うとそれ以上に主張する部分が無い。『無個性』って言えばいいのかな。確かに能力はあるけど、それ以上とはいいがたい」

「私は癖が無くていいと思うけど…」

「まあ友人としてはいいくらいだろ」


影で清志はあずさたちに値踏みされていた。


「葵はキヨシのことどう思っているわけ?」

「私はそうだね。清志君は真面目でいい人って感じがする。正直私は彼の事が好きになるかもしれなかった」

「…はあ?」

「ちょっとこれだけで拗ねないでよ~」

「…拗ねてない」


あずさは葵の言葉に拗ねてそっぽ向いてしまい、葵は彼女の機嫌を損ねたことに慌てていた。


「あずさちゃん~」

「抱きしめて」

「え?」

「抱きしめてくれたら許してあげる」


あずさは体を葵に向けてハグを求める。


「それで許してくれるなら」


葵はあずさにハグをし、互いの体温、吐息が感じるほどに近づき彼女も葵を抱きしめる。


「葵は私のだから。他の人の名前が出ると嫉妬しちゃう」

「あずさちゃんて普段はドライな感じをしているけど意外と独占力があるよね」

「アンタにだけだから」

「質が悪いね」

「何とでも言え」


あずさはハグをしながら布団の中で互いの体を擦り合わせ、葵の香りを堪能し、互いの体温でぬくぬくと温かくなっていく気持ちの高ぶりを隠せなくなっていった。


「私はずっと葵と一緒にいたい。だから葵もずっと私と一緒にいて…」

「それは私もだよ。あずさちゃんとこれからも一緒に暮らしたい…」


2人は互いを抱きしめあって就寝した。



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