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第70話『詐欺師の末路』

―鮫島金融・事務所


「おい韓国人のお兄さんよお…! 金を借りといて逃げるれるとおもっているのあ?」

「俺達は日本人も韓国人も差別はしないぜえ。だって借金をしてバックレる奴は皆クズだからよお~!」

「ま、待ってくれ! 金は用意する!! 俺の知り合いに金を預けてあるんだ!!」

「あ~? 500万もすぐに返せるって言うのかよ~?」

「ああ! そいつに連絡すればすぐにでも!!」


(ちっ…! 裏社会のクズどもめ…! たかが500万円ごときでイキリやがって…!)


イ・チャンスウは鮫島金融の組員に軟禁されていた。

ゲーム終了後、かつての仲間に連絡して会おうとしていた所彼らに待ち伏せされていた。


イ・チャンスウが借金の連帯保証人になっており、仲間はとっくに海外に高飛びしていたらしい。借金は利子で膨れており、500万円となっていた。彼は仲間だった工場作業員に連絡してこの場をしのごうとしていた。


(…ふん。だが日本は手段さえ選ばなければ簡単に金が稼げる国だ。また出会い系サイトでお金をくれる女を見つけて集めてやるさ…!)


鮫島金融の組員はスマホでイ・チャンスウの言いなりだった工場勤務の契約社員の男に連絡をしていた。彼はその男に金を預けていたのだ。


「ああ…はい。わかった」

「どうだ?」

「ちょっと来てくれますか。電話は今保留にしているんで」

「ったく…。面倒かけさせんなよ」


組員2人がイ・チャンスウから離れた場所で連絡相手と話をする。終わるとスマホを切ってイ・チャンスウの元に寄る。


「おい。お前の言っていた奴と連絡がついた。3時間ほどでここに来るってよ」

「そうか! よかった…!」

「全く手間かけさせやがって…。勝手に逃げたら承知しねえからな」


彼らに監視されながら3時間待つと契約社員の男と、もう1人彼の付き添いで阿久津正義の部下である三ツ木という女弁護士が現れた。


「こちらが例の金になります」


500万の金を組員に女弁護士が渡した。


「確かに500万円だな」

「これで俺は自由だろ。離せよ!」

「良いだろう」


イ・チャンスウは男達から解放される。


「おい、その女は誰だ?」

「じ、実はイ・チャンスウさんの韓国行きを手配してくれるって…」

「そうか。お前にしては気が利くな」

「そう言う話はここ以外でやってくれ」


組員はイ・チャンスウ達を事務所から出した。


「しかし…。あの女『金やるからイ・チャンスウを渡せ』っていい話持ってきてくれたな」

「ああ。臨時とは言え1人100万で俺達に200万をくれたからな」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


「うぐっ…!?」

「しばらく大人しくしてもらいますよ。女性を食い物にしていた結婚詐欺師さん」


彼女はスタンガンを使い、イ・チャンスウを気絶させた。


「後はこちらでこの男は身柄を拘束します。あなたはこれで…」


三ツ木は手下の男2人にイ・チャンスウを運ばせて事務所に送った。工場勤務の男、風間孝は報酬金を貰って去っていった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――  


―阿久津正義法律事務所


丸1日気絶したイ・チャンスウは阿久津の部下に起こされた後、彼の元に連れていかれた。


「おはようございます。気分はどうかな?」

「最悪に決まってんだろ! なんで俺をこんなところに連れてきた!?」

「まあ、君を裁判にかけるためかな…」

「何!?」

「法律が変わったんだよ。君、結婚詐欺で訴えれたことあるでしょ?」


阿久津は落ち着いて煙草を吸う。


「ふう…」

「あれはとっくに不起訴処分で終わってるんだよ!? 一度裁かれた罪はもう二度と裁けないのが法のルールじゃないのか!?」

「確かにダブル・ジョパディというのはあるが、新たに罪がある場合は別の裁判を起こすことができる」

「何だよ。俺が何したって言うんだよ!?」

「不正契約だよ」


阿久津は持っていた書類を取り出した。


「君はマッチングアプリで出会った女性に結婚をちらつかせつつ、彼女達に婚姻の証に金を出させていた。これはその時君がサインさせた書類だ。法律が変わって法にのっとっていない契約書を書かせるのは【不正契約履行の詐欺】の罪で訴えることができるようになった」

「そんな話聞いてないぞ!」

「そりゃ君がサバイバルゲームに参加しているうちにできた法率だからな。とはいえ君は10人以上もこの契約を交わした。実刑は免れない。しかも今は外国人でも日本の法律で裁くことが出来るし以前よりも厳しくなっているからな」

「だとしても刑務所で服役する位でしょ?」

「バカだね。以前より厳しくなったと言っているでしょ。あなたは国家の強制労働所に連れていかれ罪を全うする額を稼ぐまで死ぬまで労働させられる。そこは個室もなく20人一部屋の雑居房だ。地獄のような場所と言われている」


阿久津は密かに作っていたツテで取り寄せた労働所の写真を見せる。イ・チャンスウはそれを見ると顔を青ざめ余裕を失う。


「しかも今はAIが司法に使われていて、下手な嘘も反省も通用しない。これまでの経歴を元に適度な罪を言い渡す。被害者への泣きも出来ない」

「あんた弁護士だろ!? 俺の弁護は出来ないのか!?」

「残念だが私が出来るのは裁判までの手続き位だ。裁判はもうAIに任せているからな」

「そんな…!」

「だが、被害者は君が金を返してくれるのなら被害届を取り下げる気でいる」

「本当か!?」

「ああ。私の知り合いに事件を担当した方がいてね。話は付けている」

「くっ…」

「あなたの持っていた4500万円の金、全てを使えば返金は出来る。後は大人しく韓国に帰っていただければと思います」

「わかった…!」


イ・チャンスウは金を全て被害者に返金し、その後阿久津の手で用意されたチケットで韓国に帰らされた。


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